一足先のお正月。

如月捺穂

次は猪ですね。

 お正月。

「改めまして、明けましておめでとうございます!」

 今年も厄介なお隣さんが絡みに来た。

「お、おめでとうございます…。今年もおしゃれな着物を着てるんですね」

 お隣さんは僕の二つ年下で、それなのに少し大人びた雰囲気の女性だ。今日は生まれつき茶髪だという肩につきそうな長さの髪を、後ろでハーフアップにし紺のリボンで結び、品のある緑みの黄色に白い菊が描かれている着物を着ていた。

「さぁさぁ、早速一緒に初詣に行きましょう!」

「そうですね…少し待っててください」

 僕は彼女の着物に合うようなカジュアルな服装に着替えた。

「お待たせしました。じゃあ行きますか」


 ─僕らが毎年訪れている、晩秋神社は例年よりも混みあっていた。

「ひゃ~、やっぱりもっと早く来るべきだったでしょうか…」

「そうですね…どうせ来年も来るのでしょう?」

「まぁそのつもりですけど」

 彼女は即答した。どれだけ僕と行きたいんだよ。

「じゃあ、今度は早めに行きますか」

「そうですね!」

 それから僕らは長蛇の列に並び、賽銭し、今年は単位が無事とれることを祈る。

「さて、お詣りも済みましたし、おみくじ引いちゃいましょうか!」

 ふいに彼女が無邪気に僕に笑いかけ、頬が赤く染まりかけたが特に何もなかった。別に彼女のことはお隣さんとしてしかみたことがないから、なにもなくて当然。まぁ、藍澤さんのような人は、何処にもいる気がしないけれど。

「澄田さーん?どうかしました?」

 僕らがこうして一緒に初詣に行くようになってかれこれ3年間はたっていると思う。そういえば毎回、あらゆるイベント事に連れ回されているな…。あぁ、今年こそ恋人が欲しい。

「あ、ぼーっとしてました…結果はどうでした?」

「…中吉ですね。ほら、澄田さんも引いちゃいましょうよ~」

「そうですね…すいません、僕もお願いします」

 神社の巫女さんにお金を渡し、おみくじを一つ引く。

「…小吉!私よりも悪かったけど気にしないでいいと思いますよ!ほら、恋愛関連のところ見てください!」

 僕のおみくじには、“待人:早く来る”、“恋愛:誠意を尽くせば吉”と書いてあった。

「いい人が見つかるといいですね!」

「そうだといいけどね」

 まだまだ新年は始まったばかり。これから先、藍澤さんのことが好きになれたらいいなと思ったが、それは僕にはまだ先のことになりそうだ。

「今年もよろしくお願いしますね」

「もちのろんです!」

 そして僕たちは笑いあった。


─明けましておめでとうございます!

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一足先のお正月。 如月捺穂 @kisana_tunakan

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