鏡花水月3

▽一面の小麦色の原っぱにて




 黄金色こぎつね追いし畝の波




▽何事もなく過ぎてゆく世の中




 黄昏の空に地に冬鳥の呼び声




与太話




 その山里には人食いの異形がいると噂されていた。腕に覚えのある侍が鬼退治に勇み参じると里の人々は大喜びで迎え入れてくれた。その晩、侍は辺りに響き渡るこの世のものとは思えぬ雄叫びを聞く。刀を掴み、泊まり小屋を飛び出すと、里の人間がひとりひとり山奥に入っていくのが見えた。鬼に食われてはいけない、と山に入ったひとりを引きずり戻して見ると侍は思わず息を呑んだ。人と思ったそれは大きな地蔵様だった。山に入った人々を見て回ると皆、大きな地蔵様でそれは狭い洞穴まで連なっていた。中には痩せ細った坊主がひとり経文を唱えていた。

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