第18話 収録(3)
「では、ここで家族の皆さんが決めた自己紹介キャッチフレーズを紹介したいと思いまーす!」
「「「ええっ!?」」」
反応は上々……思春期だもんな……思春期だもの、な。
「じゃあ、柿谷芽衣(うんばば娘)! お前の妹に、キャッチフレーズを考えてもらったぞ」
「ゲロゲロ」
「うん、てめえ、殴んぞ」
いつ時代のやつだ。お前はいったい、何者だ。
そして、その無理やりキャラ付けをやめろ。
「ええっと……妹さんがつけてくれたのはーー」
『笑顔の芽吹きは勇気の証。メイイッパイ頑張るアイドル柿谷芽衣です』
・・・
いいーーーーーーーーーーーーー!
「めっちゃいいよ! めっちゃ可愛いじゃん」
アイドルっぽいし、名前に掛けてて覚えやすいし。
「ええっ、いいですかこれ……」
「どう考えてもいいだろ!」
うんばば、うんばばしか言わないテメエの自己紹介を100回繰り返して猛省しろ。
「なんか……インパクトにかけるというか……」
「あればなんでもいいわけじゃないぞ!」
いや、お前の自己紹介は限りなくマイナスの方にインパクト満載ですけど!
「そうですかね……これで、私! ってなりますかね?」
「なるよ!」
むしろ、うんばばばばばの方が、てめえ頭おかしいのかってなるよ!
「ゲロゲロ」
「うん、てめえ、殴んぞ」
いい加減、キャラ、固めてこい。
「うーん……でも、一生の問題なんで、もう少しだけ考えてみます」
「そ、そうか……」
考える余地なんて、あるのか? そもそも、てめえは一生『うんばばばば』で通す気か? どんだけだよ。
「じゃあ、次は……能條(根野菜娘)。お母さんが、自己紹介フレーズを考えてきてくれていますーー」
『オー! ノー!冗談でしょう!? ちっちゃなエクボが魅力的、能條真尋です!』
いいーーーーーーーーーーーーーー!
「いいじゃないか! 最高だよ!」
やっぱり、ちゃんと名前と掛けてるし。お前のエクボがチャーミングなことを、ご両親、ちゃんとわかっていらっしゃる。
「お母さん……」
「情報によるとだな……この自己紹介フレーズを2週間必死に考えてーー「全然わかってない! お母さん、全然、私のことわかってない!」
!?
「の、能條……」
『根野菜大好き』なだけの自己分析よりは、よっぽど、わかっているだろうが。
「……お母さんって、いつもそうなんです。仕事仕事って言って、私のことなんて、いつも後回しで」
「の、能條……」
バラエティ番組のテンションじゃない。
「その自己紹介フレーズもそう。私をエクボとしか見ていない」
「の、能條……」
エクボとしか見てないって……間違いなくそんなことないと思うぞ。だいたい人間をエクボとしか見てないって、意味わかんないし。
「だから……私は、お母さんと口を聞かないって、決めてるんです。今後は、一人で生きていくんだって! 自分だけの力で、生きていくんだって!」
「の、能條……」
要するに、思春期……ってことで、いいんだよな?
「だから、私は、これからも『根野菜大好き能條真尋です!』を貫き通します! 一生、この自己紹介フレーズを変えるつもりはありません!」
キッパリ。
・・・
「「「……」」」
「……」
「……じゃあ、皆さん、また来週ーーーーー!」
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