第31話避けられぬ因縁

2年生にもなると、高校の夏が訪れるのが去年よりも早く感じる。

学校生活や人生経験値も慣れてしまえば、知覚的時間も短く

なるのだろうか?

そんな、答えの見つからない思考を

するのはこれぐらいにして

考えるべきは・・・・・。


「お兄ちゃん。ここわからないのだけど?」


「えーと、なになに・・・

ああ、これは緻密ちみつと呼ぶんだよ」


「へぇー、そうなんだ。えへへ

ありがとう」


夏休みと入ってから妹の唯悧ゆいりに勉強を教えていた。

中学3年になって課せられた受験というものがある。唯悧が受験する

学校が今、俺が通っている学校。

偏差値がそこそこあるので、

今だと正直、厳しい。


(お、落ち着け俺よ・・・ただ、

勉強を教えているだけなんだ)


俺と唯悧の距離は至近距離の 肩が

触れている隣だ。

そのため、柑橘類の爽やかな香りに

鼻孔びこうをくすぐる。

つまり、いい香り。

視線を向けられると、ものすごく

近くキスされるの!と一瞬とはいえ

思ったことに激しく後悔する。


(なによりも、唯悧が顔が赤いから

変に想像してしまう・・・)


確かに妹との距離を縮めたいと

画策したが、一般的であって。

こんな、恋人に向けるような展開は

・・・・・ああぁぁーー

心頭滅却すれば、シスコンもまた

普通なり?

ということわざを改変させていると

唯悧が、肩を叩いてくる。


「お兄ちゃん?よく分からないけど

落ち着いて。顔の変化がすごいよ」


「そ、そんなに変化していたのか?

気持ち悪かったねぇ。

ごめん、ごめん、気をつけるよ」


「ううん、そんなことないよ。

色んな表情を見れて堪能したから」


「は、えっ?あっ、うん?」


恥じらいの笑みを浮かべる唯悧は

嘘偽りもなく本当に堪能したと

思える。


「あっ、俺は昼食を作るから

唯悧は勉強の続きをしてくれ」


「はーーい。お兄ちゃん♪」


明るく手を上げて返事につい頬が

弛めてしまう羽目になった。

そんなことあって、昼食を一緒に

食べ終え食器を洗いを済ませた

俺はローテーブルに座って勉強を

続けている唯悧の前に立つ。


「唯悧。わるいんたけど、新刊の

発売日なんだ。だから、少し

寂しい思いするがいいか?」


「うん。平気だよ!

もう来年には高校生なんだから

心配しすぎだよお兄ちゃんは」


そう返しているが、顔には寂しさが

完全に隠せていない。とくに

眉がハの形になっている。


「そうだな。いい加減に子供あつかいをするのは控えるようにするよ」


「うん。そうしてねぇ・・・

行ってらっしゃいお兄ちゃん!」


「ああ、行ってくる・・・・・

そして、必ずに唯悧の元に戻って

帰るからなぁ!」


別れを惜しみな手を難度も

降る・・・そして、目的に向う。

回想終了。

目の前にいる、たまたま本当に

会いたくない奴と接触してしまった。

せめて、向かいに座る悪魔に

抗議の目を向ける。


「・・・ハァー、シスコンレベルが

限界突破したよ由布ゆふが」


「はぁ!ま、待って。どこが

シスコン要素があったんだよ。

妹思いある兄が数十分も会えない

んだぞ。高野は、それでも

お前は人間の血が

入っているのか!?」


「愚問だよ由布くん。

我々は繁栄と発展の先に

見ているのだよ!

