新・魔階島

辺銀 歩々

世界観などの説明

本編を読む上での世界観などの設定の説明でございます。

無駄に長いので読む際は適宜休憩し、眩暈、頭痛、脱水症状などにご注意ください。

内容は随時更新していく予定です。(最新平成31年 5月31日更新)


ここを読まないと作品の話が分からないというわけではありませんので、不要な方はさっと飛ばしてください。


また、何か気になる点不明な点がありましたらコメントいただけると助かります。


【あらすじ】


 この世界”ガイア”で唯一モンスターが生息する場所、ダンジョン。そんなダンジョンが唯一存在する魔階島には、今日も一獲千金を狙う数多くの挑戦者と呼ばれる者たちが集い、歌い、騒ぎ、ここでしかできないダンジョン生活を楽しんでいた。

 そんなある日、百万人に一人と噂される伝説の「勇者のスキル」を持つ少年がこの魔階島に降り立つ。魔階島に現存する12人目の勇者となる彼は、色々な期待を胸にダンジョンへと挑み始めるのであった。

 だがしかし、彼の思った以上にその挑戦は前途多難なものだった・・・。

 頼りにならない仲間たち。強すぎるモンスターたち。消えゆくお金たち。しかしそんな中、彼が偶然にも見出した彼なりの勇者の戦い方が彼の生き方を大きく変え、そしてこの世界の終末を大きく変えるのであった。


①世界観


 この世界の人間は生を授かってから15年目の誕生日を迎えるその日に、“スキルの女神アタ・エール”の祝福を受け、その身に特殊な力“スキル”を授かる。そして、その授かったスキルを基にこの世界の人間は自分に合った職に就くこと、すなわち「天授論」なる考えが通説になっている。例えば、「調理のスキル」なら料理人に、「造形のスキル」なら大工、「執筆のスキル」なら作家など。この世界の人間は、天から、神から与えられたスキルを中心に生きている。


 そのスキルの中でも、「戦闘のスキル」「魔法のスキル」「祝福のスキル」「隠密のスキル」「魔装のスキル」などを授かった者のほとんどは“挑戦者”という職に就くことが多い。この挑戦者の主な仕事は“魔階島”の“ダンジョン”に挑む、だたそれだけである。ダンジョンには人の命を狙う危険なモンスターは勿論のこと、ここでしか手に入らない珍しい素材や武器、財宝などが無限に湧いて出る。なので、そのお宝を手に入れて一獲千金を狙うためにも人々はこの魔階島へと旅立ち、そして挑戦者となるのだ。


 かつて、人間たちはモンスターの脅威に怯えながら生活していた過去を持つが、今となってはそんなモンスターと呼ばれる存在は魔階島のダンジョンの中にしか生息していない。だから、モンスターに対抗する力“スキル”を持ち、かつ“死ぬことのない”今の人間にとってモンスター退治というのは一種の楽しいイベント・娯楽のようなものに化していた。確かに、初代勇者“クロスフォード”のいた時代には“魔王”が君臨したとされるこの魔階島も、しかし魔王亡き今となっては地表の部分にはモンスターは生息しておらず、人の住める安全安心の島となった。それに今では大きな城とそれに連なる広大な城下町が作られ、そこでは多くの人々がモンスターの恐怖などは忘れ、日々楽しく豊かに暮らすことができている。そして、そこでは世界中から訪れる挑戦者相手に色々な商売も行われており、今となっては魔階島は毎日がお祭り騒ぎの愉快な島となっているのであった。


 そんな魔階島、またこの世界に住む人々であるが、彼らのほとんどには「天授論」という考えが定着している。この「天授論」とは、人の命は神より授かった命であるからして、神より授かるあらゆるものに従い、またそれに反する行動を取らないということである。神とは人間を超越した存在であるからして、その考えに従うことで自分の人生、果てはこの世界の秩序はより良いものへと変化すると人々は信じている。人々の成長と活躍を守護する神々の加護を受け、この世界の人々はその人生を謳歌しているのだ。


②歴史


 “創造の神ツ・クール”がこの世界の大地と海、大気、人間、動物そしてモンスターを作り上げたのがこの世界の始まり。これを世界創世の年として、翌年から創世歴元年と呼ばれるようになった。

 また、その時々を生きた人間たちが書き残したものから語られる歴史であり、ここで書かれたこと全てが決して真実というわけではない。


 創世歴159年、共に大地に繫栄を始めた人間とモンスターであったが、人間にはモンスターに抵抗する手段が乏しく、ユウダイナ大地のほとんどがモンスターに支配された絶望の大地となってしまった。そこで人間たちは自分たちが滅ばないようにと“創造の神ツ・クール”にモンスターと戦う力を願った。

 創世歴161年、人間の願いを受け“創造の神ツ・クール”は他の神々を創り出し、人間の中にモンスターと戦う力が宿った者が現れだした。同時に各地で特殊なスキルを持った人間が見つかり始める。

 創世歴369年、特殊な力であるスキルを身に着けた人間たちの活躍により、モンスターはユウダイナ大陸からほとんど消え失せた。しかし今度は、人間たちは考えや価値観の違いから人間同士で国を築き上げ、領地を奪い合って戦いを繰り広げるようになっており、ユウダイナ大陸を4つに分けて4つの国同士が争った。この時から既に「セイブ」、「ホッポウ」、「アズマ」、「ミンナミ」の四大国の形が出来上がっていたとされるが、正式な建国はそれぞれで多少異なる。

 創世歴666年、未だに人間は人間同士で争っていたが、突如ユウダイナ大陸の周りを覆う海の西側から一つの島が出現すると、そこから大量のモンスターが大陸へと雪崩れ込んだ。モンスターのことなど忘れかけていた人間は不意打ちによる総攻撃を受け、結果として西の大国「セイブ」は崩壊、一年の間でユウダイナ大陸の3分の1がモンスターに占領されてしまった。この年から俗に言う「魔王時代」の到来とされている。

 創世歴668年、人間は人間同士で争うことを止め、生き残った国同士で“三国同盟”を組んでモンスターたちに抵抗を始める。また、西の大国「セイブ」から逃げ延びた人たちの情報により、モンスターたちを統括する“魔王”と呼ばれる存在がいることが判明する。

 創世歴669年、三国同盟の必死の抵抗空しく、人間たちはユウダイナ大陸の約2分の1を失った。だがそんな中、「勇者のスキル」を持つという19歳の青年が単身で魔王軍の六魔将軍の一人を滅ぼし、その城を奪還したとの噂が広まり歴史上初めて“勇者”の存在が確認された。

 創世歴670年、三国同盟は全面的に勇者の青年を援護し、それにより勇者は9人の仲間たちと共に遂に魔王軍をユウダイナ大陸から押し返すと、魔王はモンスターが出現し始めた西の島へと逃げ込んだ。

 創世歴671年、魔王が逃げ込んだ島を調査した結果、勇者によってその島は“魔階島”と命名された。同時に、勇者一同はその魔階島にある魔王の逃げ込んだ“ダンジョン”の攻略を始める。

 創世歴674年、ダンジョンの奥へと消えた勇者とその仲間たちは、多くの犠牲を払いながらも魔王討伐に成功。その功績を称え、三国同盟から勇者には魔階島の地表に建てた大きな城を与えられ、勇者はそこで英雄王と呼ばれるようになった。また、魔王が討たれたことにより短いようで長かった忌まわしき魔王時代は終了を迎えたのであった。

 創世歴675年、英雄王はともに魔王と戦い続け、かつ九英雄の内唯一の生き残りでもある1人の女性と結婚。その後も魔階島に建てられた城で幸せな家庭を築いた。

 創世歴730年、人類の多くを救った英雄王は家族と魔階島の多くの民に見守られながらこの世を去る。その後、英雄王の息子が王を引き継ぎ、この年から長年封鎖されていた魔階島のダンジョンが解放され始め、“挑戦者”と呼ばれる存在が徐々に増え始めた。

 創世歴857年、現在、ユウダイナ大陸における国同士の争いは無くなり至って平和であり、多くの人々が色々な夢を胸に“魔階島”へと訪れている。


③世界情勢


〇ホッポウ

 ユウダイナ大陸の西側と北側の大部分を支配する大国。土地は平地が多く資源や土壌も豊かで、この地で暮らす多くの国民が平均的に豊かな暮らしをしている。気候は季節によって大きな変化はないが、北部や高所となると寒さが厳しい地域もある。また、政治は貴族制により行われており、政治に参加できる貴族たちのことを「十二宗家」と呼び、その貴族たちを筆頭にしてそれぞれが複数の貴族を従えている。統治する地域に関しては、国を12に分けてそれぞれを「十二宗家」の一つ一つの家が管理しているので、それぞれの地域によって特色が異なる。だが、魔王時代以降目立った戦乱もなく、また魔階島の存在により「十二宗家」のそれぞれ下に付くいくつかの貴族の中には衰退する家もある模様。それにより、「十二宗家」の中には現状の国の有様に不満を抱く家もあるが、中でも一番に有力かつ身内から勇者も出している「レイト家」が中心に他の家々を宥めているおかげで過激なことにまではなっていない。また、とある理由から魔王時代に滅んだ「セイブ」の人々やそこでの技術のほとんどをこの国が吸収した。


〇ミンナミ

 ユウダイナ大陸の西側の少しと南側の大部分を支配する大国。土地は沼地や森林、乾燥地帯、火山地帯など様々で、場所によって貧富の差が激しい。気候も場所によって大きな差があり、暑い地帯から寒い地帯まで様々で中には人が生活できないような場所もある。また、魔術師協会の長である「老星」と聖導会の長である「法王」をトップに置く二大派閥により政治を行っている。“天授論”に従えば、魔法も奇法も神から授かったものであり、なので両者は対立することなく調和している。ただ、国民性としてエリート思考が強く、優れた魔法・奇法を使える者はもてはやされ、逆にそうでない者は下に見られがち。なので、他国に対してもそのような姿勢で外交をしてしまうためにしばしば煙たがられてきた歴史を持つ。だが、魔王時代においては、その優れた者たちが多く活躍を残したことからも、やはり優れた者たちが国や人を統治するのは良いことだという風潮は現在も崩れていない。ただ、その考えの所為で国中に幾つもの小集団が乱立してしまい、この国の中枢を担う魔術師協会や聖導会に賛同する者たちも多いが、逆に自分たちの方が優れていると反発する者たちもいる次第。


〇アズマ

 ユウダイナ大陸の東側の大部分を支配する大国。土地は山岳地帯が多く、土壌はあまり農業には適しておらず野生動物が多いので狩猟生活がほとんどである。気候は季節による差が激しく、一年を通して言えば暑いと寒いしかない。また、「天王」という一人の長を皆で支える君主制の国家であり、その「天王」は人を超えた存在であるともいう。他の二つの国と比べると国の規模は小さく、また国のほとんどが険しい山や谷ばかりであまり人が生活するのには向いていない。だが、そんな国であっても国家間の人と人との争いを生き抜き、魔王時代も生き抜いた理由としては“ヤマト”という不可思議な領域が挙げられる。そこに住む者たちは滅多にその外へと出ることはないが、「天王」のためならばどんな過酷な戦場にも立ち、しかも一人一人がかなりの手練れでもあるという。かつて、人間同士で争っていた頃はそんな彼らを率いる長10名は「十天将」と呼ばれ、他国の兵士からは恐れられていた。また、この国の険しい土地は自然な要塞にもなっており、そこでの生活になれない者たちが国外から侵入したとしても、そこに慣れたアズマの人々には到底敵わない。なので、決して他国に攻めることなく、だが今ある国土だけを必ず守り抜くという形でアズマは現在まで存続してきた。


