第11話 祝宴
今私がいるのは
アリュメト城内
宴会の席だ
席には
周辺の諸侯ら
今大会に出場した騎手達
奥には
アリュメト王とアルメンドロス等の王族
傍にはガンダール軍団長が立ち
そしてカルーラ王国の王子ジュリアスも同じ席にいる
今この時間は馬上槍試合の騎手達を讃える為の祝宴である
替え玉として参加した私もジュリアス本人から直々に招待された
この祝宴はジュリアスが酒や馳走を皆に奢っているのだ
騎手達は皆ジュリアスの恩恵を受け酒を楽しんでいる
ジュリアスがあの時馬から落とされた後
決闘は馬上槍試合のルールに則りジュリアスの敗北となったが
当のジュリアスは勝者のガンダールを讃え始め
一時はどうなるかと思われたが場は治まった
その後ジュリアスが優勝賞金で祝宴を開くと宣言し
私たち出場者のみならず
城の外にも酒と馳走を用意させ民に振舞った
おかげで馬上槍試合が終わった後も城内城外共に賑やかだ
あの時ジュリアスに刺突をうけたウイジールだが
命に別状はなく
祝宴が始まる前にジュリアスはウイジールのいる医務室に足を運び
ベッドで横になるウイジールに対しジュリアス直々に頭を下げ
謝罪をした
王族が頭を下げるなど前代未聞の出来事であり
ジュリアスの行動は一目置かれた
ウイジールは当然ジュリアスの行動を尊重し
今大会唯一のしこりとなる事案も無事解消され
皆憂いなく祝宴を楽しんでいるわけだ
私はカイガンに受けた傷がまだ痛むが杖を借り
多少不自由ながらなんとか祝宴を楽しめている
周りに目をやると
一部大いに盛り上がっている席がある
カイガン等力自慢の騎手達が一つの席に集まり腕相撲大会をしている
現在カイガンが五人抜きで皆順番を待ちながらカイガンに挑んでいく
雄たけびをあげながら次々力自慢をなぎ倒していくカイガンは獣そのものだな
楽しそうだ
すると
奥で上品に談笑をしていたジュリアスが腕相撲大会の席に近づき
しれっと列に並びだした
その光景に皆喜びまた盛り上がっていた
前の列にいた者が順番をゆずりジュリアスとカイガンの腕相撲が始まる
結果は一瞬でカイガンがジュリアスをひっくり返し勝負が決まった
あまりの遠慮の無さにジュリアスは高笑いで喜ぶ
ハハハッ
誰かこの猛獣を止められる者はいないのか
なぁ?
ガンダール殿
皆あえて口にしていなかった事をジュリアスが口にした
注目が一気にガンダールに集まる
それを受けガンダールは黙したままだ
にぎやかな祝宴に少し緊張感が走る
だがアリュメト王がガンダールに命じた
やってやれガンダール
…
少し間が開いてからガンダールはこくりとうなずき
腕相撲大会の席にガンダールが足を運ぶ
また祝宴に火が灯る
みな声をあげられずにはいられない
三傑の一人剣獣ディス・ガンダールの腕相撲が見られるなど
奥にいたアルメンドロスも喜び前に出てくる
正直私もこれは近くで見たかったので杖で体を起こし
盛り上がる渦中に足を運ぶ
席に王者として鎮座するカイガンの前にガンダールが腰を落とした
それだけで歓声が上がる
歓声の中
カイガンの顔はいくさでも始めるかのように
真剣だ
対するガンダールは常に兜を被っているため
相変わらず顔色は伺えない
さぁ始まるかという所で
腕を立たせたのはガンダールの方からだった
カイガンはにやりと笑い
ガンダールの腕を力強く握りこむ
焚きつけた張本人であるジュリアスも近くでニヤニヤとしている
臨戦態勢となり
二人を囲む雰囲気がひりついた
そこに
アルメンドロスが無邪気に出てきた
そして二人の拳を上から握りこむ
では二人とも!
