2 真貴
「貴一、シャンプー取ってよ!」
真貴は声が大きい。風呂場の中からでも、台所にいて、ちょうど食器を洗いおえた貴一の耳に届くくらいだ。どこまでも世話が焼ける。
買い置きはなかった。そう告げると、
「あ、切らしてたの忘れてた。ちょっと貴一、あんたのシャンプーはあるじゃない。なんで姉さんのも一緒に買っとかないの」などと、言う。
「自分で補充するから俺には買うなって先月言っただろ。薬局のポイントカードでポイント貯めてるからって」
シャワーの音がやんだ。いきなり浴室の引き戸が開くと、全裸の真貴が、仁王立ちで現れた。
「とにかく急いで買ってきて! 何でもいいわよ、シャンプーだったら」
「買ってくる! 買ってくるから、戸を閉めろ!」
「わかったわよ」
真貴はガラガラと戸を閉めたが、思い出したように付け加える。
「ねえなんかジュースも買って来て。炭酸のやつ」
「はいはい」
陽気な女王様の下僕は脱衣所を後にし、財布と鍵をズボンの尻ポケットに突っ込んで、外に出る。
貴一はドアの前で、大きく夜風を吸い込んで長~い溜め息をついた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます