ギモンだらけの中島さん

峰ひろ

第1話 寿司


中島さん『お寿司って、なんでネタが上で米が下なの?』



 

…また始まった。

中島さんはいつもこんな感じの疑問を僕にぶつけてくる。

僕の名前は寺野かずお、いたって普通の中学3年生男子です。

今は中学校の教室で昼休み中なのだが、

隣の席の中島さんはいつも僕に変な質問をしてくるのだ。



 

中島さん『ねぇ、どう思う?お寿司ってなんで米が下なのかなぁ?』

 

寺野くん『…た、食べやすいからじゃない?昔から米は下なんだろうし…』

 

中島さん『でも、ネタが下だったらネタの上に米を乗っけられるのに』

 

寺野くん『あー、ご飯をネタに乗っける感覚、っていう事だよね』

 

中島さん『例えばマグロで考えてみたらさ、

     まずマグロの切り身を一枚、お皿の上に乗っけて、

     そのマグロの上に米を乗せる。

     それで下のマグロごと米を持ち上げるように食べれば、

     すごく食べやすいと思うんだよね』

 

寺野くん『なんか北京ダックみたいな食べ方だね』

 

中島さん『北京ダック?』


寺野くん『うん。北京ダックは、まずお皿に薄い皮を乗っけて、

     その上に食材を乗っけて、薄い皮で包んで食べるんだよ』

 

中島さん『でもマグロの切り身は米を包めるほど大きくないと思うんだけど?』

 

寺野くん『あ、うん、そうだね、北京ダックは例えだから…気にしないで…』

 

中島さん『それでいうなら、お稲荷さんは包んであるよ!

     お稲荷さんは他のお寿司と違って米が全部包まれてるでしょ?

     他のお寿司もお稲荷さんみたいに米を包むような形にすればいいのに!

     お稲荷さんみたいにすれば…!』

 

寺野くん『ちょ、ちょっと中島さん!あんまりお稲荷さんって連呼しないで!』

 

中島さん『なんで?私、変なこと言ってる?』

 

寺野くん『いや、あの、中島さん声大きいし、皆がこっち見てるし…』

 

中島さん『……?ともかく、何でお寿司って米が下なのかと思ってさー

     だって決まりはないわけでしょ?

     米が下じゃなきゃいけないっていう決まりが寿司業界にあるなら

     私は何も言わないけど…』

 

寺野くん『寿司業界って…まぁでも寿司は手で食べるからね、

     ご飯がマグロの上に乗ってる状態で出てきたら、

     マグロの身が皿にべったりついてる状態なわけでしょ?

     それを持ち上げて食べるのって何か嫌じゃない?』

 

中島さん『私はお寿司は箸で食べるから別に嫌じゃないかも…』

 

寺野くん『あぁ…そうっすか…』

 

中島さん『そもそも、お寿司って何で手で握るの?

     マグロの切り身をお皿の上に敷いてから、

     その上にご飯をしゃもじで乗っければ握らなくていいのに!』

 

寺野くん『中島さん…それはもうマグロ丼だよ…』

 

中島さん『マグロ丼はマグロが上だし!丼ぶりだし!』

 

寺野くん『ゴメンナサイ!怒らないでください!

     そ、そもそも、中島さんはどうして米を上にしたいの?』

 

中島さん『米が崩れてくるじゃん!』

 

寺野くん『だったら軍艦巻きは?海苔でまけば形が安定するし崩れないよ』

 

中島さん『軍艦巻きは、お尻が見えてるじゃん!』

 

寺野くん『お、お尻?』

 

中島さん『軍艦巻きを持ち上げて下から見たら米のお尻が見えるじゃん!

     そのお尻の部分に醤油をつけたら米が崩れてくるじゃん!

     お尻が見えないように海苔で全部隠せばお尻も見えないし‼

     形も崩れないし‼お尻が出てるから…!』

 

寺野くん『中島さん‼ストップ‼何回もお尻って言わないで‼』

 

中島さん『……?』




 

 

教室にいる全員が中島さんを見ている…

困ったことに中島さんは会話に熱が入ると止まらなくなる、

周りの事も一切気にしない性格なのだ。



 

 


寺野くん『…そ、そもそも軍艦巻きの底の部分をお尻って…

     まぁでも寿司は今の形のままで良いんじゃないかなぁと思うよ』

 

中島さん『えー何でー?』

 

寺野くん『うーん、でも回転寿司で寿司が全部ひっくり返って出てきたら、

     寿司がお笑い芸人さんみたいにズッコケてるように見えて面白いかもね』

 

中島さん『………』

 

寺野くん『あ、その…何でもな…』

 

中島さん『…………ぷっ!』

 

寺野くん『(え?笑った?)』

 

中島さん『寺野くん』

 

寺野くん『な、何?お、面白かった?』

 

中島さん『授業はじまるよ』

 

寺野くん『え?ああ、そうっすね…』





 

 

こんな感じで、寺野くんは毎日のように中島さんの疑問に答え続けるのであった。

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