第46話 収録


 そして、収録日当日。凪坂46とTYO49のメンバーがズラリ。本番二分前、古谷がTYO49に激を飛ばす。


「いいか、必ず勝て! 全ての勝負に勝て! 勝てば官軍負ければ逆賊だぞ!」


「「「「「はい!」」」」」」


「お前らは勝つことを宿命づけられたアイドルたちだ! お前たちならできるって俺は信じてる!」


「「「「「「はい!」」」」」


「公式お兄ちゃんである俺の意志は、梨元プロデューサーの意志だ! スポンサーの意志だ! そこのところを重々承知するように」


「「「「「はい!」」」」


「……」


 どこぞの軍隊か!


 とは言え、本当に統率された体育会系アイドルたちだ。彼女たちはいわゆる地方の劇場型アイドルだ。バリバリの体育会系。それに、見たところガッツのありそうなメンバーを集めた感じがビンビン伝わってくる。


 しかし、伊達に俺たちもこの半年間惰眠を貪っていたわけじゃない。キチンとコミュニケーションをとって俺たちなりに互いの信頼感は得ているはずだ。


「なあ、お前たち!」


「「「「……」」」」


「忘れ物はないか? マイクつけたか?」


「「「「……」」」」


「いいか、挨拶はちゃんと声出して、モジモジしないように」


「「「「……」」」」


「なにかあったらなんでもいい、大きく声を出して『はい!』だぞ」


「「「「……」」」」


 ……あらためて比べると幼稚園児みたいな奴らだな。


 そして、誰も声を出さない。


「はい」


「おっ、オダママどうした?」


「あの……トイレ」


「私も」「私も」「あの……私も緊張してきちゃって」「じゃあ、私も」「ええっ……じゃあ、私も」「みんなが行くんだったら私も」


「き、貴様らっ……本番まであと1分だぞ! なんとか我慢できないのか? 絶対に絶対に我慢できないのか!?」


「「「「はい!」」」」


 ……こんな時だけ、いい返事、するんじゃねーよ。


「スタッフー! っスタッフさーんー!」


             ・・・


「結局10分遅れか……時間にルーズなアイドルってなどんなもんかね」


「す、すまん古谷」


 アイツら……コロス。


「じゃあ、本番入りまーす……3……2……1……」



「はい、今日も始まりました凪坂ってナギナギー。そして、いつも可愛いチャン凪たちだってばよ」


「「「「……」」」」


 そのダンマリに、圧倒的に勝ち誇った表情を浮かべながら古谷がいつもの台詞を吐く。


「そして、TYO49なんてナイナイー! 今日もプリウス的な可愛さを持つ豊田娘たちだ!」


「「「「イェー!」」」」


 な、なんでお前らにはコレができない……決して俺のチャラ男風ナルト口調がスベッた訳じゃないことは断固心の中で付け加えておく。


「本日は、な、な、なんと、南斗水鳥拳! ヒャーオ!」


「「「……」」」


            ・・・






















 俺のギャグで時が止まった。


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