あべこべの世界(18)
あり得ない。
これが一番あり得ない。
けれども今度は急に不安になった。
もしこのまま世界が戻らなかったらどうなるのだろう?
美人だと思われているこの世界はわたしにとって都合がいい。
今まで経験したことがないほど男性がわたしに優しいのだから。
食事だってずっと我慢してきた高カロリーの食べ物をどんどん食べていいのだ。
タバコだって吸い過ぎを気にしなくていい。
ただ、なんだかわたしはとてもひとりぼっちになってしまったような気がした。
誰もあべこべになってしまったことに気づいてないのだから。
いいや、それだけではない、あべこべになってしまったことで、みんな変ってしまった。
突然涙が溢れてきた。
この世界で私はたったひとりぼっちで、そしてわたしの周りの人たちはまるで別人になってしまった。
わたしは猛烈に淋しく不安になり、ベッドに突っ伏してしくしくと泣いた。
とても会社に行く気分にはなれず、わざとらしいかすれた声で仮病電話をする。
出たのは同じ部署の同僚だった。
切りぎわに
「体をよく冷やして、栄養のないものを取るようにね。お大事に」
と彼女は付け加えてくれた。
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