〇魔階島

 魔王時代の到来に合わせてユウダイナ大陸の西側、元々は「セイブ」の領海だった場所に現れた巨大な島。現在は三国のどれにも属さない永久中立国家でもあり、島を統治する国王は初代勇者クロスフォードの血筋を継ぐアルバーン家が務めることとなっている。土地も気候も平穏で人が暮らしていくには苦労はない。そんな魔階島の特徴は、何と言ってもその島の中央に咲き誇る巨大な木、魔樹である。しかも、その魔樹はダンジョンと同じくらいにこの島に暮らす人々へ資源をもたらしてくれている。中でも、魔階島で使われる生活用水や農業用水などの水資源はこの島の地下を蔓延る魔樹の根から得られる。場所によって、その水は冷水ではなく温水でありそのまま温泉のような使い方もでき、しかも温泉に似て様々な効能もあるという。また、この島に訪れる挑戦者のほとんどは宿暮らしをしており、家や拠点を構える挑戦者はごく一部の腕の立つ者たちだけである。とはいえ、人の流動が多い魔階島では宿暮らしは珍しくない上に、宿などの施設は多くその料金もあまり高くはない。ちなみに、家や拠点を構えて暮らす挑戦者たちを「ファミリィエ」と呼ぶ。

 そんな魔階島であるが、治安はあまり良いとも言えない状況である。一番の問題は人の流動性であり、ダンジョンに挑む挑戦者を中心に多くの人々が世界中からこの国へと来ては出て行くことが日常茶飯事となっている。なので、人が増えればその価値観や文化も混ざり、時に衝突することでいざこざが生じてしまう。しかも、ダンジョンから発掘される金銀財宝は良からぬ者たちを引き付けるので、ユウダイナ大陸で悪名高い秘密結社の一部がこの島に入り込んでいるという噂もある。そのため魔階島の王宮は王国騎士団とギルド(主に、ガーディアンズ)を設け、魔階島全体の治安維持に努めている。

 また、魔階島は国としての歴史は浅く、しかもユウダイナ大陸の三国から承認された形で独立国として成り立っているので、国家間の立場としてはかなり弱い。なので、ダンジョンで得た物資などを三国へと定期的に進呈することになっているが、その量は膨大であるにも関わらず強く文句・苦情を言えない立場である。


〇三国同盟

 かつて、魔王時代にユウダイナ大陸を支配していた「ホッポウ」、「ミンナミ」、「アズマ」の三国の代表が魔王軍と対抗するために結んだ平和条約。これにより、長きに亘った人間同士の争いは終わり、人間とモンスターの対立が再び始まった。条約の内容は簡単に説明すれば「他国への侵略目的の侵入の禁止」、「緊急時の他国への物資補給」、「派遣部隊の編制並びにその保護」である。この条約は魔王亡き今でも継続されており、三国間を“縛る”枷でもあり、一方で“守る”盾にもなっている。つまり、一つの国が自己利益のために条約破棄または他国を攻撃した場合、自ずと他二か国と戦う形になってしまう。そうなれば、国力がほとんど均衡している今現在、どの国であったとしても勝ち目はないに等しく、この同盟を続ける他ない。また、魔階島を制圧した際に魔階島もある意味では初代勇者の血を引くアルバーン家の支配する国になったので、魔階島も自ずとこの三国同盟に加盟している。そのおかげで、常に豊かな魔階島からは条約に則って他の三国に定期的に物資が贈られることになっているので、その魔階島をも敵に回すとなればこの物資の供給を断つ行為であり、よって条約を破棄することは確実に自国を亡ぼすことに等しくなる。

 なので、この三国同盟はそれぞれの国の平和維持を手助けする“盾”になるのと同時に、国の領土拡大を妨げる“枷”にもなっているということになる。


〇セイブ

 説は色々とあるが、創世歴666年に滅んだとされるユウダイナ大陸の西側にあった大国。歴代のセイブ皇帝たちが国を支配してきた君主制であり、その皇帝たちは世襲制で選ばれていた。国の各地に大きな城を築き、皇帝の下に付く将軍たちはそこを中心に生活しその地域の防衛・侵略を担っていた。土地には鉱山などの資源も多く、また国中には勉学や研究する機関も多かった。国柄として決して神々を冒涜していたわけではなかったが、他国に比べると神々に対する信仰心が薄く、「天授論」に反するとされた魔科学を戦争のために国の規模で利用、研究していた。その所為で他国との関係、特にミンナミとは劣悪であったが、しかし魔科学による戦力増強は無視できず、尖ったスキルを持つ兵士はいなくとも平均的に兵士全体が強くなったおかげで他国を圧倒できた。

 だが、その魔科学の研究が成熟しないうちに、その技術と共に国は魔王率いる魔王軍に滅ぼされてしまった。しかし、これほどまでに成長した大きな国がモンスターたちにほとんど成す術なく滅ぼされたことには未だに多くの疑問が残っており、その理由や原因を調査する者たちもいるが詳しいことは謎のままであり、その真相は神のみぞ知ることとなった。


④用語


〇世界名:ガイア。神が示した神聖なる言葉。


〇“創造の神ツ・クール”:白い髭の生えた筋骨隆々に描かれることの多い神様だが、人の前にはその姿を現さない。この世界や人間、モンスター、他の神々等を創り出した張本人。人の思いを聞き、星を活かすために人々に力を与えると言われている。


〇“スキルの女神アタ・エール”:人間に戦う力「スキル」を生み出した張本人。15歳の誕生日を迎える前の日の夢に現れるという。神々しい女神とも優し気な表情の女神とも、その姿を詳しくは思い出せないが、ただ彼女は夢の中で人に問いその答えを基にしてその人に合ったスキルを授けると言われている。


〇“破壊の女神コ・ワース”:何か悪いことや良くないことがあると、大体この神の所為にされる。神々の中でもモンスターに肩入れしているという迷信がある。なので、人間の前にその姿を現すことはないが、彼女の息子・娘たちに「ワースの子供たち」という四匹の獣がいるらしく、彼らはかつて人間と戦いスキルを持った人間たちに封印されたという御伽話があるが実際はただの噂に過ぎず確証はない。


〇“レベルの女神ツヨ・クナール”:この世界に住む人間のレベルを上げてくれるありがたい女神。神殿に行ってお金を払えば降臨するという意外に身近な女神でもある。自分が経験したものに応じてレベルを上げてくれる。双子の姉に“生命の女神”がいる珍しい双子の女神。


〇“生命の女神イキ・カエール”:この世界に住む人間の命を生き返らせてくれるありがたい女神。莫大な額を要求される上に生き返るだけで若返りはしないので寿命による死で生き返ると痛い目をみる。双子の妹に”レベルの女神”がいる珍しい双子の女神様。


〇“契約の女神ナカ・ヨーク”:見た目は眼鏡を掛けた知的な女神だが、他の神々と比べて掌サイズで現れることが多い。この女神の前で契約を交わすとお互いに様々なものを共有することができる。婚姻の儀式などでもよく召喚される女神であるが、ダンジョンの攻略を目指す挑戦者たちにとっても重宝されている女神でもある。この女神の前で契約やゲッシュなどを行えばお互いに様々な恩恵を得る。だが、契約破棄をする際に料金が発生するので要注意。


〇“転送の女神ドコデ・モイケール”:その女神の祝福を受けた水晶『転送石』を所有する者は、それに対応する水晶がある場所まで瞬時に行くことができる。世界の各地には巨大な『転送石』が設置されており、大まかな移動ならそれらを利用する方が楽。ただし、どちらかが壊されたり、自身が行った経験のない場所には転送できない。また、『転送石』は相互に反応するだけなので一つの『転送石』でどこにでも行けるわけではなく、そして一つ一つがお高い。だが挑戦者にとってはダンジョンからすぐに外に出ることができる『転送石』は必需品である。『転送石』自体は各地に点在するモイケール教の神殿にて購入でき、破損した『転送石』などもここで修復できる。ちなみに、『転送石』は全て女神のお手製…らしい。


〇宗教:この世界に生きる人々がそれぞれに信仰するもの。全部で6種あり、どれを信仰するのも自由で特に宗教関での大きな反発や争いはない。また、それぞれの信仰ごとに神に願うものが異なる。唯一、国の方針までに宗教が関係しているのはカエール教と聖導会だけであり、他の宗教は各地に住む人々がそれぞれのスキルや仕事に合わせて信仰している程度。

①クール教(建築、繁栄、太陽)、②エール教(勝利、成功、月)、③クナール教(力、成長、鍛錬)、④カエール教(生命、復活、農耕)、⑤ヨーク教(契約、平和、商売)、⑥モイケール教(旅行、移動、貿易)


〇天授論:天授論とは、神から授かったもの、つまり命やスキル、レベル、契約、転送などに感謝し、そこに神の意思があると信じてそれに従う考えを持つことである。また、そこから派生した似た考えに「右手には神が宿る」とも言われている。それはステータスを確認するのに右手のクリスタルを扱うことや、契約の証は右手の甲に出ることなどから、それは人々が神々と右手で繋がっているからだと考える者が多く、それ故に天授論と合わせて語られることが多い。


〇暦:創世歴161年に神々から「スキル」や「復活の奇跡」と共に人々に教授されたものであり、この考えを基に当時の暦学者や占星術師、聖職者などが集まって作られたのが「暦」である。地上の人間たちを照らす太陽の周期と夜を照らす月や星々を神々の化身と見立てて、「創世歴」という考えと「時間」、「日にち」、「年数」などを考えだした。これにより「スキル」を授かる歳が15歳の時だと判明し、その日は“二度目の誕生日”として子どもが独り立ちできる歳だと考え、またその特別性からも家族だけでなく周りの人も一緒になってその子の15歳の誕生日を盛大に祝う風習になっている地域が多い。ちなみに、一般的には「クール暦」と呼ばれ、1年を12か月、365日と考えた。ちなみに、一ノ月は「山羊月」、二ノ月は「瓶月」、三ノ月は「魚月」、四ノ月は「白羊月」、五ノ月は「牛月」、六ノ月は「双児月」、七ノ月は「蟹月」、八ノ月は「獅子月」、九ノ月は「処女月」、十ノ月は「天秤月」、十一ノ月は「蝎月」、十二ノ月は「馬月」とそれぞれ異名を持つが名前の由来はよく分かっておらず、世界各地に点在する遺跡ルーインにその証拠となる壁画がある。


〇ユウダイナ大陸:この世界に存在する唯一の巨大な大陸でその周りをぐるりと大海が包んでいる。かつて人間同士が争っていた頃は「ホッポウ」「アズマ」「ミンナミ」「セイブ」の四つの国に分かれていたが、「セイブ」が魔王に滅ぼされたことにより現存する国々は「ホッポウ」「アズマ」「ミンナミ」の三国のみ。また、魔王討伐の際に交わされた三国同盟が継続しているのでどの国も今は戦争状態にはない。ただ、どの国も無限の富をもたらす魔階島を警戒している。


〇ホッポウ:ユウダイナ大陸の北に位置する大国、首都の名は“パッチワークス”。「十二宗家」と呼ばれる貴族たちが支配する国であり、かつての人間同士の大戦時にも「セイブ」に劣らない勢力を持っていた。現在は、魔王時代以降に元々「セイブ」だった領地と技術の多くを吸収し、三国の中では一番に大きく強い国になった。


〇十二宗家:「ホッポウ」の実権を握る十二人の貴族たちの総称。始まりは人間同士の戦争時に活躍した貴族からなる。「レイト家」「クリーム家」「シロップ家」「メル家」「ガトー家」「ブラン家」「ラッカー家」「カスタード家」「モナカ家」「ナッツ家」「マフィン家」「ロン家」の十二家。それぞれの家がそれぞれの特徴活かして成長し、戦闘に長けるものや生産、貿易に長けるものなど様々であるが、皆が平等に政治的な権力を持つ。

 十二家毎の得意な分野は「レイト家」:軍事・防衛業、「クリーム家」:栽培業、「シロップ家」:魔法業、「メル家」:奇法業、「ガトー家」:鉄鋼業、「ブラン家」:製糸業、「ラッカー家」:漁業、「カスタード家」:運輸業、「モナカ家」:林業、「ナッツ家」:農業、「マフィン家」:軍事・制圧業、「ロン家」:学習支援業。


〇アズマ:ユウダイナ大陸の東に位置する大国、首都の名は“キョウ”。この国を統治する最大権力者は“天王”と呼ばれるただ一人のみ。領土の大きさやそこに住む人口の数は他の国々と比べて若干劣るが、「アズマ」のとある地域「ヤマト」に住む武族たち「十天将」が強力であったがために迎撃戦においては負け知らずで、かつての大戦を生き延びることができた。その武族たちは「侍」とも呼ばれ、曰く皆が鬼の様に強いらしい。また、魔王時代ではあまり目立った活躍はしなかったので、その前後で比べて国は大きく成長してはいない。


