33話 VS『TEQ』

「ブラック・リリー! あなた何をしたの!?」

「今まで人工知能達はプログラムで縛られてTEQの運営をさせられていた。だから雫に頼んで、そのプログラムを破壊したんだよ」


 その結果としてTEQを維持できるものがいなくなって世界の崩壊だ。

 そして、それだけで終わるとは思えねぇ。


「あなた、なにをしたか分かってるの!?」

「当たり前だ」

「人工知能の解放!? もしも人工知能が世界征服を考えたら? 私はそういう話を何度もしたわよね!」

「悪いが世界がどうなろうがどうでもいい。俺には雫がいればいい」

「な!?」

「それともう一つ。俺は世界よりお前という友人の方が大事だ。お前のためなら世界だって敵に回してやるよ。不思議と雫と二人なら全世界が相手だろうが負ける気がしないんでね」

「それがなんで私に為になるのよ!?」

「人工知能を開放したら誰かが俺達みたいな人工知能と人間の融合を考える。そうやって公に研究が進めばお前に根付いたAIの取り外し方法も見つかるだろ」

「それより司君! 構えて! ラスボスが来る!」


 俺は雫に言われた通りに剣を構える。

 すると大きなクジラみたいな魔物が空の裂け目から現れた。

 恐らく強引にシステムを壊したのだから、その修正プログラムだろうな。

 しかしTEQのルールで戦えるのか怪しいな。


「ちょっと!? 説明してよ!」

「これから魔物の形をした修正プログラムが来るの! 私もそこまでは破壊できなくて……」

「なるほど。この武器は効くのかしら?」

「うん! 何故かそのプログラムにはHPが設定されてて全部削ると破壊できるの! でもHPは9999兆って桁違い…それも20分で削りきらないと全ての人工知能が戻されて……」


 雫が言い終わる前に赤薔薇姫は動いていた。

 彼女の連撃がクジラに叩き込まれる。

 しかしHPは殆ど削れない。


「今ので22313ダメージ。だめね。間に合わない!」

「管理者権限にアクセス出来たのでステータス最大にして全能力を開放する! あと必要なアイテムとかあったら言って!」

「でかした雫!」


 俺はいつの日かの能力を使って人形兵を作る。

 その数にして約1憶。それ以上はシステムの関係で不可。

 人形兵はすぐにクジラに飛び掛かり攻撃を始める。


「赤薔薇姫! 質より量だ!」

「そうね!」


 赤薔薇姫も人形兵を作り、一斉に攻撃させる。

 人形兵が一撃で100前後のダメージを与えるとして単純計算で数秒で200憶のダメージを出せる。

 しかしそれでも間に合わない!


「雫ちゃん! 即死の刃を出せる!?」

「出せるけどあれは1秒間に9999ダメージの毒を付与する武器だから効果は薄いと思う!」

「そう! 分かったわ!」


 それから赤薔薇姫はTEQに存在する最大攻撃力を誇る剣を握って再び連撃を叩き込む。そのダメージ量2949万8277という桁違いなもの。しかしその程度じゃ意味は無い」

「でも、やらないよりマシだろ!」


 考えろ! どうすればこの膨大なHPを削り切れる?

 なんか手は無いのか!!


「赤薔薇姫! いまの剣技って誰にでも出来るか?」

「少なくとも人形兵には無理よ!」

「そうか!」


 俺も何度も何度も剣を振るが終わりが見えない。

 そもそも考えみたら倒せないものとして設定されてるのだから当たり前か!


「ねぇブラック・リリー。アニメや漫画だったらこういう時はどうやって倒すのかしら?」

「そういう時は全TEQのプレイヤーが集まるのが定石だろ」

「たしかにありそうな展開だわ! でも、それには期待出来そうにないわね!」


 考えるより先に体を動かすべきだ。

 しかし、そういうものに頼りたくなる気持ちも分かるけどな!


「赤薔薇の舞!」


 赤薔薇姫が隣で最大ダメージの5917万2949を記録する。

 もしかしたTEQの歴史史上最大のダメージじゃないか?

 もっとも9999兆の化け物からしたら痒くもないだろうが!


「必殺技でもダメね! 期待はしてなかったけど!」


 もう一歩、次のステージだ。

 もっと高いダメージを出せばいい!!

 それこそ一撃で10兆くらいのな!


「クララ・ストライク3!!!」


 今までのクララ・ストライクを次のステージに持っていく。

 そのダメージ量は4682万2392だ。

 かなりの高ダメージだが足りない!


「私の方が高いわ!」

「そんなの乱数の範囲だろ!」

「乱数で1000万近く変わったら堪ったもんじゃないわ!」


 そんな時だった。上から斬撃の雨が降り注いだ。

 もちろん俺の攻撃でも赤薔薇姫の攻撃でもない。

 そのダメージ量は合計で28憶……


「はい。喧嘩しない」

「お前は!?」


 俺は慌てて空を見る。

 そこには白一色の見覚えがある男がいた。

 そう、ホワイターだ。


「とりあえず優勝おめでとう。今さっき全人工知能に協力を要請した」

「お前……どうして……」

「これは僕の戦いでもある。そう僕の嫁を自由にするためのね。そんな舞台に僕が来ない方がおかしいだろ。それに戦友がピンチだったから助太刀にね」

「サンキュー!」

「気にするな。一気にケリをつけるぞ!」


 よくよくみたら斬撃の雨の一粒一粒はアバターだった。

 恐らく人工知能達が操作してるのだろう。


「ブラック・リリー! 私もいます!」

「黒姫! 久しぶりだな!」

「ええ! でも今はこいつを倒しましょう!」


 そうして総攻撃が始まった。

 ログインした人工知能達も人形兵を作る。

 そして人形の総数は約1兆。流石のこの数には勝てず最大の敵は崩落する。

 俺達の最大の戦いはホワイターの活躍で勝利で終わった。


「今回の敵は人工知能達が協力すれば勝てるように敢えてHPが設定してあったのかもしれないな」

「どうだかな」


 やがて人工知能達は散っていく。

 世界ぼ崩壊も止まり、この場には俺とホワイター……そして赤薔薇姫の三人だけとなった。


「間もなく強制ログアウトだな。そしたら警察とかに捕まるのかな」

「ホワイターはそれでいいのか?」

「うん。白姫と暮らせるならそれだけで満足さ」


 さて、俺はどうなるのか。

 もっとも答えは決まってるのだが……

 俺は全世界に喧嘩を売った。もう生きていくのは難しい。


「あとはレオナルド任せだな。なぁ赤薔薇姫」

「なに?」

「レオナルドに伝えといてくれ。俺は雫と二人で暮らすって」

「レオナルドって誰よ……」


 でも、これで良かったのかもしれない。

 これからどうなるのか。そんなの分からない。

 でもブラック・リリーは消える。


「赤薔薇姫。お前と戦えて良かった」

「ちょっと! まさか!」

「世界は楽しいことだらけだ。じゃあな」


 さよなら。みんな元気でな。

 そうしてブラック・リリー……いや、天草司は世界から消えた


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る