第27話 後処理
その後相賀は、残っていたゴブリンの掃討を行った。
何匹か取り逃がしたが、女王ゴブリンがいない環境では問題はない。
相賀はできる限りの範囲で、ゴブリンを倒して回る。
最終的には、女王ゴブリンの周りにいた幼体ゴブリンも全部処分した。
この幼体の処分には、だいぶ心理的にくるものがある。
「ふぅ、こんなものか」
ゴブリンの処分が終わった相賀は、汗を拭う。
相賀がゴブリンを処分している間、ルナはというとずっと鉱物を探し回っていた。
「こ、これはリブラント鉱石!なかなかに珍しい鉱物があるじゃないですか!」
ルナはずっと興奮したまま、洞窟内を探索していた。
そんなことを横目に、相賀はゴブリンの山をどうにかしなければと考える。
「これを燃やすとなると、いったん外に運ぶ必要がありそうだな……」
まずは女王ゴブリンを運ぶことから始める。
そのまま運ぶには大きすぎて運べないため、剣で解体してから運ぶことにした。
大まかに、腕と足、胴体2つと頭に分けて運ぶことにする。
早速その作業をしていると、胴体部分に一つ違和感を覚えた。
「なんだろう?」
違和感の元をたどるため、相賀は女王ゴブリンの体を解体する。
すると、その体内から石のようなものが出てきた。
「なんだこれ?」
相賀の握りこぶしくらいある大きな石だ。
重さとしてはずっしりとあるくらいで、片手で持つには少々不便な程度だ。
これの正体が知りたいところだが、あいにく今は作業の途中である。
さっさとゴブリンの処分をしなければいけない。
相賀は身体強化を使って、ガンガン処分するべきゴブリンの死体を外に運ぶ。
ついでに処分を簡単にするために、穴を掘って、そこに投棄する。
数時間ほどで、洞窟内にいたゴブリンを運び出すことができた。
「ちょっとルナさん、手伝ってほしいことがあるんですが」
「はいはい、なんでしょう」
「物を燃やす魔法って使えますか?」
「もちろん。物を燃やすのは魔法を嗜む人間にとって初期に覚えるものですから、楽勝ですよ」
「では、このゴブリンの山を燃やしてもらえませんか?」
そういってルナに頼んだものは、文字通り山のようになったゴブリンの死体の山である。
「……物には限度があるって知りません?」
「でもさっき楽勝って言ってませんでした?」
「規模の問題ですよ!ここまで大きいものは初期の魔法では燃やしきれません!」
「じゃあこれ、どうしましょう?」
「そうですね……、少々したくはなかったんですが、あの方法を使いましょう」
そういって、ルナは鞄から何かを取り出す。
それは相賀も見たことがあるだろう。
「それは……魔石?」
「マサヤさん。これを粉々にして、このゴブリンの山にふりかけてくれませんか?」
「粉々って、どの程度で?」
「大体粒の大きさが2mmくらいになるまでですね」
「分かりました」
相賀は身体強化を使い、近くにあった石を使って魔石を砕く。
そして砕いたそばから、それをゴブリンの山へ大まかにふりかけていく。
「終わりました」
「では、ここから少し離れていてください」
ルナの言葉通り、相賀はゴブリンの山から少し距離を取る。
ルナは少し前に出て、魔法を発動した。
「ホーリー・ファイア」
少し大き目の火球のようなものが飛んでいく。
そして、それがゴブリンの山へと向かう。
すると、ゴブリンの山から次々と小さな火柱が噴き出す。
遠目から見ていると、まるで爆発のようである。
「うわっ!何が起きたんだ?」
「私の放った火属性の魔法に、マサヤさんが撒いた魔石が反応して爆発に似た現象を起こしたんです。これだけの火力があればゴブリンの肉体は炭になることでしょう」
「まぁ、確かにそんな感じはしますけど」
轟々と炎は立ち上っている。
それはまるで、ガソリンを撒いて燃やしたような感じだ。
そのまま1時間程燃え続けた。
それだけの時間が経過すると、ゴブリンたちの体は炭と化す。
ここまでになると、あとの処分は簡単である。地面に埋めればよい。
ひとまず、相賀はこの後の祟りが来ないように、一応手だけは合わせた。
そして、そこに掘った時に出た土を被せていく。
こうして、ゴブリンの処分は終了した。
「よし、これで依頼達成だな。あとは様子を見に来てもらうだけだ」
「私も用事は終わりましたし、帰りますかね」
「あ、そうだ。ちょっと見てもらいたいものがあるんですが」
そういって、相賀は女王ゴブリンの体内から出てきた石を取り出す。
「これ、どんな石か見てもらえませんか?」
「どれどれ……」
ルナはそれを受け取る。
その瞬間、地面にルナの手がグイッと落ちた。
「だ、大丈夫ですか!?」
「これ、すっごく重いんですけど!」
「そんな感じはしなかったんですけど……」
「マサヤさん、馬鹿力ですか!」
なぜか相賀が責められた。
とりあえず、地面に置いて確認することにする。
ルナは杖で石を叩いて、その硬度や内部の構造を確認しようとした。
「うーん、これものすごく硬いみたいですけどねぇ。ちょっと削ってみてもいいですか?」
「別に構いませんが」
そういうと、ルナは何か呪文のようなものを唱えて、杖の先端を石に当てる。
すると表面が若干削れた。
その瞬間、削れた部分から虹色に光り輝く光があふれだす。
そして、その光はすぐに消えていく。
削った部分を見てみると、そこは周りと同じように石のようになっていた。
「これって伝説の虹色魔石……」
「何か知っているんですか、ルナさん」
「えぇ。虹色魔石とは、内包する魔力の量が通常存在する魔力に比べてはるかに多いものを指す特別な魔石のことです。その名の通り、虹色に光り輝く魔石であり、その生成過程は一切明らかになっていないものです。それがなんでこんな所に……?」
「魔石ってことは、使うことができるってことですか?」
「確かに使うことはできるとされています。しかし、それは選ばれた人間にしか使うことができないとされています。その選ばれた人間というのが、どのような人間なのかは分からないところです……」
「そうなんですか……」
そういってルナは魔石を相賀に渡す。
「これは持ち帰って研究したいところですが、第一発見者であるマサヤさんに帰属します。ので、これはマサヤさんに返します」
「せっかくの研究資料なのにいいんですか」
「よくないです。ものすごい研究したいです」
「なら持って行ってもいいのでは……?」
「いえ。研究者たるもの、研究材料は公正に手に入れるべきです」
「そうですか……」
結局の所、虹色魔石は相賀のものとなった。
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