《プロジェクト》ドラクリアン

抜きあざらし

承前 吸血甲冑について

 吸血甲冑ヴァンパイアメイル……それは人類が人知を超えた脅威に立ち向かうため知恵と魔法で作り上げた新たなる鎧の総称だ。普通の甲冑と変わりない等身大のものから、天まで届く巨大な四足よつあしまで、その姿形は千差万別。サイズや素材となった魔物によっていくつかの等級クラスに分類され、魔物との戦いから力仕事まで、それは当初の目的を遥かに越えて人類の生活に広く浸透している。


 使用に特殊な訓練を必要としないのも、大きなメリットだ。

 魔物の骨と筋をベースに貴金属で組み上げられた装甲は、血液から意思を読み取る魔法の石――ヴァンパイアトークンで制御される。トークンは装者の血を吸って意思を読み取り、銀神経ミスリルナーブを通して全身に伝える。銀神経にかけられた翻訳魔法を通して装者の意思は変換され、張り巡らされた筋や軟骨に新たな生命を吹き込むのだ。

 似たような存在に自立魔法甲冑ゴーレムがあるが、こちらは高度な魔力と魔法知識を要する超・上級者向けの代物。一部の偏屈な魔道士は未だにこちらを愛用しているようだが、今やトレンドは吸血甲冑。VMなどという略称も広く普及し、今や大陸をも飛び出し世界中で人類の営みを支える一般的な風景の一部となった。



――機体の分類について


・ゴブリンクラス

 最も小さいタイプ。小型の魔物をベースにしたもので、外見は通常の甲冑とほとんど変わらない。冒険者などに重宝される。


・オーガクラス

 人間よりも少し大きな魔物を素体とした場合、大概がこのタイプになる。

 建築現場などでも用いられる汎用性の高さから市場に最も多く出回っており、テロや犯罪行為にも利用されやすい。


・ギガトンクラス

 キュクロープスやギガンテスなど大型の魔物をベースにしたタイプ。いわゆる人間的な人型が多く、バランスの取れた機体が一般的。

 正規軍などに多く配備され、国家間での闘争などにも用いられる。


・ドラゴンクラス

 竜を素材としたものはサイズに関わらず基本的にこのクラスに属する。

 竜は同一種でも個体差が多く、基本的にワンオフの機体となる。

 内包魔力や生前の特殊能力などを由来とした不思議な力を扱える機体が非常に多い。わざわざクラスを別に用意されているのはそのため。


・トルネードクラス

 超巨竜や島亀など、存在そのものが災害とまで言われ人々に畏れられる『災魔』

 人類が辛うじて撃破したそれを素体としたのがこのクラスである。

 その圧倒的な存在は人類にとって過ぎた力であり、基本的に災魔との決戦以外では持ち出さないようにと国家間で取り決めが成されている場合が多い。


・ワイバーンクラス

 特殊な変形機構を持ったドラゴンクラスは例外的にこのクラスに分類される場合がある。

 いわゆる俗習的なものであり厳密な基準はなく、単にドラゴンクラスとして分類されている場合も多い。要は製作者の趣味なのだ。

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