第9話徹しなければいけない

案は見つけた。そして、後は行動と思考を

するのみ・・・それで、上手くいくか

分からないが全力でやってみせる。


そして、夜の帳が下りている。

・・・つまりは、妹と再び生活をするように

なってから、こんなことがないのだ。

本当は入るのが少し怖い。


なら、ラインなどで遅れると伝えるのが

いいのだけど、スマホのバッテリーが0で

驚いたよ。・・・こんなタイミングで

なぜ、0になる?ってツッコんだよ。

もちろん心の中で。


それは、さておきこのドアを開いたら

きっと、怒り心頭であろう。

それはいい!一番、恐ろしいのが

あっ、帰ってきたの?そう気だるそうに

言われるのが・・・・・


「い、いや!唯悧がそんな態度するわけ

ないだろ俺。」


気づいてしまった・・・とうとう

悩みすぎて一人言をしたことを。


いい加減、いつも帰る家のドアを開けば

いいだろうと分かっているが

もし、そうなったらとか、そんな

起きないだろうに怯えてしまっている。

でも、こんな事をいつまでもするわけには

いかない・・・なら考え方を変えよう。


ネガティブを覆すほどのポジティブを。

・・・・・俺がドアを開けば

唯悧が玄関にいてそこから勢いを落とさずに

胸に飛び込むので、

後ろに倒れそうになるがなんとかなった。

ドアノブがなければ倒れていた。

それよりもこれは!?


「心配したんだから!

連絡もないから、事故にも巻き込まれたって、本当に・・・心配したんだよ!」


「唯悧・・・・・」


顔は埋めき腕は後ろに回され

離さないといわんばかりに力を

目一杯にハグされてしまい、

ドキマギしてしまうのと、それ以上に

ここまで心配してしまうことに感動して

しまい、涙が出てしまう。

ハグで返すわけにはいかないので

変わりに頭をなでる。


「ごめん・・・心配させてしまって、

それと、嬉しかったよ心配してくれて。」


「・・・本当に心配したんだから。」


なお離してくれない唯悧。

そうずっとハグされると感激のあまりに

失神しそうなんだが・・・。

名残惜しいが肩を軽く掴み離れさせる。


「・・・お兄ちゃん。」


唯悧の涙を流したままのキレイな瞳で

俺をまっすぐ見る。

つい、このまま黙っていつまでも

見つめ合いたいと、想ってしまうが

恋人じゃないんだから兄として

振る舞わなければいけない。

俺も瞳を唯悧から逸らさないで想いを言う。


「唯悧・・・俺はどんなことがあっても

絶対に帰ってくる。もちろん学校が

終われば今すぐに全力で!」


「嬉しいけど・・・そこまで心配されたくはないかな。」


「ああ、そうだな。少し熱くなり過ぎた。

気持ち悪かったよなぁ。」


「・・・ううん、そうじゃなくて

カッコいいんだけど、わたしのために

そこまで無理されるとわたしが

ツラいから。」


「唯悧・・・そうだな。でも俺は

唯悧のために一秒でもそれよりも早く

会いたいから全然無理なんてして

いないさあ。」


「お兄ちゃん・・・大好き!」


二度のハグをする唯悧に俺も頭をなでる。

・・・・・イマジネーション終了。


(今更ながらなんて妄想をしているんだよ

俺は!別の意味で入りにくいじゃないか。)


こんな妄想を避けていたのに

焦燥しょうそう寂寥せきりょうなどの感情が募った結果こんな

妄想をしてしまったことを後悔する。


(ええい、もうドアを開くか開かないだけで忸怩じくじに悶えてるのも

バカバカし過ぎる!もう開けるぞ。)


