髪が伸びる人形の話
立見
髪が伸びる人形の話
「大きくなったねぇ」
そう言って、お祖母ちゃんは顔をクシャクシャにして笑ってくれる。
だから、私の背丈はほんの少し大きくなった。
「髪も長くなったねぇ」
そう言って、お祖母ちゃんはしわしわの手で優しく私の頭を撫でてくれる。
だから、私の髪はゆっくりと伸びていった。
「かわいいねぇ、ふうちゃんは」
ふうちゃん。お祖母ちゃんがそう呼んでくれるから、私は「ふうちゃん」そっくりになっていく。
ふうちゃんは、ある日突然、学校から帰ってこなくなった。それ以来、お祖母ちゃんは私を「ふうちゃん」と呼ぶ。お母さんとお父さんは毎日泣き続けている。
私は、ふうちゃんが3歳のときから知っている。こんなに長く帰ってこないのは初めてだ。
昨日から部屋の隅に置かれた、黒い大きな箱。その中央に飾られた写真の中で、ふうちゃんは笑っている。
そんなところにいないで、早く帰ってきたらいいのに。
髪が伸びる人形の話 立見 @kdmtch
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