あべこべの世界(16)
平成イケメンがわたしを眩しそうに見つめて目の前に座っている。
カフェの小さめなテーブルのおかげで健二との距離も近く、お互いの呼吸の音が聞こえそうなくらいだ。
緊張してコーヒーを飲み干してしまった後は水ばかり飲んだ。
「嬉しいな。敏子さんとこうやって二人で話ができるなんて」
健二は頬杖をつき顔を傾ける。
イケメンでないと似合わないポーズだ。
「ぼくみたいな不細工な男に今日は付き合ってくれて本当に嬉しいよ」
ごくりと自分の水を飲み込む音が聞こえた。
これは謙遜で言っているのか?
それともあべこべの世界だから、イケメンな健二はもしかしてこの世界では本当に不細工になってしまうのだろうか?
「今までずっと敏子さんに声をかける勇気がなくて」
健二は真剣な眼差しで続ける。
いやいや、今まではわたしのことなんて眼中になかったでしょう。
「ぼくには直美くらいの女がつり合っているとは思うけど、敏子さんの美しさの前に惹かれてしまう自分の心が抑えきれないんだ」
直美くらいの女?
直美はこの世界では不細工。
「この後、食事でも一緒にどうですか?」
健二はずいと身を乗り出してわたしに迫った。
「は、はい」
わたしは健二の勢いに押されてそう返事をしてしまった。
もうこのあべこべの世界、どうにでもなってしまえっ!
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