由布これだけ、言わせて貰おうか。

前だけ見てろ。背中は守る・・・」


本屋のラノベを買っての帰り道に

ソロモン72柱の悪魔を使役する

絶対なる支配者が独歩していた。

支配者は、俺に気づくと気さくに

話しかけてきた。

唯悧が待っているんだ!こんなところで死ねるかああぁぁぁぁ!!と

心中手叫びました。


しかし、白い悪魔は追いかけてきた。

やつは幼女体型のためすぐに

距離ができてしまう。

後ろへ視線を向けるとかなり

膝をつき激しく呼吸していて、この

猛暑だ。無理すると熱中症で倒れる

かもしれない。

仕方ないが、捕まりにいくかと

戻っていた。


肩まで切り揃えた染めていない白髪。この髪色は病気とか言っていた。

肌は、眩しい真夏と互角といえる

きれいな肌をしていた。

さらに、目が、大きく顔のパーツも

整っていて黄金比を超える。

女性が顔を整っていているのは

かなり普通のパーツが揃っていると

美少女に見える。

特殊な部分があれば、

醜いと思うのもそう。


膝丈もある白フリル多めの

ワンピース姿。

そのため、普段以上よりも幼女に

見える。実年齢は、今年17才。


「いま、わたしに失礼な事を

考えていなかった?」


「そ、そんなことないよ。

高野の気のせいだよ!ははは、

あっはははは!!」


「ちょ、ちょっと、ちょっと!

急に爆笑しないでよ!」


「はーい!間違っていますぅぅ。

爆笑というのは、複数で笑う意味で

一人で大笑いには使いません」


「ぐっ!これだから、国語が

以上に優秀な奴は・・・・・」


この、白い髪が似合う少女は

高野大善たかのだいぜん

俺とは同級生で唯一の親友である。

最近は、夏休みに入ってから

頻繁に家に訪れるようになった。

居留守も使おうとしたが、ラインで

呪いのトークが送られ

そんなオカルトを信じていないが

内容が、居るのを知っている。

もしこれ以上の反応をしなければ

此方も相応の対応させてもらう。

と脅迫してきた。


「相変わらず怒らせると

怖いよなぁ高野は」


「へぇー、どこが怖いか教えて

もらおうかな?」


「ひぃ!?そこ、そこそこ!

目を笑っていない笑顔をするなぁ!」


「・・・・・いいよ。

それよりも、そろそろ教えてくれない?追いかけたわたしの元に

戻ってきたのを?」


「それは、前にも言っただろう。

気分だよ、気分!」


「ふーん、気分屋とは思えない

んだけど?由布は面倒見が

いいから、わたしを心配したん

でしょう?」


図星だ。高野は運動すればよく

怪我をするし、車にひかれそうにも

危険な事も多々あった。


「もう高野のだけの身体じゃないんだからなぁ!少しは親しい相手が

悲痛になるの想像するべきだ。

あんなに無茶して、熱中症に

なったらどうするんだ?」


「も、もう高野のだけじゃない!?

・・・う、うん反省する」


「う、うん?・・・・・

そうだな。気をつけるように。

熱中症対策は、携帯として

水と水分は必須だ!

例えば、水だけじゃあ駄目。

水分も摂らないと熱中症になる

ケースも過去にあるんだ。

あと、汗は高くなった身体の温度を

下げる役割もあるから、

枯渇したり、汗が起きるように

健康にも気をつけろよ」


「は、はい・・・肝に銘じます」


「今から、唯悧が待っているから

続きは俺の家にだ。

それじゃあ、行くぞ高野。

今日は俺が奢る」


お冷を全部、飲みきり立つ俺は

親友に催促する。


「えっ、い、いいよ!今日はって

いつも奢っているクセに。

わたしが奢らせて!」


「いいや!俺が奢る!」


決局は、折半という流れとなり

喫茶店を出た。

冷房を効いた店内に居たため

外の容赦のないアブラゼミの鳴き声と

暑さに気力を削ぎ落とされる。


「あぢいいぃいぃ・・・」


「くく、こうして二人で歩くのも

悪くないなぁ」


「それは・・・いや、それも

そうだな。なんだか懐かしいなぁ」


去年だと、ほぼ毎日二人で歩いて

いたが、最近はとくになかった。

俺の家まで後、数十分の距離になり

俺は思うもしなかった人物と

遭遇することになる。

T字路の左に曲がるとやつれた

およそ40代男性が俺を見て

驚愕した。俺も同じく驚いた。


「どうして・・・あんたが

ここにいるんだよ・・・・・

オヤジ!」


「・・・・・惟信これのぶ


「えっ!お、おとうさんなの!?

