3.団欒、焔、チェーンソウ

名取

プロローグ




『リア。お前はこの家に生まれたからには、お人形みたいに生きていくしかないんだ』





 冷たい皿。蛍光灯を反射する、テーブルの上の銀食器。

 昨日は箸と丼だったのに、今日はなんで外国風なんだろう。


『美味いか?』


 お父さんにそう言われて、慌ててフォークを握り、料理を口に詰め込んだ。

 でも、あれ? 

 どうしてか、噛んでも噛んでも、柔らかくならない。


 というか、私は今、何を食べたの? 


『美味いか? と聞いているんだよ』


 そう言われた途端、冷や汗が吹き出し、心臓の鼓動が早くなる。また一口、詰め込んだ。けれど、やっぱり飲み込めない。

 苦しさに流れてきた涙を、父が笑った。


『泣いてどうするんだ? 泣いたって、誰も助けてくれないぞ』


『お母、さんは?』


『母さんなら』


 父が皿を指差した。すると、皿の上の何やらわからないものが、赤黒く湿った何かに変わり、その中に、何か丸いものが浮かんできた。


 人の、眼球。


『今、お前が食べているだろう?』






「は、」

 息苦しさに、目が覚める。

 夢。

「……」

 私は起きた後も、しばらくぼうっと、見慣れぬ天井を眺めていた。おそらくはもうこの世にいない、父と母のことを思い出しながら。


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