公女殿下の家庭教師
七野りく/ファンタジア文庫
公女殿下の家庭教師 謙虚チートな魔法授業をはじめます
プロローグ
「アレン……信じられないが、君は王宮
「はぁ、そうですか」
朝から
……正直、反応に困る。
筆記は自分でも
だけど、結果は不合格。世の中厳しい。
それよりも、何よりも。
「教授、何か仕事はありませんか? お
「……またかね。しかも、故郷へ
「僕も少しだけそう思っていましたけど、世の中にはもっと
試験後に
やっぱり、苦手な実技があの内容じゃ
「本当に残念だ。君とリディヤ
「ありがとうございます。あいつは当然受かったと思うので、今後とも助けてあげてください」
「
「家庭教師ですか」
王立学校、大学校と延々と教え続けてきた苦い
……あ、
「
「おお、そうかね。なら、善は急げと言う。早速、
教授は机の上に備え付けられている電話機へ手を
うん? 相手はまだまだ
……なんか
「教授。やっぱり」
「もしもし──僕だ。そうだ、例の件なんだがね。今なら、一人
電話機を置き、僕へ満面の笑みを見せる教授。
……この人がこういう顔をする時は、基本的に
「
「……はめましたね?」
「はは、何の事かな? とびきり優秀な教え子が田舎に引き
「
「そう素直に言えてしまうのが君の良い所であり、悪い所でもある。なに、君ならばすぐに王都へ
そんな自信満々に言い切られても……。
公女
僕の祖国である王国には四人の公爵がいる。
建国に当たり多大な功績を挙げ、東西南北それぞれに広大な領地を持つこれら公爵家は、各初代へ王族が
例を挙げると、王国北方を守護しているハワード家当主のハワード公爵に付く尊称は『殿下』。
何でも、本当は『公王』として
とにかく王都にいても何も起こらない。相手が
「分かりました。お
「そうか。では、向かってくれ。場所はハワード公爵家。知っていると思うが、今の時季は王都よりも大分寒いぞ。気を付けたまえ」
「
「これが今日午後発のチケットだ。一等車を取っておいた。……君、十二分以上に
「……やっぱりはめましたね?」
「ははは、可愛い教え子には旅をさせねば。何より後で話を聞くのが楽しい。人生とは
ほんと楽しそうですね……。
仕方ない。お金を稼がないと田舎に引き籠る──こほん、帰れないし。今から約三ヶ月はお仕事
教授はああ言ったけど、実家に帰っているリディヤへも置手紙を残していこう。
何かしら『
向こうは
生徒になる公女殿下はどんな子だろう。良い子だといいんだけど。多少大変でも、リディヤ程じゃないだろうし、問題は性格だけかな?
──後から思えば、あの教授がわざわざ持ち出してきた案件を楽観的に考えていた自分へ、目を覚ませ! と言いたいところ。でも、こればっかりは経験してみないとね、うん。
初級魔法すら使えない子を王立学校に首席入学させるまで後百日。
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