アリュメト王国の王子であるアルメンドロスが始まりの合図を告げよう!
よーーし
始め!!!!
アルメンドロスが始まりの合図を告げ
さっと二人から離れる
瞬間二人の腕に力が入り
二人を挟む机に亀裂が入り始める
私は自分の目を疑った
分厚い木製の机なのだが
あの二人は本当に人間なのだろうか
カイガンはこめかみに血管を浮かばせながら力んでいる
顔は真っ赤だ
ガンダールの顔は分からないが
まるで鉄のように制止している
あれは力を入れているんだろうか
力んでいる様子が全く見られない
すると少しづつ
カイガンの腕が下がってきた
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
大きな咆哮を上げカイガンが抵抗している
顔の血管は今にもはち切れそうに浮かび上がり
全ての血が逆流を起こしているのではないかというほど
カイガンの顔は紅潮している
机の亀裂もどんどん大きく入る
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
更に大きな咆哮をあげたカイガンだったが
机が真っ二つに裂かれる前にカイガンの手の甲が机についていた
勝負ありだ
ガンダール!ガンダール!ガンダール!
勝者を讃えその場にいた者がジョッキを掲げながらガンダールの名を叫んでいる
ガンダールは手を離した
負けたカイガンは机にうなだれたままピクリとも動かない
どうやら気絶してしまったようだ
その様子にみんな笑っていた
ジュリアスも壁にもたれながら笑っている
ガンダールは席を立ち
その場を離れようとした
待て!
次は私だ!
呼び止めたのはアルメンドロスだった
華奢な少年の挑戦にまた盛り上がりが再燃する
アルメンドロスの挑戦に応えるために
ガンダールは再度席に腰を下ろした
すぐさまアルメンドロスはガンダールの手を掴み
精一杯力を入れ始めた
王子!王子!王子!
周りの大人たちが茶化すようにアルメンドロスを応援し始める
アルメンドロスは先ほどのカイガン同様顔を真っ赤にし力を込めている
両手でガンダールの腕を倒そうとしているが当然動くはずもない
ガランサス!!!!
手をかせぇ!!!!!!
突然アルメンドロスが私の名を叫んだ
注目は私に集まり酔った大人たちが私を前へと担ぎ
あっという間にその席に座らせられた
よし!!
来い!!!!
アルメンドロスが私に呼びかけるので
私もアルメンドロスと共にガンダールの手を両手で握った
思いっきり力を入れたが全く動かない
ガランサス!!!!
力を入れているのか!!!!!????
はい!!!!!
二人がむしゃらに全体重をかけガンダールの腕を押そうとしているが
一ミリも動かない
フッ…
今少し笑いの漏れる声が聞こえた
私の耳が確かならガンダールから聞こえた
その時である
次第にガンダールの腕が下がり始めた
おおぉ!!!!???
いけるぞガランサス!!!!!!
アルメンドロスが最後の力を振り絞るように
呼びかけた
私も胸の傷が痛むことを忘れ最後の力を振り絞った
だんだんと
ガンダールの腕はさがり
ついにガンダールの腕は机についた
やっ・・・ッ!
はァ…
私とアルメンドロスは力尽き
同じように床に寝ころんだ
二人息を切らしながらヘトヘトだ
大人たちが皆笑いながら私たちを讃えている
同じように笑っていたジュリアスが私たちに近づき
横たわる我々二人の手を掲げた
よく頑張ったな
さぁ
この者らが今日より大陸一の力自慢であるぞ!!!!
讃えてくれた
そこにいる者達が拍手をする
当然この勝利はガンダールがわざと負けてくれたものである事は皆知っているが
優しく私達を讃えてくれている
それはアルメンドロスとて気付いている事だろう
段々と恥ずかしくなってきた私は
顔をアルメンドロスの方に向けると
アルメンドロスもまた同じような面持ちで私を見ている
私達は顔を見合わせ笑った
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