〇ヤマト:「アズマ」に存在する不可侵かつ神聖な領域。そこには腕の立つ一族たちが細々と住んでいるというが、積極的に外界と交流を持たないためにそこの多くが謎に包まれている。ちなみに、アズマを統括する天王はこの場所に住む「十天将」の内のとある名家の中から選ばれる。


〇十天将:ヤマトに住む十の武家の頭領たち10人の総称。彼らはアズマと天王を守ることを宿命とし、そのために無類の強さを発揮する。その強さの秘訣は判明していないが、十天将たちにはスキルを超える不思議な力があるという。魔王時代の前まではその力で他国の侵略から自国を守り抜いていたが、その後人間同士の戦いが無くなると彼らの役目はほとんどなくなった。しかし、そのことにより安堵した武家もあったが、逆に反発する武家もいた。そして、そんな彼らは保守派と改革派に分かれヤマト全体を巻き込む戦乱になりかけたが、一人の青年が保守派の数人を率いて改革派の指導者を斬り捨てたことにより戦乱は起こらず、結局今もなお彼らは「アズマ」の奥地にてひっそりと暮らしている。


〇ミンナミ:ユウダイナ大陸の南に位置する大国、首都の名は“マギカロンド”。魔法と奇法の発祥の地でもあり、その両方の本部がこの国に存在する。かつての人間同士の戦いにおいては魔法と奇法の研究が進むにつれてその勢いを増していき、魔王時代の戦いにおいては多くの犠牲を払ったが国別で見れば魔王軍に一番影響を及ぼしたとされている。現在は、「ホッポウ」に次いで二番目の大国となり、また魔階島のダンジョンのおかげで順調に魔法の研究と奇法の修練は進んでいるので国力も確実に蓄え始めている。だが、魔術師協会と聖導会が中心となって国中の魔法や奇法の探求を管理しようとしているが、それなりに力を蓄えてしまった中組織たちといがみ合う結果になっている始末で国全体の調整が上手く取れていない。


〇セイブ:かつては他の国々に劣らぬほどに繁栄した大国であり、中でも魔科学と呼ばれる技術を推奨しその研究が盛んに行われていた。首都の名は“シエンス”であったが、今は存在しない。突如国の西側から現れた魔王によって国は滅ぼされてしまい、今ではその土地はホッポウとミンナミに吸収され、生き残った人々は各地へと散らばり、残された魔科学の技術は消失したと言われている。また、初代勇者クロスフォードの生まれ育った村“リスタート”がこの国にはあった。


〇魔術師協会:本部をミンナミに構える、魔法系のスキルを授かった者たちが集い勉学する場所。魔法を研究する由緒正しい場であり、数多くの生徒がここに通い日夜研究を行っている。魔法を研究する機関はミンナミに数多く存在しているが、やはりこの魔術師協会が最大の人気を誇る。ちなみに、魔術師協会のトップは「老星」と呼ばれ、その彼と聖導会の「法王」とでミンナミの政治的な顔になっている。そんな魔術師協会とそのトップの「老星」を守護するのは「ラグナ・ロック」と呼ばれる魔術師協会の誇る6人の魔法使いたちである。また、魔階島にもその支部が存在しており、こちらでは「魔術の勇者」を始めとする彼のパートナーたちがそこで講師を行っている。

 この魔術師協会は古い歴史を持ちこの世界においてはじめて魔法を研究し始めた組織としても有名であり、その歴史は創世歴200年代から始まったとも言われている。当時、魔術師協会の基礎を作り出したのはルインと呼ばれる女性とパニッシュと呼ばれる男性の2人の魔法使いらしく、その功績を称えて魔術師協会の本部には2人の像が建てられ、その像は今日も日夜研究する魔法使いたちを静かに見守っている。


〇聖導会:本部をミンナミに構える、奇法系のスキルを授かった者が集い教えを乞う場所。奇法を身に着ける由緒正しい場であり、多くの生徒がここに通い教えを乞うている。奇法を学ぶ場所は主にここしか存在していないが、各地に点在する5人の師範マスターの弟子になって直接奇法を学ぶこともできる。この聖導会のトップは「法王」と称される男であり、その下に師範たちがいる。また、聖導会は各地に点在するカエール教の神殿の本部であり、それらを管理する女教皇は現在「奇跡の勇者」にして師範でもあるアルカロが担っている。また、聖導会に属する者は基本的には戦いを行わないが、そんな彼らを守り、そこに仕える者たちの代わりに戦うのが「聖剣隊」と呼ばれる者たちである。


〇復活:この世界に生きる人々皆平等に与えられた神の奇跡。“生命の女神イキ・カエール”の祝福によって全ての人は死から生き返ることができる。死んだ際、人の体は光となって消え去りそこに死体は残らない。その後、肉体は最寄りのカエール教の神殿で復活を果たす。ただし、それには条件があり、復活においては相応のお金が必要になる。厳密に幾らという決まりがあるわけではないが、ユウダイナ大陸で普通に生活している人であれば一生の中で数回は復活できる額だと言える。また、魔階島のダンジョン中で死ぬとお金だけでなくそこで得た素材や武器防具なども徴収されてしまう。ちなみに、この復活の奇跡は元々は人生において一回だけであったが、魔王と魔階島の登場により費用は掛かるが事実上無限となった。あと、寿命などによる死で復活が叶わない場合は“消滅”と言われ、カエール教によると肉体を捨てた人はその後神の下で幸せに暮らすという。

 復活の際の手順としては、“生き返りの間”と呼ばれる死後の不思議な空間で“生命の女神イキ・カエール”と簡単なやり取りをするだけで至って簡単かつ単純である。だが、勇者の場合はそうでもないらしく、ほとんどの勇者は“生き返りの間”にて女神と雑談できるらしいが、その理由や利点は分からない。唯一死なずに“生命の女神イキ・カエール”と交信できるのは「奇跡の勇者」であるアルカロだけであり、その生死がわからなくなった者であっても彼女なら“生命の女神イキ・カエール”に直接尋ねることができる。


〇貨幣:現在、この世界の貨幣は金貨、銀貨、銅貨の3種類で、金貨一枚が銀貨五枚に相当し、銀貨一枚が銅貨五枚に相当する。


〇レベル:レベルとは神々が数字を用いてその人の偉大さを目に見えて現したものだという。人は生きる上で様々な経験を積むことでこのレベルを上げることができる。レベルが1上がるごとに各種ステータスが上昇したり、スキルに応じた技を獲得したりする。また、ステータスの上り幅や、レベルの上限に関しては人それぞれ。ちなみにレベルを上げるには、当然のごとくお金が必要である。


〇経験値:レベルを上げるために必要な様々な経験の総称。この経験値を多く得るためには自分が今までに経験したことないことを経験することが重要である。中でも、命を懸けた戦いは多くの経験を生むとされ、日々新鮮かつ緊張感のある戦いの出来るという点において、魔階島のダンジョンは経験値稼ぎには非常に有効だと言える。だが、自分よりも弱いモンスターの戦闘や単調な戦闘となると経験値としては低く、レベルが上がるにつれてやはりそれなりの戦いに挑まない限り経験値は高くならない。


〇スキル:“女神アタ・エール”から授かる特殊な能力の総称。人によって授かる能力は様々で、「調理のスキル」、「造形のスキル」、「執筆のスキル」、「商売のスキル」、「隠密のスキル」、「祝福のスキル」、「魔法のスキル」、「戦闘のスキル」など多種多様である。同じスキル持ちでもそれぞれの能力や成長速度が違うので、大抵の人は自分にとって伸びがいい能力を伸ばすことが多い。また、スキル自体は自分の右手の紋章から確認できるが、承諾さえすれば他人にも見せることが可能で、就職の際にはとても便利。

 また、スキルは“女神アタ・エール”からその人が15歳の誕生日を迎える前の日の夢の中で授かるものだが、その基準に関しては未だに判明しておらず、ほぼ運任せである。ただ、家系として授かるスキルに偏りがあるらしく両親、もしくは祖父母と同じスキルを授かることが多い。しかし、その例外として「勇者のスキル」が存在し、このスキルだけはいつどこで誰が授かるかは分からない。

→戦闘特化型

「戦闘のスキル」:戦士や剣士など。物理攻撃と物理防御の要。パーティの物理攻撃役と盾役でもあり、戦闘によるダメージを軽減しダンジョン攻略を補助する。ステータスの中では筋力・体力が高く、荷物がたくさん持てる。

「魔法のスキル」:魔法使いや魔女など。魔法攻撃の要。パーティの魔法攻撃役であり、戦闘において属性を使用し、相手の弱点をつくことで戦闘を有利にする。ステータスの中では俊敏力・魔力が高く、荷物があまり持てない。

「祝福のスキル」:僧侶や聖職者など。回復と補助の要。パーティの回復・補助役であり、奇法により戦闘によるダメージを回復させ、またダンジョンの「瘴気」による影響を無効化する。ステータスの中では忍耐力・魔力が高く、荷物があまり持てない。

「隠密のスキル」:盗賊や狩人など。遠距離攻撃と索敵の要。パーティの遠距離攻撃役であり、ダンジョン移動中や戦闘における危険をいち早く感知して無用な戦闘を避けることができる。ステータスとしては忍耐力・俊敏力が高く、荷物があまり持てない。

「魔装のスキル」:魔装師や魔導師など。付加魔法攻撃と補助の要。パーティに属性を付与させることができる上に、それには持続力がある。また、特定のモンスターに対しても攻撃や防御の面で優位に立てる。ステータスの中では筋力・魔力が高く、荷物がそれなりに持てる。

→生活特化型

「調理のスキル」:料理人や錬金術師など。回復と補助の要。ダンジョン内の素材を使って持続力のある回復・補助を行える。倒したモンスターの素材などの回収も得意。ステータスの中では忍耐力が高く、荷物がそれなりに持てる。

「造形のスキル」:機工士や鍛冶師など。物理攻撃と補助の要。ダンジョン内でも武器防具などの補填ができ、鉱物などの回収も得意。ステータスの中では筋力が高く、荷物がたくさん持てる。

「商売のスキル」:商売人やギャンブラー?など。物理攻撃と回復、補助の要。パーティの補助役であり道具によってパーティを支え、他にも武器防具で強化すれば尖ったところはないがほどほどに戦えるオールラウンダーでもある。また、物を見抜く力があるので交渉に優れ道具を安く買ったり、逆に高く売りつけたりできる。あと他のスキルに比べて幸運になるらしい?ステータスの中では筋力が高く、荷物がたくさん持てる。

「執事のスキル」:メイドや使用人など。補助の要。手先が器用で、掃除、洗濯、料理、家事全般が得意。ダンジョンで快適に探索ができ、ダンジョン攻略の持久力を上げる。ステータスの中では俊敏力が高く、荷物がそれなりに持てる。

「執筆のスキル」:作家や研究者など。基本的にはダンジョン内ではおそらく何の役にも立たない。文字を高速で書いたり、現物とそっくりな絵を書いたりできる。でもそれだけ。ステータスの中では魔力が高く、荷物があまり持てない。


〇ステータス:“レベルの女神ツヨ・クナール”から与えられた祝福で、筋力や忍耐力、俊敏力、体力、魔力などを表す。このステータスに応じてその人の持つ肉体に補正が掛かる。だが、肉体に補正がかかるだけで、基礎的な体作りや勉学ができていないと効力を発揮しないので注意が必要。例えば、Lv.100の赤ん坊ではLv.1の大人を倒すことはできないということ。また、その補正も人によって差があり、同じスキルで同じレベルであったとしても同じ程度の強さであるとは限らない。


