「光の天使」地上編 第2章①「救出作戦」

ヨハネは、その家を

実はずっと前から

観察していた。



理由は、

サーシャと云う名前の

その家に生まれた

男の子だった。

アシュラの生まれ変わりのように

思われた。



もしそうならば、

これが最後の

救出チャンスだった。

夢魔の悪夢につかまり、

記憶の森で

迷子になってしまった

アシュラの魂を、

救い出せるかもしれない。



とにかくこの災害事故から

少年を救出し

その身を確保すれば、

少年の中に埋め込まれた

悪夢の種を

取り出せるチャンスも

無いとは言えない。



アシュラを

夢魔の魔の手から

やっと取り戻し

解放できるはずだった。



もう少しでうまく

ゆくはずだった。

夢魔よりもヨハネのほうが、

先に現場にたどりついていたのだ。



ヨハネは全速力で

少年に向かって進んでいた。

少年は危機的状態ではあったが、

完全に死んではいなかった。

今ならまだ少年を

生き返らせることができる

光のエナジーを

ヨハネは持っていた。



もう少しで救出できる、

少年に手を伸ばそうとした

その時だった。

すぐ近くで、小さな女の子の

泣き声がした。

母親が少女に覆いかぶさり

その命を助けたのだ。

母親の死体の下で、

女の子は泣いていた。



こうなっては

少女を助けないわけには行かない。

命の法則に従わねば

ならない。

ヨハネは少女を抱きかかえ

紅蓮の空へ飛び上がった。



少女を安全な場所に移動させてから、

再び少年を助けるべく

爆発現場に戻ったヨハネ。

しかしそこには、

母親の死体があるだけで、

少年の体は

影も形も無かった。



それは最悪の事態を

意味していた。

夢魔にまた、

連れ去られてしまったのだ。



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