後宮天后物語 ~簒奪帝の寵愛はご勘弁!~

夕鷺かのう/ビーズログ文庫

(大きくなったら、こうにいさまのおよめさんになりたい!)

 幼い頃、すうの夢といえば決まっていた。

 なにせ名門けいあとぎで三つ年上のこうは、親しい仲の欲目なしにも、ほれぼれするほどかっこよくて、強くて、真面目で、優しい人だったのだ。

(大好きな大好きな、紅兄さま! わたくし、あなたのおそばにいたい)

 かいていこくの公主として、口に出せないまま育っていく想いを持て余していた、ある日。

 突然──そのおさなじみに告げられた。

しようらん雛花。君は今日から、俺の妻だ」

 雛花はそくとうした。

「──死んでもお断りよ!!」

 理由は単純明快。

 彼は、雛花の大切な異母兄あにを殺して、さんだつていとなっていたからだ。

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