でもこれは・・・」


仇を見るような俺の眼光にオヤジは

目を逸し回避する。

そんな光景を目にして高野は

困惑した言葉で目を覚ます。


「わるい、高野。少し唯悧の

勉強に付き合ってくれないか?

俺はオヤジと話があるんだ」


合鍵を差し出し高野は、受け取ると

戸惑いよりも心配そうに

見つめてくる。

わたしが居なくても平気?という

言葉にしなくても理解できるほど

仲が良かったかな?と疑問に

思いながらも首を振って否定。


「そう・・・その、無理はしないでねぇ。今の由布、わたし見たくないよ」


「・・・わりぃ」


駆け足でオヤジに会釈して通り越す。

後ろ姿が見えなくなってから、

(角に曲がるまで厳密に言えば)俺は

オヤジの前にゆっくり進む。

ちょうどいい距離で足を止め次は

言葉の出番となる。


「なんのつもりだよオヤジ」


「お、お前たちに会いたくなってなぁ。こんなに成長して父さんは

感動したよ。

・・・唯悧はどうしているんだ?」


「よく、言うぜ!

誰のおかげで

暴力して・・・心に深い傷をつけて

許せると思っているのかあぁぁ!!」


ざわざわ。俺の激しい怒声に

通りすがりの人が、何事か視線と

ひそひそする人がいる。


「・・・場所を変えようぜ」


とりあえず前に家族で来たことある

ファミレスで話の続き場所として

選んだ。選んだのはオヤジ。

一部の周囲も俺達の荒々しい雰囲気に

怪訝そうに向けていたが無視させて

もらう。


「なんのつもりなんだ?」


「惟信と唯悧の顔をただ見たくなったんだ・・・元気にしているかを」


「それを信じるには、過去の

清算を終えずにか?

随分と勝手な要求だな」


「都合がいいのは、重々に

承知している。その悔いを

償ういならないが・・・」


懐から何かを探る。警戒していると

サイフで一万円札をいくつか

取り出しテーブルの前に置く。


「安いものだが、受け取ってくれ」


だいたい十万円だろうか。

しかし、唯悧を暴力をした奴に

恩を少しでも受けるのは・・・・・


「いらない。償える機会なんて

永遠にないんだよ」


奴のテーブル前にスライド要領で

指を動かし返す。


「せ、せめて受け取ってくれないか?仕事が見つかって収入を得て

安定しているんだ。

だから、受け取ってくれ!」


「頭を下げられても駄目だ。

もう、帰ってくれアンタがいると

唯悧が安心できないんだよ」


最後に害虫と言ってやりたかったが

それは、いくらなんでも

酷いと判断して言わなかった。


「・・・だから、アンタが

仕事を見つけていい生活しているって

それだけを伝えてやる。

それでいいだろ」


「・・・ああ、選べる立場じゃ、

ないからなぁ。

それだけ伝えてほしい」


選べる立場?なにを偉そうに。

罪を償うと言って選べる権利があると

思っているのか!こいつは・・・。

話をすれば、するほど怒りが

沸騰しそうになる。いや、すでに

そうなっているか。


母さんも離婚した理由が理解に

苦しんでいたがようやく理解できた。

しかし、唯悧を離れる結果に

軽く言っていたのも、

おそらくだが、子供のときの俺に

不安を少しでも和らごうとしての

言葉だとしたら解る。


「会計だが、アンタが払うんだな」


「ああ、父親だからなぁ」


(チッ!なにが父親だよ。

嬉しそうにしやがって・・・)


俺と父さんは、店を出ると

違う道を進む前に父親が言う。


「唯悧によろしく頼む」


「頼まなくても、そのつもりだよ」


幸運だった。もし、本屋で唯悧と

行っていたら父親を見て

怯えて泣き叫んでいただろう。

・・・再起できるか状態に。

そう行って俺は今度こそ

オヤジと別れ帰路に就く。

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