【ギター】使いの最強テイマー、魔獣の無双軍団を作り上げる

瑞風雅

第1話 魔の巣

 俺は友達の湊 ( ミナト ) を呼び出して、日頃のストレス発散に朝まで飲みに付き合わす事にしたので、繁華街を2人で練り歩く。



「 ミナト、俺はあまり店を知らないけど、ミナトは良い店を知らないか? 」


「 お前が呼んだのに、決めてねぇのか!お前、昔、繁華街で弾き語りしてたから、詳しいんじゃねぇの?」


「 ギター持っての弾き語りって、昔の話じゃねえか。最近、繁華街来てなかったよ。それにだいぶ変わったしな。なら昔、よく言ってた、スナックに行ってみるか?ママが面白かったんだよ 」


「 場所分かんのか!落ち着ける所なら何処でも良いわ 」


「 あのスナック、路地裏の静かな場所にあったから、道が分かりにくいんだよな。でも、久しぶりに行ってみるか 」



 俺は、昔の記憶を頼りに人が1人通れるかどうかの路地裏を進む。おいおい、自信なくなるわぁ!この道だよな!



「 おっ! あの看板だよ。あった。あった。 」


「 しかし、へんな所にあるよな。この店 」




 スナック 魔の巣



 相変わらずの店名通りの店だな。



 ナジャ似のママとクリス似のボーイが微笑ましく、俺達を出迎えてくれる。俺達は小声で今の心境を言い合う。



 店内を見渡すと、全ての物が赤で統一されていて、他の色を受け付けない異様な雰囲気を醸し出している。そして、正面には大人1人が入れそうなデッカい水槽があり、中には20.30㎝はある金魚がウヨウヨ泳いでいて、見た事もない大きさで異様な雰囲気を後押ししている。



「ミナト、すまん。なんか俺が覚えているママと違うんだよな。前のママも似てる雰囲気ではあったんだけど、目の前の人達キャラが濃い過ぎるわ。この2人に喰われそうな勢いに恐怖を感じてる 」


「 俺も、ここまで濃いのは初めてだ。どうしようもない時は、さっさと店を出ようぜ 」



 2人しか聞こえないように小声で話をしていると。

 


「「「 2人とも可愛いわぁ。早く、座って、どうぞ、どうぞ 」」」



 2人の珍獣は、広角を、にっと上げて妖艶さ全開の笑顔を向けている。おおお!逃げれない威圧感が俺を襲ってくるんだが。


お袋、ゴメンな。俺は家に戻れないかも知れないわ。



「 カイ、何をぼーっとしてんだよ。お前が先に行けよ 」


「 お前が求めてる物が、ここにある。だから早く行けよ 」



 2人の押し合いが続いていたのだが、それを見ていた、店のママにウインクされて、手を引かて先に案内される。



「早く、座んなさい。美味しいお酒を飲ませてあげるから。それとも、私達の方が美味しいかもよ 」


「 「「 そりゃないわ 」」」



 と、ミナトと2人で微妙な感じで、ママとのやり取りをして、お酒とおつまみを頼む。意外と、おつまみが美味い。下手な居酒屋なんかより美味いじゃん。これは、常連になりたいと思うレベルだ。



「ママ、このおつまみ美味いです。これは、ママが作ったんですか? 」


「 違うわよ。もう1人の子が「 美味しくなーれ!美味しくなーれ! 」って思いながら作ってるのよ。貴方達のお口に合って良かったわ 」



 おいおい、男が独り言を言いながら、美味しくなーれって、何の呪いだよ。美味いから良いけど、見た目と中身が全然違いますよね。貴女達!



 そんな事を思いながら、徐々に雰囲気に慣れてきたが、2人で話してる間は、店の2人は会話に入って来ず、俺たちの事を観察するかの様な視線だけが気になったが、俺達はお互いの愚痴などを言い合ったり、楽しかった事など語り合っていた。



「 2人は何の仕事してるのかしら?」



 突然、ママが話に入ってきた。ちょっとビックリしたが、仲間に入りたいのだろう。



「 仕事楽しいッスよ。動物園で獣医してるんですけど、人間より素直だし甘えてきますし。あの潤んだ目で見つめられると‥‥‥ なんでも許せるわですよねぇ 」


「 俺も分かるわ。俺は本に囲まれてる時が幸せなんだけど、今の仕事はマジで天職だと感じてるし、萌えるしな。実際 」



 ママは、正面から、2人を値踏みするように、目を離す事なく、話を聞いている。そして、クリス似のボーイは俺達に声も掛けずに、すうーっとミナトの横に座って、腕を絡ませてきた。