ドアノブを引こうと思い・・・

やっぱりやめた。

もう少し深呼吸をしてから入ろう、

そうしよう!拙速せっそくを尊ぶなんて孫子そんしの兵法書の一説でもあるが、物事の全てに通用しないことがある。


今みたいにデリケートな会話を求める場合

だと、そう信条があるので深呼吸を始める。

そのとき、震撼させることが起きた。

ドア勢いよく開くと唯悧の姿は、

やや鋭い目で俺に睨むのだった。


「お兄ちゃん・・・遅すぎるし、ドアノブを握ったり止めたりして恐かったよ。」


お、怒っている。いつもは、軽く怒っていたのだが、これも激怒ではないのだけど

今まででここまで怒らせたことがないので

俺はなんて言えばいいか分からず

拙速な思考で答えるしかなかった。


「お、遅くなってごめん。本当にごめん!」


頭を下げて誠心誠意で謝ることにした。


「・・・ライン何回も送っても返事がないから不安だったんだから。」


怒りと不安が混じった声音でそう呟く。


「心配させてしまい誠に申し訳

ありません唯悧さん!

神の悪戯いたずらなのかスマホの

バッテリー0になってしまい出来なかった

のであります!」


「そう。・・・本当に心配したから・・・

お帰りお兄ちゃん・・・。」


怒りが収まったのか優しい笑顔で

俺を帰ってきたことに歓迎の声で・・・。


「ただいま唯悧。」


迷う必要はなかったかもしれなかった。

こんな風に想ったことを拙くても

よかったのだから。


「それにしてもお兄ちゃん?」


「んっ?」


部屋着に着替え終えると妹と憩い場所となる

居間でカップ麺に湯を入れながら妹は言う。

遅くなったのでカップ麺にしたわけだけど、

今は午後七時で簡単な料理と考えていたら

ならたまにはカップ麺でいいじゃないかな?


なんて提案されたので夕食が決まった。

テーブルにカップ麺を置くと次に俺の分も

湯を入れようとする。


「めずらしいよね。こんなに遅くなるのって、どこに行ってたの?」


帰宅部だって、妹は知っているわけだから

疑問に覚えるのは当然で

なんの迷うこももなく返事する。


「喫茶店で高野と将来の事を相談して

いたんだ。」


妹と仲を修復するための案を将来と

少し危うい言い方に返る。


「フーン、将来って?」


「・・・えーと、単純だよ。

大学とか唯悧の受験の事とか、どうしたら

上手く話せる・・・・か、だな!うん。」


隠すつもりだったのに本音が漏れた。


「わたしの事を・・・そ、そうなんだ。

えへへ・・・そうなんだ♪」


いや、そう嬉しそうに鼻歌されると

此方こっちが余計に恥ずかしくなるだろうがあぁぁぁぁーーー!!!


「そ、それより唯悧は家で何をして

いたのか、気になるかな?」


「へへ・・・・・えっ、わ、わたし!?

なかなか返ってこないから落ち着かなくって掃除やゲームとかして

気をまぎらせていたかな?」


なるほど唯悧らしいと納得する。


「驚いたのはお兄ちゃんぼっちだって

勝手に勘違いしてしたよ。」


「ひどいなー、確かに前はぼっち

だったけど今は友達がいると・・・。」


「ど、どうしたの急に悩み始めて?」


「・・・俺ってぼっち歴が長すぎたのか

友達の定義が分からなくなってきた!?」


「さ、流石はお兄ちゃんだね・・・

その、高野さんは友達でいいの?」


「そうだな・・・ああ、友達だな。

どちらかと言うと親友でもあるし相棒でも

あるほど仲がいい!」


腕を組み何故か誇らしくなり

自慢気に答える俺の言葉に唯悧は、

興味を持ったのか訊いてくる。


「気になったけどその人って女の子?」


「・・・え?そうだな。」


「・・・フーン、そうなんだね。

良かったね、いい相棒さんで。」


笑顔で言う唯悧を見て何故かその笑顔の裏に

形容しがたい謎の怒りが

垣間見た気がするのは?・・・錯覚のはず。

唯悧はさらに質問を―――


「その人とどんな話をしたのか具体的に

聞きたいかな?」


あ、あれいつもの天真爛漫てんしんらんまんは、何処いずこに?


