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 土曜の午前十時頃————


「あれ、兄ちゃん。こんな朝から家で仕事なの?」


 翔太郎は、自分の机に向かって仕事をしている陽介に話しかけた。


「ああ、原稿のチェックや事務が残っているからな」


 陽介は書類を整理しながら後ろにいる翔太郎と話す。


「これでも公務員だからな、土日の休みの間にやっておきたいことはあるんだよ」


「公務員って二日休みの所がいいよな」


「いやいや、そうとも限らねぇよ」


「そうなのか?」


 二人が話していると、一階の方から物音と叫び声が聞こえた。


『きゃぁあああああああああああ!』


 二人はビクッと体を震わせる。


『何やってるの! あ、里菜‼ 逃げるな!』


 女子の叫び声と怒鳴り声がマッチしている。


 ————翔太郎、少し見て来い……。


 ————分かった……。


 二人は目を見合わせただけで以心伝心する。


 翔太郎はそのまま一階に下りて行った。



 十分後————


 陽介が順調に仕事を進めていると、また、騒ぎ声が聞こえてくる。


『翔太郎! やったわね! あんた逃げるんじゃないわよ!』


『うるせぇ‼ アイテムを取らなかった姉ちゃんが悪いんだろ‼』


『翔兄、お先ー』


 下の方から三人が何をしているのかすぐに分かる。


「お前ら、もう少し静かに遊べ‼」


 陽介が二階から叫ぶと、一瞬で静かになる。


 だが、また、うるさくなるのだ。


 ドンドンドンドン‼


 ドガガガガ‼


「……くっ……」


 陽介の手が止まり、勢いに乗せて一階に降りると————


 いつの間にか静かになっていた。


「俺も一緒にゲームをやらせろ!」


 と、リビングに入ると、三人はそれぞれ片づけをしている最中だった。


「あれ? ゲームは……」


「さっき終わったところよ」


 雪乃がそう答えた。


「理不尽すぎるだろ……」

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