第8話

来た時のように星に乗り、外の世界へーーー


どんどん、どんどん遠くなる。

どんどん、どんどん小さくなる地球。


私の前から、消えていく……。



「………見つけた」


巨大な悪魔が笑っているように見えた。両手を前に出して、力を込める。メイドちゃんから借りた、この力でも出来るかどうか分からない。


でも、ここで止めないと。私の大事なものが、消えてなくなる。


石に押され、私の体がボロボロと砕けていく。

何回も何回も何回も何回も止めようとしたけど石は止まらなかった。


私だったモノが、宇宙に散らばる。


はぁ………もう……ムリ……。


「お嬢様。そんなにあの親子が大事なんですか?」

「遅いよ……現れるの……」


突然現れたメイドちゃん。粉々になった私の『欠片』を丁寧に一つ一つ拾い集めている。


「今までどこに行っていたの? とっても寂しかった。……あの…ね」

「分かっていますよ。……あの親子を助けたいんですよね。でも、その為には、お嬢様が犠牲にならないといけません。強力な魔法には、それなりの対価が必要なんですよ。……この世界から消える覚悟はありますか?」


消えるのは、恐い。消えるってことは、もう二度とメイドちゃんに会えない。あの親子にも。地球も見れなくなる。


でもーー


「大丈夫……大丈夫……」


自分に言い聞かせた。私は、思い出していた。あの親子の笑った顔を。不安が、消えた。


「……今、何してるかなぁ」


私のこと忘れないでね。


「消えてもいい。だから、お願い。助けて、メイドちゃん」


「……分かりました」



【 さようなら、お嬢様 】



強い光。


薄く目を開けると、あんなに大きかった石が、メイドの手のひらに乗っていた。


「ありがとう。メイ……あっ!」


違う違う。メイドちゃんじゃない。


「ナタリだよね」

「思い出したんですね、メリーザ様。せっかく、ツラい記憶を消したのに……」

「もう、いいの。私は、大丈夫だから」


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