24話 攻撃

 俺に攻撃ターンが回ってくる。

 すぐに俺はタカシがいる森に転移してタカシを倒しに行く。

 しかしタカシも必死の攻防を見せて、上手く攻撃に繋げられずにいた。


「リセス・スラッシュ!」


 剣を横払いした後に、前に三連撃入れる技。

 そんな技をタカシは華麗に避けていく。


(次は上からの振り下ろし……)

「クララ・ストライク!」

(いや、一撃の後に二連撃だから後ろにステップで回避!)


 タカシは俺の動きを見てから反応している。

 それを可能にする芸当は赤薔薇姫クラスとは言わないが中々に速い反応速度を保持してる強者なのは間違いない。


「消えた!?」


 俺は転移を使って背後に回って即死の刃を投げる。バックステップで飛んで、すぐに反応出来るのは赤薔薇姫くらいだ。


「いや、後ろか!」


 間違いなくここで俺が勝つ予定だった。

 しかしタカシは、その瞬間ありえない事に体が液体へと変わった。

 液体になったことにより即死の刃は木に突き刺さり、消滅します。


「……能力。液体化」

「どう攻略しますか?」


 液体化は1分に10秒だけ体を液体に変える能力。そして液体の間は如何なる攻撃も通用しない。分かりやすく言うならば緊急回避するだけの能力……


「俺は何度か、その能力を引いたことがあって攻略方法は知ってるんだよ!」


 攻略は50秒が鍵だ。

 能力使用後の50秒間は無敵になれない。

 だから今から50秒以内にケリを付ける。


「見せてもらいましょう」


 液体から肉体へと体を戻す。

 俺はその一瞬を逃さずに剣で首を跳ねようと接近した。

 しかしタカシはすぐに肉体を得た瞬間にしゃがんで足を引っ掛けて俺を転ばせる。

 隙を突かれた動きに俺は反応出来ずに、首を押し付けられて地面に叩きつけられる。


「チェック・メイトです! 時よ! 飛べ!」


 そう言ってタカシは時計を出して、その針を強引に動かした。

 針をある程度動かすと時計は青い粒子となって消えていく。

 しまった! そのアイテムは……!


「時飛ばしの時計。一回のゲームで一つだけ存在するアイテムが拾えてラッキーでした」


『攻守交代の時間です。 タカシ様に攻撃権が移ります』


 ゲーム内の時間を攻守交代まで飛ばしてしまうチートの使い捨てアイテム。

 まさかタカシは常にカウンターを狙って……


「対戦。ありがとうございました」


 銃を出されて、そのまま心臓に六発打ち込まれていく。そうして俺は再び負ける。


『勝者。タカシ』


 再び現実へと引き戻された。

 しかしどういうカラクリだ……

 あいつは一回も“時飛ばしの時計”の事を考えていなかった。読心がある以上は間違いなく気付けるはずなんだ……

 考えろ……なんか見落としてる……!


「司君!」

「雫……」


 すぐにいつもの様に雫が俺の元に駆け寄ってくる。どういうカラクリだ?

 それが分からなければ俺は勝てない。

 もしもループしても再び負ける。


「ブラック・リリー。対戦ありがとうございました」

「こちらこそ……」


 タカシの行動パターンは読めていた。

 間違いなく読心に成功していた。

 それなのに“時飛ばしの時計”だけは読めなかった……

 どうやったらそんな芸当が出来る?

 大前提として俺の読心能力は知られていないと考えてもいい……


「……もう一度」

「雫。少し考える時間をくれ」

「分かった」


 まずタカシは知る術がない。

 対戦中に気付いた素振りすら見せない。

 それに何よりも時飛ばしの時計だ。

 あんな都合良く手に入るものなのか?

 あまりにも運が良すぎる。

 そういうものだと割り切るには……


「……そういうことか! シズク!」

「ん?」

「対戦相手はタカシじゃねぇ! ちょっと付き合え!」

「え? え? はい!!」


 情報漏洩者がいる。

 タカシにアイテム情報や俺の能力情報を伝えた存在がいる。

 そして、それが出来るの運営側の人間か内部搭載されてる人工知能だけ。


「……あら、惨めに負けたブラック・リリーだわ」

「赤薔薇姫!」

「どうせループするんでしょう? 早くすれば良いじゃない。ちなみに私はヒントを与える気は……」

「ちょっと付き合え!」

「なんで私が指図されるのかしら?」


 人工知能だとしたらどうにかしてコンタクトを取らなければならない。

 運営側の人間だとしても同じこと。

 まず、何故そんなことをするのか聞かねばならないだろう。


「優勝候補の赤薔薇姫で本名は姉小路茜。姫の恋人にして敗北者ブラック・リリーこと天草司。そして絶対なる姫にして人工知能の始祖シズク様」


 そんな俺達の前にメガネをかけた紫髪のロリが現れる。いつの日かメガネちゃんと呼べと言ってきた幼女だ。


「先に言っておくわ。マップ情報に能力をタカシに伝えたのは私よ。ブラック・リリー」

「お前……」

「でも王子様にはそのくらいの逆行は跳ね除けてもらわないと困るのよ」


 こいつがラスボス。

 TEQ運営でシズクの関係者か……


「さて、敗北者。あなたはもう役者でもなんでもない。テストするまでも無さそうね」

「何故こんなことをした!!」

「興味よ。シズク様が好きになるほどの男性ならこのくらい簡単に打ち破ると思ったからかしら。まぁ期待外れも良いところだったけどね」


 原因は分かった。

 しかしどうする?

 過去に戻っても妨害は止められない。

 赤薔薇姫を過去に戻すか?


「まぁ、この程度の妨害に足を掬われるようじゃ隣にいる赤薔薇姫に勝つなんて夢のまた夢よ。どっちにしろ私が妨害しなくても退場してたわ」

「好き勝手言いやがって……」

「ごめんなさい。事実を言うのが趣味なの」


 しかし悔しい事に彼女が言う事は間違いないだろう。たしかに赤薔薇姫にはこの程度突破出来なければ勝てない。


「それとシズク様。あなたにも一つだけ教えておかねばならないことがあります」

「……なに?」

「実はあなたは人工知能じゃなくて人間なのです」

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