 ミナトも、女性なら嬉しいだろうが、今回は男性で明らかに、あちら系の方で全身赤の服装をしているのだ。



 顔を引きつらせながらも、抵抗出来ないでいる。

頑張れ。俺の代わりにボーイの相手をしててくれ。

俺は、周りの雰囲気に飲まれない様に、言葉を続ける。



「 司書って、暇そうで本が読み放題ってイメージだもんな。良いよなぁ 」


「 バーカ。色々、やる事多くて大変だし、本の知識もある程度いるんだよ。お前こそ、動物とお気楽生活送って、頭がお花畑じゃねえか 」



 こいつ、俺の事を分かって言ってんのか!お花畑って‥‥‥

友達じゃなかったら、ケンカになってんぞ。



「 簡単に言うなよ。毎日ウンチにまみれても構わないと思わせてくれるほどの魅力が、この仕事にはあるんだよ。愛する動物たちに囲まれ、仕事ができる。診療の合間には、動物の頭をそっと撫でて癒される。病気が治ったあかつきには飼育員と手を取り合って涙を流し、また他の動物に向かう。分かるか! 」



 正面のママが、なんか優しい笑顔を向けて来るんだけど、俺にとっては御褒美でもなんでもない。俺は、寒気を覚えたが、気づいてないフリをしてミナトに顔を向けると、そこにも、クリス似のボーイが、ニタァと俺を舐める様な笑みで見ている男性の顔が‥‥‥

やめてくれよ。

そんな優しい笑顔を俺に見せないでくれ!



「 司書も同じようにやり甲斐あるぞ。図書館を利用する人が快適に本の世界を楽しんだり、知りたい事柄を調べて納得したりするための縁の下の力持ちなんだよ。

そのためには、自分の興味のある分野以外の情報にも高くアンテナを立ててないとダメだし、他の図書館を見学したり、図書だよりを取り寄せて見せてもらったり、利用者の要求は多岐に渡るから、対応もハンパないし 」



「 まぁまぁ、2人とも落ち着いてね。2人とも熱いわねぇ。仕事に生きる男の人って素敵だわぁ。食べちゃいたいわぁ 」



 ママとボーイの2人に食べられるって、俺は、頭で考えるのやめて、笑顔を向ける。



「 貴方達なら、何処でも生きて行けるんじゃないの!? 専門の知識もあるし、人助けできる優しい心もありそうだし。私、貴方達を気に行っちゃたわ。今からは私の奢りでお酒出しちゃおうかなぁ 」


「「「 えっ 」」」



 2人して、ハモってしまったよ。



 まさか、安くするなら分かるけど、オゴリって! マジで貞操は大丈夫か!俺の!

ミナトも、俺の顔を見て同じ事を考えてるらしい。しかし、ミナトも一緒にいてるし大丈夫だろう‥‥‥と思う‥‥‥



 それからの飲み方は、本当に酒に溺れる様に飲んだ。飲みまくった。グラスが空になると、ママ達がグラスに酒を注いでくれる。みんなの顔が歪んで見えるわ。



 マジで、気持ち悪くなってきた!



 俺はトイレに行きたくなって立ち上がる。だいぶ酔ってるのが自分でも分かる。足がもつれる。それを見ていたボーイの方が肩を貸してくれてトイレまで連れて行ってくれた。

俺は、トイレの中でぼーっとしながら、用を足していると、ミナトにママが何か話しかけている。



「ミナトちゃんはもうすぐ、私の‥に‥て行って‥るわ 」



 何を言ってるんだ。私の?行って?

ヤバそうな会話じゃねえのか。俺は急いでトイレから出て行って、席に座って「 はぁ〜 」とため息を吐くと、ママ達がニコニコしながら俺を見ている。何が楽しいんだ。俺も楽しく酔えて気分が良いのはあるけど。ママは、俺の気持ちが分かってるかのように。



「 あら、随分ご機嫌じゃない。貴方も幸せにしてあげるわ。私の力で 」



何を言ってるんだ? 私の力で? ミナトにも話してた事を俺にも話してるけど、話が理解出来ない?



「 なにも考えずに、私に任せなさい 」


「 ママ、なんの事を! 意味がわからん! 初めて会った相手に任せる!理解できない 」



 俺は怖くなって、ミナトに声を掛けようとすると、横で寝てしまったいた。それを抱きしめる様にボーイの男がミナトの腰に手を回している。それでも俺はミナトに声を掛ける。早く、ここから出たい。



「 ミナト、帰るぞ! 起きろよ! 」


「 あらあら、無理に起こしたら可愛そうだわ 」

「 アンタ達は、黙っててくれ 」


「 あ〜ら、怖い。 怖い 」



 俺がこの場所にいるのが怖いんだよ。なんで、アンタ達が怖いんだよ。もう黙っててくれ。



 そんな事を考えていると、すう〜っと、ママの手が伸びてきて、俺の額に手を当てる。



「 ゴメンなさいね。貴方達はこれから違う世界に行っちゃうの。でも、貴方達なら大丈夫と思うわ。だって、他の生き物に優しい人間なのだから 」



俺は、半分意識がなくなりながら、ママの話言葉を聞いていた。

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