赤と青の夢

南萠衣

#1 卒業発表

「おかしいよ…本当に…。」

「玲香…ごめん…。」



時は2時間前に戻る。私達女子校カルテットはmv撮影を終えてホテルに戻ってきた。

「あのさ。ちょっと話したいことがあるから、色々終わったら私と玲香の部屋来てくれる?」

「う、うん」

中田花奈と秋元真夏は2人顔を合わせて部屋に入っていった。

「話するって聞いてないんだけど…。」

「ごめん、玲香にも一緒に聞いて欲しい。」

「…わかった。」


私達2人に沈黙が続く。先に沈黙を破ったのは玲香だった。

「あのさ、話、先に私が聞いちゃダメなの?」

「…うん。みんなに一緒に聞いて欲しいから。」

「なんで?若、私が1番だって言ったよね?」

「…言った。そうだよ。玲香が1番。」

「じゃあなんで!?」

玲香の口調が段々怒りっぽくなってくる。

「…ごめん。」

「若…。」

「…。」

また沈黙になる。そんなこんなで花奈と真夏が入ってきた。カメラさんも。

「話って?」

切り出したのは花奈だった。

「…うん。実はね、私…。」

真夏が泣き出す。つられるように玲香と花奈も眉をへの字にさせた。

「乃木坂46を卒業する事にしました。」

その言葉で花奈は背を向け、玲香は俯いた。


そこからまた少し話をして花奈と真夏とカメラさんは戻って行った。


「若。さっきの返事。何で私が1番じゃなかったの。」

「もちろん玲香が1番だよ。…でも、卒業発表は今まで頑張って来た皆に同時に言いたくて…。」

「そんなの言い訳だよ…。確かにみんなとは一緒に頑張ってたよ。でも、やっぱり私に1番に言ってくれると思ってた。」

心が苦しくなる。1つ、また1つと玲香の頰を涙が伝う。

私は玲香にキスをしようと近付いた。すると今までで1番強い力で押し返された。

「やだ。そんなの。そんな誤魔化すキスなんていらない。」

「違うよ。今のは、ただ玲香が愛しくなって…。」

「また言い訳。もういいよ。今日は寝るから。何もしないで。」

「…お風呂は?玲香、ここのホテルのお風呂一緒に入るって楽しみにしてたじゃん。」

「もういいって。明日の朝3人で入ってくるから若1人で行きなよ。」

「…。」

「若、どうかしてるよ。おかしいよ…本当に…。」

「玲香…ごめん。」


私は言われた通り、タオルを持ってお風呂場へ向かった。

自然と涙が出てきていたが、そんなこともう気にならなかった。

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赤と青の夢 南萠衣 @Minami-moe

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