〇技:レベルを上げることでスキルに応じて身につくものの総称。人知を超えた結果をもたらすことができ、中でも「隠密のスキル」、「祝福のスキル」、「魔法のスキル」、「戦闘のスキル」、「魔装のスキル」などの場合は人だけでなくモンスターとの戦闘に有効なものも多い。技は、魔法や奇法、剣技、武技などなど呼び名は様々であり、全てに共通してマナを消費する。技のマナ消費量はそのスキルによって大きく異なるが、やはり「魔法のスキル」や「奇法のスキル」、「魔装のスキル」のマナ消費量は他に比べて多いと言える。また、技に属性が付くものは「魔法のスキル」と「魔装のスキル」のみであり、他のスキルは属性武器などがないと属性攻撃はできない。


〇属性:自然界に存在する全て現象の根源であり、それらは人類の歴史の中で「魔法のスキル」を持つ者たちを中心に探究されてきた。「四大元素」と呼ばれる属性は火、風、土、水の4種、「ニ外元素」と呼ばれる属性は光、闇の2種で計6種類の属性がこの世界にはあるとされている。「四大元素」はそれぞれが力関係にあり「火→風→土→水→火・・・」という強弱関係にある。また、「四大元素」はそこからさらに細分化されると言われ、「煙、雷、木、鉄、氷」などの属性は「四大元素」の細分化によって生まれた。一方で、「ニ外元素」である光と闇は両者だけで力関係にあり、どちらも強くどちらも弱い。ただ、「ニ外元素」は「四大元素」との調和性が高く、光と闇は火、風、土、水のどれと掛け合わせてもその力を奪うことない。なので、魔法を使う時に「四大元素」に「ニ外元素」を合わせた際は、光が中心の場合は「白魔術」、反対に闇が中心の場合は「黒魔術」と呼ばれる。だが、「白魔術」も「黒魔術」も高度な魔法であるのでその習得は難しく才のある者にしか使えない。


〇魔法:「魔法のスキル」や「勇者のスキル」などを持つ者が使える技。扱える属性は火、風、土、水、光、闇の6種類。使うには体内貯蔵マナを消費する。詠唱は「壱奏→弐奏→参奏→四奏→伍奏」まであり、数字が多くなるにつれて威力が上がり、消費マナが増え、詠唱時間も増える。俯瞰的に見れば、魔法は努力家よりも天才の方が優れる。

 魔法の歴史は長く、「魔法のスキル」を授かった者たちはその経験と知識を代々受け継いできた。時には人に使い、時にモンスターに使うことで魔法は鍛えられてきたが、まだまだその進化は止まることを知らない。今日を生きる「魔法のスキル」を所持する者たちは、その長年の蓄積をまず学び、次に自己流に発展させることで次の世代へと新たな可能性を見出す必要があると言われている。だが、魔階島とダンジョンの出現によりモンスターとの戦いの中で魔法は発展した一方で、研究するという側面が失われつつあり、このままでは魔法が停滞するのではないかと魔術師協会のトップたちは危惧している。

 ちなみに、奇法の詠唱との違いとして魔法の詠唱には“力の増幅”という特徴がある。「壱奏→弐奏→参奏→四奏→伍奏」と増える毎に魔法は威力を増していく。一般的に「壱奏」は属性の発現であり、「弐奏」からが魔法の構築作業となる。高度な技術になるが詠唱を一時的に中断しその状態を維持することは可能で、そのまま発動しても魔法になるしそれ以降を続けても魔法になる。その間は勿論のことマナは消費され続けるが、危険を察知した際の緊急手段としては有効である。


〇奇法:「祝福のスキル」や「勇者のスキル」などを持つ者が使える技。傷を癒したり、瘴気払ったり、マナの見えない壁を形成したりすることできる。魔法と同じで「壱奏→弐奏→参奏→四奏→伍奏」まであり、数字が多くなるにつれて消費マナが増え、詠唱時間も増える。ただし、全般的にマナの消費は魔法よりも少ない。俯瞰的に見れば、奇法は天才よりも努力家の方が優れる。

 奇法では様々な傷や病気を治すことができるが、しかし万能ではない。例えば原因が不明な病気などは治しようがなく、その点で言えば「調理のスキル」に優れた薬師の方が治すことが得意と言える。この点で言えば魔法と同じで、奇法によって傷や病気が一瞬で治る様子はまさに奇跡のように見えるかもしれないが、やはりそこには並々ならぬ努力と勉強が必要だと言える。人類の歴史の中で積み上げられた奇法の術を学び習得することが重要であり、「祝福のスキル」を持つ者たちは決して怠けてはいけないと師なり尊敬する人なりに言われ続けている。奇法に関してはその詠唱は決まったものが存在しており、自己流の発展をさせる必要がないので魔法のように研究機関があるわけではない。確かに奇法は聖導会において教えられるものであるが、それよりもカエール教を信仰する者としての心得の方が重要だと考えられている。より実戦的で応用的な奇法を学びたい場合は、聖導会に所蔵する5人の師範マスターの弟子になるしかなく、彼らの下であればより洗練された奇法を学ぶことができるがそこには長い修業が必要となる。

 また、魔法とは違い奇法にはマナ自体に働きかける力があるので、その力の強い者は詠唱無しで物を動かすことなどができる。詠唱に関しては、魔法とは違い「壱奏」から構築作業となるので途中で中断すると意味をなさない。


〇魔装:「魔装のスキル」も持つ者が使える技。物体に属性を付与したり、特定の属性への耐久力を高めたり、特定のモンスターへの特攻・特防を高めたりすることができる。魔法や奇法と同じで「壱奏→弐奏→参奏→四奏→伍奏」まであり、数字が多くなるにつれて消費マナが増え、詠唱時間も増える。ただし、全般的にマナの消費は魔法よりも少ないが、奇法よりかは多い。

 スキルは先祖と同じものを授かる場合が多いが、この「魔装のスキル」に関しては突発的に授かる場合が多いと言われる。そもそも他のスキルと比べると「魔装のスキル」所持者は少ないと言われ、なので「魔装のスキル」を授かった者たちは「勇者のスキル」ほどではないがそれなりの注目を浴びてしまう。魔法のような奇法のような、その両者を掛け合わせたようなそんな魔装であるが、これも魔術師協会の管轄でありそこにおいて研究、教授されるのが一般的である。「ミンナミ」と魔術師協会の秩序を守る6人の優秀な魔導士「ラグナ・ロック」の一人も「魔装のスキル」を授かった者であり、なので魔装に関してはその者を中心に研究、教授されている。

 また、詠唱に関しては、魔法と同じで「壱奏」は属性の発現であり「弐奏」からは構築作業となるが、奇法と同じで途中で中断すると意味をなさないという、ここでも魔法と奇法の中間のような特徴を発揮している。


〇マナ:人間やモンスター、生きとし生けるものたちの中に溜め込まれている魔法や奇法の素となるエネルギー。このマナは大気中にも微量に存在しているので、時間が経てば自然と体内貯蔵マナは回復していくが、生き物を食べたり、薬を飲んだりした方が回復量は早い。ちなみに、体内貯蔵マナの源は生き物の“目”にあるらしく、その目から体へと循環しているらしい。

 しかし、このマナ自体は何であるかは実は判明しておらず、ほとんどの者が“神々の祝福”として理解し、その追求を禁忌としてきた。だが、魔科学を研究する者たちを匿ってきた「セイブ」だけはマナを追求し続けた。


〇詠唱:魔法や奇法を扱うスキルを持った者のみが使える言葉や文字。マナに対して言葉や文字で働きかけ、そのエネルギーを素に魔法・奇法を形作る。「壱奏、弐奏」までは動きながらでも詠唱が可能。「参奏、四奏、伍奏」になると動きながらの詠唱は困難であり、一部の才のある者にしか動きながらの詠唱はできない。詠唱中の際はほとんどの者が無防備になるので、戦いにおいて魔法や奇法、魔装を発動するためには援護を必要とする。

 一般的には言葉での詠唱が普通であり、多くの者たちが言葉による詠唱が馴染むと言われている。しかし、場合によっては歌や踊り、文字という場合もあり、本当にごくわずかであるがこの世界には“普通の言葉を話すだけで詠唱になってしまう者”や“一挙手一投足が詠唱になってしまう者”もいるという。言葉以外の詠唱とは確かにその人それぞれの特徴と捉えることもできるが、そもそもの発端は人と人が争った戦争の中にあると言われている。言葉での詠唱に比べて妨害を受けやすいが、しかし歌や踊り、特に文字による魔法や奇法、魔装は奇襲としては有効であり、また発動者が近くにいれば事前に仕掛けておいて後で発動させることも可能である。現在の状況では相手はモンスターであるのでそのような搦め手として言葉以外の詠唱が使われることはなくなりつつあるが、しかし戦闘においては使える技が多いに越したことはなく、現在でも言葉以外の方法の詠唱は受け継がれている。


始動鍵アクセス:魔法や奇法、魔装の詠唱を行う際に、「壱奏」よりも前に付ける言葉や文字。この始動鍵は人によって異なり、同じものは存在しない。魔法や奇法、魔装を使うということは初めに自分の始動鍵を見つけ出すということから始まる。一般的には始動鍵は“自分がマナをどう思い、どう感じているか”らしく、始動鍵はマナへの呼びかけだと考えられている。


モード:スキルを持った者たちが使えるそれぞれの技を形作るもの。これにより魔法や奇法、剣術、槍術などの基本的な形が決まり、この型も人によって得意不得意が存在するので、挑戦者たちは自分に合った型を見つけて使わないといけない。例えば“型”が剣であれば、「戦闘のスキル」においては剣術が上達しやすいし、「魔法のスキル」においては剣を模した魔法が強くなる。また、人間が得意とする“型”は生まれた時から決まっているらしく、練習したところでその他の“型”が上手くなることはない。ちなみに、魔科学の研究によりこの“型”を決定している要因を調査したが、結局それを発見するには至らずその研究も「セイブ」と共に消滅した。

 また、魔法や奇法の場合においてはこの“型”を“魔導回路サーキット”と呼ぶこともあるが、どのスキルにおいても存在することからも“型”の呼び名の方が一般的である。


〇魔科学:かつて「セイブ」において研究されていた、特有のスキルがなくとも誰でも魔法や奇法のような技ができるようにと発明された技術。特殊な機械が詠唱や始動鍵、型の役割を担い、誰でも魔法や奇法に似たことができ、その技術は色々な意味で他国を震撼させた。だが最終的には、マナとは人とは命とは神とはと探求が進められたが、魔王時代の到来で築き上げられたその知識と技術は露と消えた。また、魔科学は「天授論」に反する技術であり、他人のスキルの活躍する場を奪うその行為は「天授論」を信仰する多くの人から非難され、果ては「セイブ」と「ミンナミ」の国家間の争いの原因になったともされている。ちなみに、「セイブ」が滅んだのはこの魔科学という“神々への冒涜”を続けたからであると考える者たちもおり、それにより「天授論」は更に強固なものへと変貌し始めた。


〇契約:“契約の女神ナカ・ヨーク”の下で行われる誓い。この誓いはスキルによって多少異なるが、普通の人であれば最大4回、勇者であれば最大9回(その際は「士気向上」に依存)まで結ぶことができると言われている。だが、勇者同士の契約はできない。また、契約をすると契約した者同士の右手に同じ刻印が刻まれる。他にも、契約を行うと互いに様々な恩恵を得ることができ、契約した仲間は「パートナー」とも呼ばれる。契約書(書式自由)を作成し、両者の了解があれば成立する。ただし、契約の破棄の場合は双方の了承と加えて多大なお金が請求されるので、ご利用は計画的に。

 契約することで、得られる恩恵としてはパートナーたちの力を共有させることで、経験値、所持金などもその一つだが一番に大きいのはパートナー同士のステータスの向上である。一人よりも二人、二人よりも三人とパートナーが増えるごとにパーティの強さは増し、ダンジョンでの生存能力を高め、強大なモンスターにも立ち向かえるようになる。しかし、難点はその基準がパートナーたちの“一番弱い者”にあることだ。つまり、一人でも大きくレベルの低い者がいると、その者に合わせて皆のステータスが変動してしまい、結果としてパーティ全体が弱くなってしまう。なので、大抵の場合はレベル差の少ない者同士で契約を行うことになる。


