言の葉 ~S嬢に捧ぐ~

森乃 梟

第一話 訃報

なぜ君が選ばれてしまったんだ?

他にも沢山人間はいるし

ここにも不要とされる者がいる


にも拘わらず

君が選ばれてしまった


優しい少女のような君だったね

ご両親にもとても大切にされていて、羨ましいくらいだったよ


心配症で

焦って話す君がとても可愛らしかった。


大切にしたい人だった

これからも友であり続ける人だった


もう何も言っても始まらない


袋に包んだお金で

君と食事に行けば良かった。


もう居ないのかい?

中空にいるのではないかい?

49日もまだなんだよ?

声が聞こえるかい?

届いてる?


なぜ

君がこの世から

居なくなってしまったのか?!


自分を制御する自分がいて

思いっきり泣くこともできやしない

これは悪夢だ!

信じきれない自分がいる


一緒に年を重ねていく筈が

君だけ若いままになってしまった


声も出せなくなってしまった今

君に伝わって欲しいことは

ただ一つだけ


どうか夢に現れて欲しい

頼み事 心配事を伝えて欲しい


何も出来ない自分ではあるが

せめて君の頼み事を訊きたいんだ


心配症で遠慮がちな君だから

言ってくれないのかもしれないが

役に立ちたいんだ


どうか伝えて欲しい

ずっと待っているから


願わくば

もう一度 君の笑顔を見たい!


君を思って 涙が頬を伝う


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る