「く、詳しくなんて、将来とか励まされたり

で大したことじゃないけど?」


するとなぜか唯悧は、肩を衝撃を受けたような表情で仰け反る・・・そして

手が小刻みに震え、頬は引きつっていた。

え、えぇぇーーーどうしたの本当に!?


「将来・・・励まされ・・・・・

わたしができないことを・・・

わたしそんな話なんて

していないのに・・・・・。」


な、なんだか分からないけど一人言が

スゴい!?


「ゆ、唯悧・・・大丈夫か?」


「手をなかなか繋いで・・・えっ?

だ、大丈夫だよお兄ちゃん!

お、お兄ちゃんが友達詐欺師に騙されて

いないか不安でわたし・・・

色々とひどかったよね。」


よ、よかったいつもの調子に戻ったようだ。

それよりも友達詐欺師ってなに!?

俺そんな特殊な人に騙された可能性を

巡らしていたことにショックだよ!!


「ま、まあ気にしていないからいいよ。」


「えへへ、それよりもだよお兄ちゃん!」


「えっ、それよりも・・・って?」


「お兄ちゃんその高野さん人が好きなの?」


「好きって・・・?」


唯悧の瞳は真剣で俺の次の言葉を

待っていた。・・・それよりカップ麺の

3分軽く過ぎていますが?


「そ、そうだった!カップ麺を食べよう。

きっと、伸びて―――」


「誤魔化さないで!

答えてよお兄ちゃん!!」


今までにないほど、強く言われると

戸惑ってしまうが、もう戸惑っているけど。

答えないといけない袋小路ふくろこうじに追い込まれたこの状況はなに?


「そ、そうだな・・・好きって恋愛的な

意味で?」


「そう!それしかないよねお兄ちゃん!!」


「は、はい!?仰る通りであります!」


妹に軍式の敬礼をする俺は何をやって

いるのだろうと自問自答する。


「・・・男女関係と言えば違う。

本当に高野とはただの友達だよ。」


「そ、そうなんだ・・・よかった。」


安堵する唯悧。まぁ、安心してくれて

俺も安心する。


「まあ、恋人が出来るとしたら

唯悧の方があると思うんだけど。」


「・・・う、うん。」


少し暗い顔で頷くとうつむく唯悧。

世界で二度と現れないだろう

美少女こそ唯悧で、告白とか絶えない

だろう。スゴく、すごーーーーく複雑だが。

そんな感情を抑え兄としての立場上、

振る舞わないといけない。

妹は、顔を上げると語る。


「そ、そうだよ・・・わたしは・・・

好きな人もいるから!」


「・・・そ、そうなのか。

それは、よかった・・・お兄ちゃんも

応援するよ。」


嘘だ。本当は今すぐに否定したい叫びたいが

諦めていない感情をなんとか蓋にして

抑える。


「うん・・・それより・・・カップ麺

を食べないとね。」


「・・・そうだな。」


なぜだろう。気のせいか俺が苦しいあまりに

妹が悲しそうに涙になっているの・・・

そう見えてしまうのだ。


霧がかった頭に推測する余裕もなく

箸を持ちながらカップ麺を食べる。

やはり麺が伸びていて少し悪い味がした。


「・・・・・」「・・・・・・」


お互い無言で食べ続けていると

なにかいい話とかないかなんて考えても

都合よくひらめくことなんて・・・

あ、あった!相談した

案があったじゃないか!


「唯悧・・・その・・・話していいかな?」


「う、うん!!もちろんだよ。」


待っていたと、言わんばかりに

きらめく瞳で俺を見る。さ、さきの暗い

表情はやっぱり俺の錯覚だったようだ。


「今期のアニメどれも面白かったから

今から観ながら話をしよう!」


「・・・うん。」


高野と相談して思い付いた同じ趣味なら

盛り上がって関係修復以上の成果を

得られると考えていたが唯悧の反応は

あまり芳しくなかった。


シンプルにして、効果絶大の作戦は

呆気なく失敗して気を使うような会話に

なってしまい食事が終え

部屋に入ると現実逃避のために小説を

読むのだった。







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