第11話 徳川家の殿様(予定)に生まれ変わったぞ!
俺の名前は五郎太。徳川家の一族に名を連ねる、勝ち組人生を約束された男である。
「バブバブ!」
といっても俺はまだ乳母の腕に抱かれる赤ん坊に過ぎない。
ここまで意識がはっきりしているのは、俺が21世紀の現代日本から転生した中年サラリーマンだからだ。
江戸時代と聞くと何を想像するだろうか?大抵の人は徳川家の天下の元、華やかな町人の文化が花開いていく様子が思い浮かぶだろう。俺もそうだ。時代劇で見たような長屋に沢山の人々が住んでいて、街に活気が溢れている・・・まあ、俺はまだその様子を見た事はないが。
何よりも、戦国時代は終わりを告げ、少なくとも明治に入るまで平和が満喫出来る。ここが大きい。
生前はしがないサラリーマン人生。結婚も出来ず、毎日会社とアパートを行ったり来たりの日々に憂いていた俺にとっては、まさに天国のような場所だ。
そう、俺、五郎太は次の藩主になるのだ!尾張藩の親父は若く、まだまだ働き盛り。その為、俺はこれから悠々自適な生活を送れる事になる。
その日々を思うと、楽しみで仕方はない。美味しいものをたらふく食べ、好きな事をどれだけしても怒られない。女の子に手を出しても、どれだけ浮気をしても誰も咎めない。だって、俺が藩主になるのだから。
輝かしい未来を思い浮かべ、俺は温かい乳母の腕に抱かれて眠った。
――余談だが、江戸時代の由緒正しき家柄に生まれた子どもの死亡率は異常に高い。
それは難病にかかり、治療の術なく・・・という理由。これは庶民にも当てはまる。
次に、第一は輿入れした女性や働く女性のほとんどが用いた白粉おしろいが原因だ。鉛入りのこの白い粉は、汗で溶け出し、徐々に体を蝕む。特に乳母の影響は大きく、乳を吸う事で鉛の毒が体内に溜まって中毒死する場合もある。
それらは、あくまで一因だ。
――炊事場で、侍女が呟く。
「家継様の後継は一体、どなたになられるのでしょうか」
徳川吉通が嫡男、五郎太の場合は違った。
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