〇ゲッシュ:“契約の女神ナカ・ヨーク”の下で行われる最上級の誓い。ゲッシュは「契約」の一枠を使い、しかも一対一でしか誓いができない。ただし、この誓いをした者同士は契約よりも強固な恩恵を得る。だがそこには大きな問題が幾つかあり、今では「契約」に比べると圧倒的にその利用者は少なく、かつては主従の関係を表す伝統的な誓いとも言われていた。また、「契約」とは違い、ゲッシュの証の刻印は右手とは限らずに体のどこかに刻まれる。

 基本は「契約」と変わらないので扱いとしてはパートナーということになるが、「契約」が複数人(普通の挑戦者なら4人まで)でできるのに対して、「ゲッシュ」は一対一で行い、また一人が「ギフテッド」もう一人が「マスター」と呼ばれる存在になる。「契約」と同じなので、経験値、所持金の共有、ステータスの向上は当たり前だが、大きく異なる点はスキルの譲渡である。「マスター」が所持するスキルの一部を「ギフテッド」に分け与えることができ、つまり「ギフテッド」は2つのスキル保持者になれる。ただし、そこには幾つかの難点が存在する。

 1つ目は、「ゲッシュ」の際には、両者共々が何か体の一部を交換する必要があること。古くの習わしでは、互いの心臓を捧げることでその意を表したそうだが、特に心臓でなくても何でも可能。

 2つ目は、「マスター」に対して「ギフテッド」が誓いを立てる必要があること。というよりも、この誓いを立てない限り「ゲッシュ」は大した効果を発揮しないので、この誓いは必須となる。しかも、その誓いは絶対順守であり、破った場合は双方に多大な不幸が訪れる。さらに、その誓いも不利益なものでないと効果が薄く、「マスター」のスキルをほとんど譲渡してもらうとなると、非常に困難な誓いを立てる必要がある。また、誓いの度に両者ともに消えない傷を体に刻む必要もある。

 3つ目は、「マスター」の弱体化。「マスター」となる者はそのスキルを失うことはないが、「ギフテッド」に譲渡した分、「マスター」は弱体化されダンジョンに一緒に挑んでも足手まといになる。

 最後4つ目は、「ゲッシュ」は気軽に破棄できないこと。「契約」の場合は破棄料で済むが、「ゲッシュ」の場合は金銭では破棄できず、「マスター」か「ギフテッド」どちらかの存在の消滅でしか破棄できない。


〇魔階島:この世界に存在する唯一モンスターが生息する不思議な島。元々は何も無かったはずのユウダイナ大陸の西方海面に突如として出現し、それによりユウダイナ大陸へとモンスターが雪崩れ込んだ。だが、現在では生息していると言っても島中にモンスターが蔓延っているわけではなく、その島の中心部にそびえ立つ魔樹の根元から入れるダンジョンの中にのみモンスターは生息している。なので、地表部分は至って平和で多くの人間が住み着いてそこで生活を送っている。区画としては大きく「商業区画」、「住居区画」、「観光区画」に分かれており、それぞれの区画に専用の船着き場がある。アルバーン家の王宮は「商業区画」、「住居区画」を見下ろすことのできる位置にあり、魔階島上の建築物としては一番に高い。挑戦者は主に「住居区画」に住み着いて「商業区画」で買い物をした後にダンジョンへと向かうという暮らしをしており、滅多なことがないと「観光区画」には赴かない。「観光区画」にはユウダイナ大陸からの観光客たちが多く集まるので、彼ら向けの施設がいくつも並んでいるがどこもそれなりの値段がする。他にも、「商業区画」には各神を祀った神殿も用意されており、各神殿の利用をしやすくなっている。

 また、ユウダイナ大陸の三国のどれにも属さない永久中立国家でもあり、国王は初代勇者クロスフォードの血筋を継ぐアルバーン家が務めることとなっている。ちなみに、国王の義務として莫大かつ無限の富を生むダンジョンの資源を定期的に他の三国に分け与え、かつそのダンジョンからモンスターが出ないように平和維持をすることがある。


〇魔王:かつて、ユウダイナ大陸の半分を支配したとされる人類史上の最強最大の敵。魔王時代の初期に無数のモンスターたちを自ら率いて「セイブ」を滅ぼすと、その各地に特別に強い力を持つ6体のモンスターたち“六魔将軍”を配置した。その最後は初代勇者クロスフォードによって討たれたとされているが、その正体について詳しいことは何一つとして分かっておらず、研究者の間では大昔にユウダイナ大陸にいたモンスターたちの生き残りではないかとも言われている謎多き存在。


〇ダンジョン:魔階島の魔樹の根元から地下深くまで続いている洞窟であり、その中は人の命を蝕む瘴気で満ちている。唯一このダンジョンの最終地点までたどり着き無事に生還した英雄王は、十階ごとに強力な番人モンスターが存在し、およそ百階ぐらいまであったと述べている。また、月に2回ほどダンジョンの中は大きく変化しその形を変えるが、その際に“番人の間”若しくは外にいないとダンジョンに飲み込まれて死んでしまうことは既に挑戦者たちの間で周知の事実である。しかし、変化するごとにダンジョンの中には貴重な素材が出現するという利点もあり、これがダンジョンのもたらす無限の富の理由でもある。ちなみに、ダンジョンが変化するこの時期を「変動期」と呼ぶ。

また、ダンジョンは10階ごとにその様子を大きく変える。

第1階層から第9階層までは“土の中の様で、じめじめとしていて暗く、狭い”

第11階層から第19階層までは“お城の中の様で、レンガに覆われていて所により暗く、やや狭い”

第21階層から第29階層までは“森の中の様で、草木に囲まれていて昼と夜がある、やや広い”

第31階層から第39階層までは“墓地の中の様で、肌寒く広い場所が多い”

第41階層から第49階層までは“洞窟の中の様で、薄暗く縦に広い場所が多い”

第51階層から第59階層までは“海の中の様で、広大で場所によっては水の中に入らねばならない”

第61階層以降はまだ不明。


〇瘴気:ダンジョンの中に充満しているガスのような物質。あまり目には見えず、何とも言えない独特な臭いがする。ダンジョンの上層は瘴気は薄くそこまで身体に影響はないが、下層にいくにつれてその瘴気は濃くなり、そのままでは身体に影響が及び最悪死に至る。この瘴気から身を守るには特別な薬を使うか、奇法を使うしかない。


〇番人の間:魔階島のダンジョンに十階ごと設けられている巨大な謎の一室。とても広い空間であり、そこには番人と呼ばれる特別なモンスターが勇者を待ち構えている。ちなみに、挑戦者は勇者の誰か一人でも突破している番人の間であればこれを素通りできるが、誰かしらの勇者が突破しないと門は絶対に開かないのでその先には進めない。一方で、勇者は己の手で番人の間を突破しない限り、その扉の前に黒い霧が出現してその先には進めないので他人任せにすることはできない。

 また、誰かが一人でも勇者が突破した番人の間は挑戦者たちの憩いの場になっており、休息の場や『転送石』を設置する場などになっていたり、時と場所によっては挑戦者やネイバーによる露店が開かれていたりもする。だが、他の勇者が番人攻略中にも関わらず番人の間が使用できるのはダンジョンの疑問の一つであり、勇者は一度突破した後にその扉を閉めてまた開けるとそこには他の挑戦者たちと同じ光景が広がっているというのだから訳が分からない。


〇モンスター:かつてはユウダイナ大陸に生息していたが、現在となっては魔階島のダンジョン内にしか生息していない不思議な生き物たちの通称。各個体ごとその形によって色々な呼び名があるが総称してモンスターと呼んでいる。基本的にはどのモンスターも食すことができるらしく、食することを目当てにダンジョンに挑む挑戦者も少なくはない。また、モンスターの生態に関してはまだ詳しく判明していないことが多く、たくさんの研究家が調査している。現時点において、モンスターは人間や地表の動物のように生殖活動による増殖は確認されておらず、どうやってその種の維持をしているのかは分かっていない。一部の挑戦者たちには「壁からモンスターが生えてきたのを見た」と証言する者たちがいるが、そこに明確な証拠はない。

 一方で、挑戦者であり生物学者でもあるインディ・ジョブズはかつてのモンスターと魔階島のモンスターは別のものだと主張している。その大きな理由として、かつてのモンスターと呼ばれたものたちは人間と同じように生殖活動で増殖していたという文献が残されているからであると彼は主張する。ちなみに、かつてユウダイナ大陸にいたモンスターはその種類に関してだけ言えば今以上に少なかったとされている。


〇番人:魔階島のダンジョンの十階ごとにある“番人の間”に出現する強靭なモンスターたちの総称であり、その勇者しか挑めない特殊性からダンジョンの奥地を守護する“番人”と呼ばれるようになった。また、姿形は同じであるが何故か番人はダンジョンに挑む全ての勇者の前に立ちはだかる。多くの研究者はダンジョンに稀に出現する強個体と呼ばれる特別に強いモンスターたちとこの番人を同一視しているが、インディ・ジョブスは彼らとは異なる見解を示している。現段階における最前線の勇者たちの突破数は第六十階にとどまっており、それより下の階の番人に関する情報はない。

今のところ判明しているのは五体、順に、

第十階層の番人“彷徨える騎士の亡霊”

第二十階層の番人“貪る食人草たちの狂乱”

第三十階層の番人“許されざる罪人の花嫁”

第四十階層の番人“舞い踊る剣士の舞踏会”

第五十階層の番人“飽食な美食家の晩餐”

第六十階層の番人 不明


〇ケットシー:ダンジョンに生息する、猫のような見た目をした二足歩行をする小型モンスターの一種。ダンジョンのどこにでも生息し、また人間の言葉を理解できるものがほとんど。挑戦者に対して割と友好的で、時には彼らがダンジョンで見つけた武器防具や魔具を売ってくれることもある。


〇コボルト:ダンジョンに生息する、犬のような見た目をした二足歩行をする小型モンスターの一種。ダンジョンのどこにでも生息し、また人間の言葉を理解できるものがほとんど。挑戦者に対して割と友好的で、時には彼らがダンジョンで見つけた鉱石や素材などを売ってくれることもある。


〇ネイバー:人間の言葉を理解し、かつ人間に危害を加えないモンスターたちの総称で、主にケットシーやコボルトが多い。ダンジョンの中において多くの挑戦者たちに善行を行うことで、そのモンスターたちはギルドによって認定された後にネイバーとなることができる。ただし、ネイバーとして認められている行為は原則として魔階島での営業のみであり、その際には保証人となる挑戦者が1人以上いないといけない上に、魔階島からは出ることは絶対にできない。

 また、ネイバーはその証としてギルドが発行した証明タグを首輪にして身に付けないといけないが、しかし意外とこの証明証はネイバーには高評価らしい。


〇魔樹:魔階島の中央にそびえ立つ大きな木。その大木に茂った葉が緑色に染まる頃はダンジョンのモンスターが活発になる代わりに、貴重な素材が手に入りやすくなる。一方で、その葉が枯れ落ちる頃はダンジョンのモンスターは激減するが、貴重な素材も手に入りにくくなる。つまり、どうやら魔樹と魔階島のダンジョンは連動しているらしく、なので挑戦者はこの魔樹の状態を見てからダンジョンの探索をするように心がけている。また、魔樹から受ける恩恵は大きく、そこから得られる水や地熱などは魔階島に暮らす人々の糧となっている。

 ちなみに、魔樹の詳しい構造については分かっておらず、木のような見た目をしているだけでもしかしたら木ではない何かかもしれない。枝や葉はその下に広がる魔階島の街に落ちてくることはなく消えるだけであり、葉は太陽の光をあまり遮らない。ただ、魔樹の近くはダンジョンの入り口があり、それに地面から大きな根っこがいくつも隆起しているために住居は少ない。また、昔「魔術の勇者」が若かりし頃、興味本位でこの魔樹の一部を魔法で吹き飛ばそうとしたがびくともせず、その際に付いた傷もすぐに勝手に修復したという噂がある。


〇挑戦者:魔階島のダンジョンに挑む人間たちの総称。そのほとんどの者が金銭目当てである。戦闘に特化したスキルを持つ者が主であるが、ダンジョンの奥まで目指して珍しい素材を探す者たちは他のスキルを持つ者を連れて行くことが多い。ただし、ダンジョン内で死ぬと、復活の際に手に入れたもの全てを“生命の女神イキ・カエール”に捧げないといけないので、そこら辺の駆け引きが上手い挑戦者でないと生きてはいけない。いや、生き返れない。

