お隣いいですか。

entsu

4月20日

神様が私たちの住むこの地に、

ジョウロで水を落としている。

パラパラと落ちるその雨粒は、私、千花高校2年大葉リヤの心を少し締め付ける。

今週はずっと曇りや雨で、晴れる日はほとんどないらしい。そんな朝の天気予報の報告はリヤの気分を下げた。



「なーんで雨かなぁー。」

1人でそんなこと呟いたって何も変わらないのは分かっていても声にしてしまう。



「行ってきまぁーす」

水色の傘をさして、春休み明け初の高校に向かう。いつもの道、いつもの風景。

何にも代わり映えのない、でも、別に不便でもないこの生活は自分に何をもたらしてくれるのか。


そんなことを考えていると、学校に着いた。

校門の前には、

たくさんの人だかりが出来ている。

「あ!久しぶりぃ!」

そう言って私の肩を叩いたのは、親友の柄山コナツ。陸上部所属で2年にしてエースの立場にいるコナツは、帰宅部のリヤにとっては憧れの的であった。

コナツと一緒に、新しい教室に入る。

クラス替えはしないものの、2階から3階に場所が変わった教室になぜかワクワクしたのは、きっと私だけじゃない、と信じたい。




黒板には、自分の席が示されていた。

窓側の1番後ろ。なんて幸運なんだろう。

コナツは…1番前の席。あらら、なんと…

「え、最悪なんだけど〜リヤ変わってよ!」

コナツは心底残念がる。

「席離れちゃったねー、って嫌だよ!」

と、初日からじゃれ合う。

その後ろには、多くのクラスメイトが自分の席を見るために集まっていて、私達はかなりの邪魔になっていた。急いでその場から離れて自分の席に着く。



まだ雨が降っているものの私は外を見て、

「いやぁー、いい席だこと」

1人でまた呟いてしまった。

「それなぁ、これならゆっくり寝れるや」

右から声がして振り向くと、熊木カイトが席に座り、悪い顔してニヤニヤしていた。

「え、カイト席となり?」

そう聞くと、カイトは親指を立てた。






私の隣の席は、

私が片想いしている男子でした。

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