兄とハーレムと私

Kuruha

プロローグ

 シスコン、ブラコンという人種が存在する。


 弟妹、もしくは兄姉を愛し、敬う。

 ときに親愛を、ときに性愛を、血の繋がった家族に向けた一途な想いを持った彼ら彼女らは、その想いに身を焼かれている。


 特に身内に性愛を向けてしまった場合は最悪だ。だってそれは法律で禁止されているのだから。

 近親婚は許されない。

 裁かれることはないけれど、許可されることも、祝福されることもなく。


 ――――。


 いや? そんなことはどうでもいい。



 問題は、私――笹崎ささきなずなが笹崎飛高ささきひだかを愛してしまっているという点と、笹崎飛高が笹崎なずなを溺愛しているという点に尽きる。



 他のどんな家庭がどんな恋愛模様を展開していようと、そんなものはどうでもいい。

 なんなら、法律だってどうでもいい。


 “愛する”と“溺愛する”。たった一文字しか違いはないけれど、そこに込めた私の意識の違いはとても明確だ。


 “愛する”とはもちろん文字通りの愛。ラブ。私は笹崎飛高と結婚できる。

 できないけど。

 対して、“溺愛する”とは、どちらかというとライク的な意味を秘めている。多分、彼は私を大切に、それはもう目に入れても痛くないほど大切にしてくれているが、私をお嫁さんにはしれくれないだろう。


 表面上は、それはとても仲の良い兄妹関係。でも、2人の意識はあまりにも違いすぎている。

 それでもいいと思っていた。ずっと私のそばに彼がいてくれるなら。私を大切にしてくれるなら。


 でも――


「ひーくん、今度コスプレの併せがあるんだけどね? 主人公やってくれる人探してるの」

「あっ、それ『それ妹』でしょ? 今度オンリーイベントで同人出すんだけど、売り子手伝ってくれない?」

「文芸部の活動実績にもなるし」

「妹ちゃんはもちろんヒロイン役で! 可愛いから似合うよお?」


 ねっ! とウインクをひとつ。


 ――――。


 兄を追って、同じ部活に入ったら、そこはハーレムでした。

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