少し未来の管理人

@moga1212

第1話

2000年。


21世紀の幕開けと共に、小泉内閣が発足。


世間では、イチローが活躍し、シドニーオリンピックに沸き立っていた、そんな頃の話。














 自己紹介をしましょう。


私の名前は山猫。


年は今年で40になります。


サラリーマン生活を早々と切り上げた私は、独学で資格を揃え、知人のアパートの管理人をしております。


アパートの名前は「夢見会館」


家賃は三万五千円(管理費込み)で、こう申しては失礼かも知れませんが、部屋は狭く、その数も多くはありません。


築年数も経過しており、住んでいるのは、




101号室 学生 


102号室 ミュージシャン志望のフリーター


103号室 作家志望のフリーター


201号室 俳優志望の外国人 (フリーター)


202号室 考古学者(自称)


203号室 私




 といった顔ぶれになっております。


そんなある日、私が自室のベランダで洗濯物を干していた時、1人の男性が、警察と揉めている様子が目に入ってきました。




「ふざけんなっ、俺はここの時代の人間だっ!」




 警察官に取り押さえられ、手を後ろに回された男は、そんなセリフを吐き捨てました。


警察の方も、




「黙っていろ!」




 と言って、そのまま男を連行して行きました。


この時代の人間、とは、どういうことか?


バック・トゥ・ザ・〇ューチャーの見過ぎか? そんなことがよぎりましたが、争った後の地面に、ハンドバッグが落ちているのに気付きました。


恐らく、あの男の持ち物でしょう。




「全く…… 世話の焼ける」




 ふう、とため息をつくと、私は1階へと降りました。


警察と争っていた場所までやって来ると、私はハンドバッグを手に取ります。


ふと、この時代の人間じゃない、という、男のセリフが頭をよぎりました。




「……本当に、未来から来た、というのなら、持っている物も、未来のもののハズでしょう」




 イタズラ心に火が付いた私は、中身を改めました。


もちろん、確認するだけです。


中から出て来たものは、分厚い本と、四角い小さな機械。


イヤホンが付いています。


MDプレーヤーとは違うようですが……


本のタイトルは、「ハリーポーターと賢者の石」


知らないタイトルですが、裏の発行日を見れば……




「……2001年!?」




 今年はまだ2000年。


本当に彼は、未来の人間なのでしょうか?


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