クリスマス・ボルボックス

沃懸濾過

眼点 - 魔物ボルボックス

 聖夜の空にボルボックスは廻る。


 くるくる、くるくる、左回りに。


 少しずつ現実を侵食しながら宙を泳ぐ。


 全長二十メートルを超える魔物ボルボックスの遊泳を止めることは誰にもできない。


 イルミネーションはボルボックスに取り込まれ、闇に包まれた街の中でボルボックスだけがきらびやかに輝いている。


 ツリーだったモミの木はボルボックスの葉緑体となった。クリスマスケーキや七面鳥ターキーはボルボックスが遊泳するための食事となった。音楽すらもが取り込まれ、ジングルベルが緑の球体から響いている。


 宙を泳ぐボルボックスは新たなサンタクロースのマネキンを見つけると、吸い寄せられるように近付いて取り込んだ。


 巨大な細胞の中で丸められた赤い服は、さながら充血した眼点のようだった。

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