 しかし、無限の富をもたらすとされるダンジョンに挑み続ける挑戦者たちであるが、彼らの中で本当に一攫千金に成功した者がいるのかと言われれば、その数はごく僅かであろう。大抵の挑戦者たちが少し裕福な暮らしができる程度で、その大きな理由は絶え間なく湧き出る“欲”であり、挑戦者の多くはお金のために挑戦し、そしてその際に失敗した時の損を取り返すために更にダンジョンへと挑んでしまうのである。結局、この堂々巡りがほとんどの挑戦者たちを苦しめているのだが、諦めてしまえばそれまでなので今日も今日とて彼らはダンジョンへと向かうのだ。


〇ファミリィエ:同じ目的や何か理由があって同じ場所に住み着く挑戦者たちのこと。ほとんどの理由はパートナー契約の制限であり、契約できる上限を超えた際に「ファミリィエ」として一緒に住むことで状況によってパートナーを変えるなどして助け合う。だが、魔階島に家や拠点を設けるのは多額な費用が掛かるので、あまりその数は多くはない。「ファミリィエ」の申請は主にギルドで行われており、場所選びや人員募集などもできる。


〇ギルド:魔階島の城下町にある、挑戦者たちが集う場所。飲み食いや、比較的楽に挑戦者仲間を募ることができ、またクエストをこなして金銭を稼ぐこともできる。ダンジョンに関わることは全てギルドで管理されており、ここでは多くの人が挑戦者たちをサポートするためだけに勤めている。他にも、魔階島で行われる各種イベントの報告もここで行われ、ギルド内には大きな講演会場も設けられている。魔階島に住む挑戦者たちの拠点とも呼べる場所であり、彼らは多くの時間をギルドとダンジョンで過ごしている。受け付けの際は勇者以外は順番待ちをしないといけない。それを破ったものは恐ろしい罰を受けるらしい。

 また、魔王を打倒し、今の挑戦者たちの先駆けともなった初代勇者と九英雄の功績を称えるためにギルドのほぼ真ん中に位置する場所には初代勇者と九英雄たちの雄姿を現した彫刻が飾られており、観光客は勿論、ここに集まる挑戦者たちはほぼ毎日彼らの姿を目にしている。


〇クエスト:ギルドで挑戦者たちが引き受けることのできる依頼の総称。クエストは大きく二つに分けられ、一つは「リクエスト」、もう一つは「バウンティ」である。「リクエスト」はギルドで依頼を受けてから挑むクエストであり、初心者にも向いている。一方で、「バウンティ」は達成した後にギルドにて依頼を受け報告するクエストであり、熟練者に向いている。また、クエストにはその難易度から「下級、中級、上級、特級」の段階に分けられる。

 「リクエスト」とは依頼を達成する前に依頼主と引受人との間で契約を交わすクエストであり、つまり一対一で引き受けるクエストのことを意味する。なので、このリクエストは魔階島に来たての新米挑戦者に適したクエストと言える。そのクエスト期間は決まっているものの、その間に他の人にクエストを横取りされる心配もないので安心できるし、早く達成すればするほど報酬も上乗せされやすいという利点も兼ね備えている。それに、このリクエストの大半は素材調達が多いので比較的に安全でもある。

 また、「バウンティ」とは依頼達成後に依頼主と引受人との間で契約を交わすクエストであり、つまり一人の依頼主に対して複数人の引受人が存在することになる。このバウンティは突発的に張り出されるクエストであり他の挑戦者との競争になるので、あまり新米挑戦者には向いていないクエストと言える。他の多くの挑戦者たちと競い合うことになる上に、クエストの内容自体も凶暴なモンスター退治や宝箱内の貴重な武器防具・道具の回収などと難しいものばかり。だが、その分高額な報酬が支払われるので、正直に言って挑戦者としてはリクエストに比べてバウンティの方が金になると言える。ちなみに、このバウンティ中心に生計を立てる博打好きな挑戦者たちを俗に“賞金稼ぎ”と呼ぶ。


〇ガーディアンズ:ギルド公認の挑戦者たちの総称。その主な仕事はダンジョン内の平和維持であり、一般の挑戦者たちから受けた報告を基にモンスターや悪評のある挑戦者たちに対処し治安を維持している。また、期限が切れそうなクエストを優先的に処理していくのもガーディアンズたちの務めである。ガーディアンズになるとその等級に応じて毎月給金が貰えるので、今では大半の挑戦者がこのガーディアンズに所属している。ちなみに、ガーディアンズたちにはそれぞれ等級があり、下から「銅(下級・上級)、銀(下級・上級)、金、白金」の六段階で、皆その等級が分かるように色のついた帯を肩に巻いている。この等級を上げるにはギルドで応募されている「下級、中級、上級、特級」のクエストを満遍なくこなし、別にギルドでの試験に受からないといけない。また、ガーディアンズの帯は特殊な繊維を使用しており、暗い所やダンジョン内で光りその存在を周りに知らせることで、犯罪行為への抑止力としても働いている。

 等級によるガーディアンズたちの強さを簡単に説明すると「【白金帯】は、勇者とほぼ同格」、「【金帯】は、場合によって勇者とほぼ同格」、「【銀帯】は、安定した挑戦者」、「【銅帯】は、駆け出し挑戦者」と例えられることが多い。

【白金帯】以下5名とそのパートナーたち

贋作勇者プチ・ヒーロー

三.一銃士マスケッターズ

千夜一夜アラビアン・ナイト

桃太郎侍モモ・サムライ

悪即断頭ギロチン

【金帯】 以下7名とそのパートナーたち

①熱血鉄血の料理人、②明運委任の賭博師、③純愛烈火の騎士、④砂響奏姫の歌、⑤夢幻泡影の刃、⑥深淵迷宮の教官、⑦疾風迅雷の槍

【銀帯】多数

【銅帯】超多数


〇シーカー:ギルドから要注意とされている挑戦者たちの総称。その理由は様々であるが、主にダンジョンにおける盗賊行為や暴力行為などが挙げられる。中でも現在特に注意されているのは「幻想鏡ミラージュ」、「千面相ファントム」、「暴竜殺ドラゴンスレイヤー」、「影修羅シャドウ」、「無法者デスパラード」などと呼ばれる挑戦者たちがいるが、いずれも詳しくはその正体までは分かっていない。


黄金の黄昏トワイライト:ユウダイナ大陸を騒がせる、世界的に有名な秘密結社の一つ。そのトップや構成員などは不明であるが、彼らの目的は“収集”である。勿論、彼らが何のために収集するのかは不明であるが、世界中のあらゆる価値のある物を盗んではどこかに隠している模様。最近では魔階島のダンジョンに隠された品々で、中でも最強の6本の属性武器「六柱神オリンピア」を狙っているらしく、ギルドも不正が無いかどうか目を光らせている。ちなみに、この結社の構成員はシーカー扱いされるので見つかった際は即刻逮捕される。


母なる沼地マザーズ:ユウダイナ大陸の主に「ミンナミ」を騒がせる、世界的に有名な秘密結社の一つ。「魔法のスキル」を持つ女性たち、通称“魔女”と呼ばれる者たちの集まりでその目的は魔術師協会への復讐であるという。この組織のトップは“母なる魔女マザー”と呼ばれる女性で、かつては魔術師協会の魔法研究の第一人者でもあったが、その果て亡き探求心による度重なる行き過ぎた研究により彼女は魔術師協会を追放された。今では「ミンナミ」に広がる沼地のどこかに彼女は潜伏し、世界中の「魔法のスキル」の才のある女性を誘惑しては組織へと勧誘しているらしい。ただ、そんな“母なる魔女マザー”はかなりの高齢のはずであり、不死であっても不老ではないこの世界の住人としては残された時間は少ないと思われる。


鉄工房ファクトリエ:「ホッポウ」に存在する、魔科学の中でも「パニッシャー」と呼ばれる特殊な遠距離武器を研究・開発している組織。「ホッポウ」を統治する「十二宗家」の一つ、鉄鋼業に優れる「ガトー家」が中心となった組織であり、魔階島で活躍する“三.一銃士マスケッターズ”などもこの組織の一員である。ただし、魔科学を研究する鉄工房ファクトリエは他国のみならず自国からもあまりよく見られておらず、度々「天授論」を信仰する者たちから苦言を呈されている。


〇魔階島観光協会:魔階島の「商業区画」に本部を構える魔階島の宣伝を主とした、ギルドと同じアルバーン家直属の国家機関。「観光区画」の運営・管理やユウダイナ大陸に住む人々に向けた宣伝雑誌や魔階島に住む挑戦者に向けた情報雑誌作成、果ては魔階島で行われる各種イベントの運営など様々なことを熟す機関であり、多くの職員が働いている。中でも広報担当課の下で作成されている『マカコレ』という雑誌は絶大の人気を誇り、様々な能力を持った「執筆のスキル」を授かった者たちの本物そっくりの“模写”目当てに多くの人が購入している。


〇遺跡ルーイン:ユウダイナ大陸の各所に存在する不可思議な建造物の総称。いつ、誰が、どうして、どのようにして建築したのかは分からないが、その劣化状況から遥か昔に造られたものだと言われている。しかし、その中身はほとんど何もなく、あるといえば祭壇のような場所とその近くにある大きな石像のようなものだけであり、後は毒蛇や毒虫がいる程度である。これら遺跡を調査しそこに眠る遺物を掘り起こす者たちを俗に“冒険者”というが、彼らの成果によりユウダイナ大陸には似たような遺跡が十か所あることが分かった。その内の三か所はそれぞれ、「ミンナミ」の聖導会の地下、「ホッポウ」の「ロン家」が運営する大学の地下、「アズマ」の不可侵領域「ヤマト」にあるらしく、他七か所はそれぞれの国にあるが中でも「ミンナミ」の領土内に多い。


〇奇跡の七つ星:ダンジョンでしか採取できない上に、その数までもが少ないという貴重中の貴重な食材、幻とまで言われた7つの食材、そんなモンスターたちを人は『奇跡の七つ星』と呼ぶ。それらはそれぞれ地表に存在する「牛、鳥、魚、鶏卵、虫、果実、野菜」に似た姿をしているらしく、その全てを食したことのある者は世界に一人しかいない。その者こそ、かの初代勇者クロスフォードに仕えた仲間の一人であり、その彼がダンジョンの攻略中に書き残した手帳は現在のダンジョンの食材を使った料理たちの基礎ともなっている。ちなみに、『奇跡の七つ星』はどれも高価であり、傷一つなく入手できた場合は想像もできないような値打ちがつくらしい。だが、高価であるとともに『奇跡の七つ星』はどれもこの世のものとは思えないほどに美味らしく、「売るのは勿体ない」とも言われそこは挑戦者たちの財布とお腹の事情に委ねるしかない。


〇勇者:百万人に一人とも言われる伝説のスキル「勇者のスキル」を所有する者たちの総称。初代勇者は魔王を討伐しこの世界を救った“クロスフォード”であるが、その後数百年に渡って勇者の存在は依然として確認され続けている。現在、世界中で存在が確認されている勇者は12名であり、その全員が魔階島へと訪れている。また、勇者たちは多種多様なスキルを所持しているので、自分に合ったスキルを伸ばしてダンジョン攻略に活かしている。

 魔王亡き今、勇者の大きな役割はダンジョンの攻略と最下層への探索である。勇者でない限り番人を倒せないので、他の者たちはダンジョンの最下層に辿り着くためには彼らを支援するしかない。とはいえ、全ての勇者がダンジョン攻略に前向きというわけではなく、真剣にダンジョン攻略をしている勇者はごく僅かでほとんどが普通の挑戦者と変わりなくただお金を稼いでいるのが現状。


