リストラ戦隊ナニヤッテンジャー!
ちびまるフォイ
敵は同時間帯にあり!!
「スーパー戦隊! 全員集合!」
レッドが号令をかけると5人全員が作戦本部に集まった。
「レッド、また怪獣か?」
「オイラ、まだカレー食べてる途中だったのに」
「つか、最近怪人多すぎっしょ。マジわろピ」
「ふえぇ……どうせ私は役立たずです……」
「いや怪人じゃないんだ、みんなよく聞いてくれ」
レッドは深刻な顔をした。
といっても全身タイツなので見えないが。
「この中から1人リストラしたいと思う」
「「 えっ!? 」」
「みんなも知っているように、俺たちスーパー戦隊の活動費は
おもに魚肉ソーセージや関連グッズの売上で成り立っている。
しかし、それも底をついてしまったんだ」
「レッド、本当なのか」
ブルーはこんな状況でもクールに受け答える。
「ああ、人件費もかかるし、これ以上戦隊を維持するには
誰か1人を削っていくしかないと」
なぜか全員の視線がイエローに注がれた。
「え、なんでオイラを見るんだ?」
「マジこいつしかいなくね?」
「クールに分析してもそうなるな」
「イエローさん……ごめんなさい……」
「なんでオイラなんだよ! それなりに活躍してるだろう!
役立たずっていうなら、グリーンだってそうじゃないか!」
「あうぅ……そうですよね、私なんかいつも怯えてばかりで……」
「あ、でもグリーンは写真集がものすごい売れてるのでOK」
「不公平だお!!」
イエローは必死に抵抗した。
「だいたい! オイラたちをリストラするほうがおかしい!
あの巨大ロボが燃費悪いから、なくせばいいじゃないか!
毎年、車検にどれくらいかかってると思ってるんだお!」
「えーー、でもあれ乗らなきゃ勝てなくね?」
「私、怪人を巨大化前に倒す自信ないです……」
「俺もあのロボットに乗るために戦隊やってるし」
「貴様ら……断じて許さん!! 戦隊ロボに呪いあれ!
いつか地獄の底に堕ちながらもこの戦隊イエローの怒りを思い出すがいい!!」
「ごめんやっぱりやめる」
「そうですね……イエローさんを外すと後が怖そうです……」
イエローの豹変ぶりに全員が後のストーカー気質を感じ取った。
「では、誰が良いのだ?」
「ブルーはないよね。毎回分析してくれてるし、マジ必須系男ピ」
「同感です……」
「レッドがいらないんじゃないかなぁ」
「え゛」
レッドの全身タイツが青ざめた。
「いやいやいや! おかしいだろ! ちびっこはレッドに憧れるだろ?
リーダー不在の戦隊なんて、いちごのないショートケーキだって!」
「ウチ、チョコケーキのが好きだし」
「思えば、いつもトラブルに巻き込まれているような……」
「ブルー! なんとか言ってくれよ! 俺たち、友達っていう設定だったろ!?」
「冷静に考えれば、別にお前にリーダーの資質は感じてないぞ」
「この冷血人間~~!!」
レッドはわんわんタイツの下で泣いた。
その肩にイエローはぽんと手を置いた。
「去 れ♪」
「このやろーー!」
レッドはイエローに掴みかかって鎖骨のあたりのタイツを割いた。
「あの、やっぱりよく無いと思います……」
普段主張をしないグリーンがそっと手を上げた。
「平等に決めないと、あとでやっぱりお互いにギスギスしそうで……」
「たしかにな」
「くじ引き! くじ引きをしよう!!」
レッドは地獄に垂らされた蜘蛛の糸にすがるように叫んだ。
炊飯器の中に入れっぱなしだったご飯をよけると、中にくじをいれた。
「みんな、この中にくじを入れた」
「当たったら恨みっこなしだかんねーー」
「私も……覚悟します……」
「オイラに当たりませんように」
「クールに去るだけだ」
全員がくじを引いてそっと開いた。
なにも書かれていない真っ白な紙を見て安心したと同時に、
誰がリストラされたのかとお互いの顔を見合わせた。
けれど、誰も絶望した顔をしていなかった。
「あれ……? ねぇ、いったい誰がリストラされたのよ?」
お互いの紙を出し比べると、すべてハズレくじになっていた。
「……すまない、やっぱり俺には誰かをリストラすることはできなかった」
「レッド……!」
「俺たちスーパー戦隊の活動費が尽きたとしても、
最後まで俺たちは5人で進んでいきたい」
「フッ、お前らしいな、レッド」
「甘口な結論だね」
「まー、ウチは別にいいかな」
「私も賛成です……みんなで節約していきましょう」
5人は円陣を組んで、お互いの絆を確かめた。
その後、同時間帯のライダーヒーローのもとに敵が現れた。
「俺たちの人気を横取り悪しき怪人め! 成敗する!
節約戦隊ホワイトダー! 見参!!」
「どれだ!? いったいどれが本体なんだ!?」
着色料を使わなくなった無色タイツをまといし5人は
ライダーを取り囲んでやっつけた。
リストラ戦隊ナニヤッテンジャー! ちびまるフォイ @firestorage
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