第10話
普段、あまり走ったりはしませんが、今日はそんな悠長なことは言ってられません。
出来るだけ早く、ファンキー喫茶へと向かいます。
「ぜぇっ、ぜぇっ…… ま、またんかいっ」
後方で、考古学者が何か言っていますが、無視しましょう。
喫茶店に到着し、扉をくぐるも、そこに森林さんの姿はありません。
「お客様、お煙草は吸われますか?」
「いや、今、人を探していまして……」
私は、焦る気持ちを抑え、2人の特徴を説明しました。
一人は高校生。
もう一人は、白髪に痩せた感じの外国人で、年齢は20代半ば。
「店長、その人って……」
ウェイトレスがカウンターでグラスを磨く、店長に声をかけます。
「ああ、今さっきまでいたよ。 高校生の方が、気分悪くなった、みたいにして慌てて出て行ったな」
気分が悪くなった……?
薬を盛られたのでしょうか。
一旦店を出るも、手掛かりはありません。
その時、ようやく考古学者が到着しました。
「はあっ、はあっ…… お前、陸上の強化選手やろ? で、見つかったか?」
「いえ…… 今さっき、この店を出た、とのことです」
芋洗さんが携帯にかけますが、コールしたまま応答がありません。
「だめだわ、携帯さ、でんわ」
「畜生、トーマスの野郎、どこ行きやがった!」
気付いたら、玲央さんまで着いてきています。
これだけ人数が多ければ、手分けして捜すことが出来るのでは?
そう思った矢先、考古学者が叫びました。
「こいつを使えばええ、未来の携帯、スマホや!」
考古学者が手にしているのは、金ピカの装飾が施された、手のひらサイズの長方形。
「もっかいこの携帯でめぐちゃんに電話すれば、電波を逆探知して、居場所を特定できんねん!」
そんなことが……
とにかく、今はなり振り構っている場合ではありません。
芋洗さんから森林さんの番号を聞き、再度、長方形の携帯でコールします。
「……出たで! かなり早いスピードで移動しとるわ。 車ちゃうかな」
画面には、地図が映し出され、黒い点の様な物が移動しています。
「タクシーっ!」
私は、咄嗟に右手を上げて、路上のタクシーを呼び止めました。
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