〇九英雄:初代勇者クロスフォードと共にユウダイナ大陸から魔王軍を退け、最後には魔階島のダンジョンにて勇者が魔王を討伐するのにも尽力した9人の英雄たち。彼らの内、魔王討伐後に生き残った者は一人しかいなかったが、その全員の雄姿を讃えてギルドの中には勇者と九英雄たちの大きな彫像が飾られている。また、九英雄たちはユウダイナ大陸の四国(現在は三国)から集まっており、当時としては異例の他国同士の協力体制になっていた。九英雄の構成としては「騎士」「双剣士」「神官」「長槍士」「狩人」「僧侶」「魔女」「魔装師」「侍」となっており、現在においても彼らに似たスキルを持つ者たちはダンジョン攻略を成功に導くということでパートナーにするとダンジョン探索の際に縁起が良いとされている。


〇勇者のスキル:他のスキルとは違って、魔階島のダンジョンに特化した能力を多数備えている。勇者は必ずその全ての能力を使えるが、他のスキルと同様にそこには得意不得意の個人差が存在する。

まずは「瘴気遮断」。ダンジョン内に蔓延る瘴気から身を守る。

次に、「女神の加護」。ダンジョン内で死んでも格安で復活してもらえる。また簡単な奇法を習得できる

続いて、「鍵開け」。“番人の間”の扉を開けることができる。

続いて、「天性の感」。ダンジョン内における危険を感知する能力。

続いて、「万人力」。自身の筋力がかなり高まる。

続いて、「健康身体」。毒、痺れ、呪い、などなどの悪いものから体を守る。

続いて、「武器万能」。どんな武器であってもそれなりに使いこなせる。

続いて、「鑑識眼」。武器やアイテム、モンスターに関する情報を視覚から得る。

続いて、「士気向上」。契約している仲間のステータスを向上させる。

続いて、「魔の素質」。簡単な魔法を習得できる。

続いて、「限界突破」。他の人間に比べてレベルの上限が高い。また経験値の獲得量が上がる。

最後に、「魔邪撃滅」。番人や魔王に止めを刺せる能力。


〇属性武器:「四大元素」である火、水、土、風、「二外元素」である光、闇の6つのどれかをその身に宿す武器の総称。自力で作り出すのは非常に困難で、大半はダンジョン内で発見される。使って強く、売って高く、多くの挑戦者がこの属性武器を探し求めている。

 属性武器がなぜ「四大元素」や「二外元素」の力を発揮できるのは詳しくは判明していないが、その武器が大きく破損してしまうとその効力が失われることは分かっている。修理、修復は基本的には不可能であり、一度壊れてしまった場合は捨てる他ない。今ではダンジョン内で発見されるようになった属性武器であるが、実はダンジョン内にのみ存在するわけではなく遥か昔からユウダイナ大陸でもその姿を見られた。属性武器は、かつてはモンスターの武器であったともされるがユウダイナ大陸にモンスターのいなくなった今ではその真相は定かではない。


六柱神オリンピア:属性武器の中でも、究極の力を発揮する属性武器が1つだけそれぞれの属性ごとに存在するらしく、それがこの“六柱神”である。それらは合計6種存在するらしいが、聞く者は多く目にした者はおらず、ダンジョンに挑む挑戦者を増やすための虚偽の情報であるとの専らの噂である。また、それらは値打ちにならない程に貴重かつ高価で、どれか一つでも手に入れば一生遊んで暮らせるとのこと。

 ちなみに、現段階でその姿を見たと噂する者たちによると、

・姿無き水の剣『不可視之幻想インビジブル

・大地創造の槌『森羅万象之胎動ファーザー

・雷電を断つ鉾『紫電金剛之羅刹ライトニング

・命蝕む魔の剣『深淵纏衣之魂喰ソウルイーター

以上、計4本の武器の噂はあるが、ただの噂に過ぎず手にした者はいない。残りの2本については名前も見た目も不明である。


〇魔具:ダンジョン内で発見される不思議な力を持つ防具や道具、装飾品などの総称。身に着けるだけで体力や魔力、筋力といったステータスを上昇させる物から、戦闘にはまるで役に立たない物もある。ただ、珍しい物には変わりないのでどのような物でも高額で取引される。ただし、この魔具には奇怪な呪いも持つものも多く、ある一定以上装着すると・・・ご利用は計画的に。魔具による呪いは上級の奇法であれば解呪できるが、一度解呪してしまうと魔具の特殊な力は消えてしまう。


〇道具アイテム:主に「造形のスキル」や「調理のスキル」を持つ者たちが作り出したダンジョン攻略において有効な様々な装備の総称。モンスターの素材を手に入れやすくする『抽出機』やモンスターから逃げる際に有効な『けむり玉』『臭い消し』、松明よりも安全にダンジョン内を照らす『提灯具ランタン』、体内貯蔵マナを増やす『エーテル』、体内のマナを活性化させて痛みを和らげ傷を回復させる『回復剤』など様々で、呼び名が同じであっても作る者の腕と技術次第ではその効果は大きく変わる。また、魔階島にはこの道具を作ることに特化したファミリィエが多く存在し、彼らがそこで作り出した道具を魔階島の各商店にて売り出している。


〇魔薬ドラッグ:ダンジョン攻略に有効な薬の多くはダンジョン内で採れる素材を素に作られているが、その中でも効能は高いが副作用があり依存効果も高いものを魔薬と呼ぶ。その効能は魔薬によって色々であるが、特に人気なのはステータスを大幅に上昇させる効能を持つ魔薬である。手軽に強くなりたい者たちやレベルに上がり悩む者たちに人気であり、特に魔階島において人気を誇るが、努力に見合わない成果は「天授論」に反するので魔階島を始めとする各国でその使用を禁止されている。また、魔薬の効能は永久ではなく時間経過で元に戻る上に使用ごとにその数を増やさないといけないとデメリットも多い。だが、それでも利用者は後を絶たず、ギルドも魔薬の製作者たちを取り締まろうとしてはいるが撲滅には至っていない。


〇殻シェラント:この世界に存在する難病の一つで、この病気にかかった者の多くが何か中身が抜け落ちたような、大切なものを何処かへ忘れたようなそんな状態になってしまう。具体的には目は虚ろで、言葉は話せず、ただ生命維持に必要な活動だけをするようになり、それ以外のことは何もできなくなる。現状の奇法や医学では手の打ちようがなく、他の難病とも合わせて魔階島のダンジョンで採れる素材に解決策を委ねるしかない。しかし、「殻」は古くからある病気ではなく、魔王時代から世界の各地で見られるようになった病気である。ちなみに、この「殻」の症状は人間性の喪失というだけでなく、稀に突如訳の分からないことを話すようになり発狂する者もいると言うが、やはり詳しいことは判明していない。


④一部人物紹介


〇トトマ

年齢:17歳

性別:男

スキル:「勇者のスキル」

12人の勇者の内の1人にして、一番若い12番目の勇者。

勇者として、「天性の感」が優れている。一人称は「僕」。

 初代勇者クロスフォードが生まれ育った場所と同じ田舎の村“リスタート”で生まれ育った少し内気で、中々自分の力に自信が持てない少年。だが、他人のこととなると正義感を燃やすタイプで、厄介ごとによく首を突っ込みがち。

 14歳最後の夜、スキルの女神アタ・エールに祝福を受けて、栄えある「勇者のスキル」を授かった。そのことに彼の家族も村の人も大喜びであり、彼らの応援の下に彼は意気揚々と魔階島へと旅立った。目的は、家族への資金援助と病気の妹を治すため、そしてその妹との大切な約束である「ダンジョンの奥底を見る」ためである。また、彼の妹は今の奇法、医療では回復する見込みのない難病「殻」にかかっており、もはやその薬となる可能性のあるものはダンジョンにしかない。

 しかし、ダンジョン内は危険が多いということで、能力「天性の感」のレベルを上げ過ぎてしまい、現段階では普通の挑戦者に劣る力しか発揮できない。なので、魔階島に訪れた当初は色々な挑戦者たちからちやほやされていたトトマであったが、今ではギルドに行けば失笑を買う勇者になってしまい、挑戦者たちには相手にされていない。その所為で番人攻略のための優秀なパートナーをあまり集めることができず、彼の下へと集まった挑戦者たちは誰もが一癖も二癖も持った変な者たちばかりであった。

 好きな物は「散歩、読書」。苦手な物は「喧嘩」。


〇オジマンティエス・G・サンドレオス

年齢:36歳

性別:男

スキル:「戦闘のスキル」

 レベルに関しては中堅の挑戦者並みである。一人称は「俺」。

 彼はトトマの最初のパートナーでもあるが、しかし常にお酒を飲んでいて常にほろ酔い状態なのであまり戦力にはならない模様。時折、気分がいい時はトトマに同行してダンジョンに入るものの、酔っているために狙いが定まらず、攻撃も防ぐことができない。酒が切れると動かなくなり、かと言って酒が回りすぎても動かなくなる。

 何故か複数の勇者たちと面識があるが、彼の過去に何があったのかは主人公たちは何も知らない。

 好きな物は「お酒」。苦手な物は「実の弟」。


〇ミランダ・カエール

年齢:17歳

性別:女

スキル:「祝福のスキル」

 生命の女神イキ・カエールを信仰するカエール教の聖職者。一人称は「私」。

 挑戦者にとって、ダンジョンの攻略には治癒と瘴気遮断の能力を持つ「祝福のスキル」は必要不可欠であるが、彼女はその能力が低い上に叩くことで相手を回復するので戦力にはならない。そのためギルドで雇い手がなく、途方に暮れて協会の前で一人膝を抱えていたところを同じ心境であったトトマからパートナーに誘われ今に至る。

 基本的にはおどおどとした性格をしているが、時折冷静かつ大人めいた態度を取ることもある。その理由は不明。

 好きな物は「編み物」。苦手な物は「冷たい水(泳げないため)」。


〇マジカル☆モイモイ

年齢:?歳

性別:女

スキル:「魔装のスキル」

 語尾に「☆」が付く不思議少女。一人称は「私」。

 「勇者のスキル」程ではないが、世にも珍しい付加魔法能力のスキル「魔装のスキル」の持ち主。自称「愛と正義の魔装戦士」。また、マジカル☆モイモイは魂の名前らしい。「魔装のスキル」によって、火、風、光の属性を武器や防具に付与して戦うことができる。また、あの初代勇者の9人の仲間の1人にも「魔装のスキル」を持った者がいたと言う。

 しかし、彼女の付加能力には大きな問題があり、彼女の魔装は強力な爆発を生じるので共に戦うとその爆発に巻き込まれて殺される可能性がある。だが、それを知らずにトトマは彼女とパートナー契約してしまった。

 普段はニコニコと楽しそうな顔をしているが、時折悲しい遠い目をすることがある。

 好きな物は「トトマをいじること」。苦手な物は「孤独」。


〇ムサシ・ミヤモト

年齢:61歳

性別:男

スキル「勇者のスキル」

12人の勇者の内の1人にして、一番年配の1番目の勇者。

勇者として、「鑑識眼」が優れている。通称「鬼面の勇者」で、一人称は「儂」。

 ユウダイナ大陸のアズマにある「ヤマト」と呼ばれる地域から訪れた勇者。

 厳格なお爺ちゃんのような見た目だが、実は誰にでも優しい勇者。常にお菓子を持参している。手にする武器は「刀」と呼ばれる細身の片刃剣を愛用しており、「鑑識眼」によってモンスターや物体の弱さを見抜けるので、彼に斬れないものはないらしい。彼と彼のパートナーたちは「着物」に「刀」、そして鬼の「仮面」を装着して戦う。

 また、彼のパートナーたちは全員ヤマト出身の強者たちで構成されており、その戦闘能力は他の勇者たちのパートナーとは群を抜いて強いらしいが、何故か全員が揃ったところを見た者はいなく、一体何人いるのかも不明。ちなみに、「ムサシ・ミヤモト」は名前ではなく称号であり、「アズマ」の“天王”の政治にも口を出すことができる権力と「アズマ」の軍事行為に関する決定権を持つ者を指す。彼は若い頃にその称号を先代の「ムサシ・ミヤモト」であった姉を殺して手に入れており、そのこともあって「アズマ」に住む人々には畏怖されている。

 好きな物は「子どもや夢のある若者」。苦手な物は「骨の多い魚」。


〇ジョーカー

年齢:42歳

性別:男

スキル「勇者のスキル」

12人の勇者の内の1人にして、2番目の勇者。

勇者として、「鍵開け」が優れている。通称「強欲の勇者」で、一人称は「俺」。

 神出鬼没な勇者であり、彼に開けられない扉や錠はないという。なので、宝箱に潜むモンスターや、ダンジョンに仕掛けられた罠なども彼には全く通用しない。魔階島にいる12人の勇者たちは何かと仲がいいものたちが多いが、彼はどの勇者ともあまり関係を持とうとしない。

 他の勇者とは違って彼は100%お金のためにダンジョン攻略を行っており、必要とあれば平気でパートナーを見捨てるとの噂がある。また、基本的に他人を信用していないのか、あまり他者とは協力しない。ちなみに彼の部下に「参頭狼ケルベロス」と名乗る変てこな3人組の盗賊たちがいるが、あまり役には立たない模様。ちなみに、あまり知られていないことだが初代勇者クロスフォード以降に魔階島に初めて訪れた勇者は彼であり、一番最初に第一の番人を倒した勇者も実は彼である。

 好きな物は「お金」。苦手な物は「しつこい人」。


〇アルカロ・カエール

年齢:39歳

性別:女

スキル「勇者のスキル」

12人の勇者の内の1人にして、3番目の勇者。

勇者として、「女神の加護」が優れている。通称「奇跡の勇者」で、一人称は「わたくし

 彼女は、生命の女神イキ・カエールを信仰するカエール教の「法王」の次に偉い女教皇である。

 奇法に優れているが、その力があまりにも強すぎるために普段はその力を抑えるために両目を塞ぐように布を巻いている。でも、何故だか生活には支障はないらしい。

 魔階島にいる際は、一日に一回欠かさずに魔階島にあるカエール教の神殿でお祈りをしている。また月に一度「ミンナミ」にあるカエール教の聖導会に赴かなければならないので、現在はダンジョン攻略はあまり行っていない。

 「女神の加護」によって数々の奇法を身に着けており、彼女はパートナーたちの援護に徹することが多いが、愛用している槍頭が十字架の槍を振り回して戦うこともできる意外と武闘派な面も持ち合わせる。かつて、彼女がまだ幼かった頃にとある師範マスターから修業を受けており、今は彼と同じ師範でもあり勇者でもある。

 好きな物は「甘い物と小さい女子、男子」。苦手な物は「虫全般」。


〇バルフォニア

年齢:31歳

性別:男

スキル「勇者のスキル」

12人の勇者の内の1人にして、4番目の勇者。

勇者として、「魔の素質」が優れている。通称「魔術の勇者」で、一人称は「私」(親しい仲では「俺」)。火、風、土、水、光、闇の6種類の魔法を極めた天才型の勇者。

 「伍奏」までの詠唱を動きながらでき、また魔法の組み合わせも自由自在。寡黙かつ冷静、さらに用心深い性格でダンジョン攻略はパートナーたちと一緒に念入りに作戦を立ててから行う。だが、少しでも予定が狂うとダンジョンから撤退してしまうほどの几帳面でもある。その一方で、かつて魔階島の魔樹の一部を魔法で吹き飛ばした経験のある自分の興味関心には逆らえない一面もある。

 彼のパートナーは「四柱エレメント」と呼ばれる4人で、それぞれが「火柱」「水柱」「風柱」「土柱」の異名を持っている。ちなみに後2人ほどパートナーがいるらしいが、その正体は不明である。

 また、マジカル☆モイモイの実の兄でもあるが、彼自身はその事実に触れてほしくはない。

 好きな物は「アイドル」。苦手な物は「うるさい人(特に、実の妹)」。


〇ダンビーノ・O・イケッテンジャネーノ

年齢:30歳

性別:男

スキル「勇者のスキル」

12人の勇者の内の1人にして、5番目の勇者。

勇者として、「士気向上」が優れている。通称「友愛の勇者」で、一人称は「俺」。

 トトマが魔階島に来た時からトトマが何かとお世話になっている兄貴的な存在。見た目は金髪にサングラスで、しかも周りに女性を侍らせているその姿は印象悪く感じる者が多いが、道端ではおばあさんを助け、ダンジョンでは若手の女性挑戦者を助ける姿も見られ、根はいい人である。

 「士気向上」によって、契約できるパートナーの数は勇者たちの中でも最多の9人。そして、その9人全員がなんと女性である。その理由として半分くらいは彼の趣味趣向ではあるが、もう半分として、女性であれば彼の能力によって格段にそのステータスが上がるからでもある。

 何故か、二つ揃って初めて力を発揮する属性武器の聖槍「バイデント」の片方だけを所持している。もう片方は誰か女の人にあげたらしい。また、9人のパートナーたちがいるというがいつも1人だけ足りない。

 好きな物は「女性全般」。苦手な物は「猫」。


〇ココア・C・レイト

年齢:29歳

性別:女

スキル「勇者のスキル」

12人の勇者の内の1人にして、6番目の勇者。

勇者として、「武器万能」が優れている。通称「薔薇の勇者」で、一人称は「私」。

 トトマにとっては心優しいお姉さんのような存在でり、彼が魔階島に来た時から何かとお世話になっている女性。少し赤みがかった長髪に端正な顔立ちという見た目の美しさとは裏腹に、ダンジョンにおいては多彩な武器を振り回して戦う荒々しい姿が目撃されることも多々。しかも、「武器万能」の能力が秀でているので、彼女に扱えない武器は存在しない。

 ちなみに、魔階島観光協会発行の『マカコレ』においてたまにモデル業もやっているらしい。また、彼女は元々ホッポウの「十二宗家」の一つ「レイト家」の出身であり、本来は自分がその家督を継ぐはずであったが、「勇者のスキル」を授かったがために家督を弟に譲った。

 他にも、彼女のパートナーたちは全員元々「レイト家」に仕えてきた従者たちであり、それ以外のパートナーを入れるつもりは彼女にはない。

 好きな物は「武器コレクション」。苦手な物は「恋愛、恋話」。


〇シン

年齢:22歳

性別:男

スキル「勇者のスキル」

12人の勇者の内の1人にして、7番目の勇者。

勇者として、「限界突破」が優れている。通称「孤高の勇者」で、一人称は「俺」。

 ふらりとギルドに現れてはふらりと消える勇者で、誰とも契約をしていない。ダンジョン攻略だけに命を掛けており、四六時中ダンジョンの中にいる。強さだけを求め、強さだけに生きる獣のような性格をしており、基本的には自分よりも強いものにしか興味がない。それが理由でパートナーを持とうとはしないが、そもそも今の彼の戦闘能力と釣り合う挑戦者はごく僅かしかいない。

 元々は「アズマ」の生まれであるが、とある問題で両親がおらず「アズマ」にも行き場がなかったので魔階島へと赴いたのが始まり。「限界突破」によりレベルが上がるのが早い上に他者と比べると肉体に掛かるステータス補正が高いため、スキルを授かった時からほとんど負け知らずで生きてきた。だが、「アズマ」でもその名が有名だった「ムサシ・ミヤモト」に魔階島で出会い、彼に一騎打ちを挑戦したが一瞬にして殺されてしまった経験をもつ。なので、ダンジョンで腕を上げると共に、いつかもう一度ムサシと戦い今度こそ彼を打倒しようと燃えている。

 ちなみに無限の胃袋を持つらしく、いくらでも食べることができるとの噂。

 好きな物は「食う、寝る」。苦手な物は「退屈」。


〇ホイップ・F・クリーム

年齢:20歳

性別:女

スキル「勇者のスキル」

12人の勇者の内の1人にして、8番目の勇者。

勇者として、「瘴気遮断」が優れている。通称「偶像の勇者」で、一人称は「私」。

 ダンジョン内にいるよりもダンジョン外で専ら活躍する、一風変わった勇者。

 月に一回ギルドの大広間にて公開ライブを開催するほどの人気のある、歌って踊れる勇者でもある。最近では6番目の勇者同様、魔階島観光協会発行の『マカコレ』にてモデル業もやっている。だが、その可愛らしい容姿とは裏腹に逞しい根性をしており、仕事に繋がることは何事にも貪欲に挑戦している。ちなみに、ホッポウの「十二宗家」の一つ「クリーム」家の長女であるがそれは秘密にしている。

 好きな物は「応援してくれる人(それと、お金)」。苦手な物は「優しい人、無垢な人」。

「彼女の姿を見て、彼女の歌を聞くと活力がもらえます!」(挑戦者 男性 33歳)

「私はダンジョンよりも彼女に会いに魔階島に来ました!」(挑戦者 男性 19歳)

「最近では雑誌にも載るようになりましたし、彼女はまだまだ進化しますよ」(挑戦者 男性 43歳)


〇ブラック・ジャクソン

年齢:19歳

性別:男

スキル「勇者のスキル」

12人の勇者の内の1人にして、9番目の勇者。

勇者として、「健康身体」が優れている。通称「薬師の勇者」で、一人称は「僕」。

 眼鏡をかけた温厚な性格の勇者。彼はお金のためではなく、医学のためにダンジョン攻略を行っており、ダンジョン内に生える貴重な植物や生息する生物から病気に効く薬を作っては、困っている挑戦者に分け与えてもいる。また、魔階島では3人のパートナーたちと彼の幼馴染と共に孤児院を経営している。彼自身も元々はこの孤児院の育ちであり、彼は生まれてすぐに魔階島で捨てられて孤児になり、今亡きこの孤児院の設立者に拾われて育った。その設立者が亡くなった後も、彼は孤児院で育った者たちと一緒に未だに増え続ける孤児たちの面倒を見ている。

 ちなみに、彼のパートナーたちしか知らないことではあるが、強敵との戦闘において彼は人が変わったかのように戦うという。

 好きな物は「家族(彼のパートナーや孤児たち)」。苦手な物は「鼠」。


〇名前不明

年齢:?歳

性別:?

スキル「勇者のスキル」

12人の勇者の内の1人にして、10番目の勇者。

勇者として、「万人力」が優れている。通称「鋼鉄の勇者」

 名前、年齢、性別、レベル共に何もかも不明な勇者。

 全身を分厚い黒い鎧で覆っており、他人に話しかけられても無視して通り過ぎる寡黙な勇者。実際に勇者かどうかすら怪しまれているが、単身で番人の間に入っていく姿の目撃もあり、おそらく勇者であることに間違いはない。見た目はいかにも屈強そうであり、普通の挑戦者であれば両手でも持てるかどうかと思われるほどの巨大な盾と剣を背負っている。

 試しに何名かの挑戦者が「鋼鉄の勇者」の正体を暴こうとダンジョンから出た勇者を追いかけたが、全身鎧なのに物凄く早歩きな上に、宿に一旦入られるとその姿を見失ってしまうらしい。

 好きな物も嫌いな物も不明。


〇ロイス・アルバーン

年齢:18歳

性別:男

スキル「勇者のスキル」

12人の勇者の内の1人にして、11番目の勇者。

勇者として、「魔邪撃滅」が優れている。通称「王国の勇者」で、一人称は「私」。

 魔階島にある王宮生まれで、初代勇者クロスフォードの血を引き継ぐ、勇者の中の勇者。王宮で揃えた凄腕の挑戦者たちをパートナーとして連れてダンジョンを攻略しており、若いながらもダンジョン攻略の最前線に立つ天才ぶりを見せている。

 少し背は低いものの、金髪で蒼い瞳の容姿端麗で女性のような美しさをも持ち、正義感に溢れ、性格もとても温厚で優しい。トトマとは年が近いだけあって、ロイスはいつも彼に仲良く接してくれ、彼のことを一親友として、そして一勇者として認めている。だが、そのことがトトマにとって苦痛になっていることをロイスは知らない。

 好きな物は「お風呂」。苦手な物は「嘘(人が好過ぎるのか他人の嘘を見抜けないから)」。


〇クロスフォード・アルバーン

年齢:故人

性別:男

レベル99(噂)

スキル「勇者のスキル」

 人類史上最初にして最強の勇者。

 ユウダイナ大陸の半分を占領したモンスターの軍団をたった9人の仲間と共に撃退し、多くの人間を救った。そしてその後、魔階島に逃げ込んだ魔王を打倒して世界に平和を取り戻すと、魔階島に建てた城の王となった。その時の名は“英雄王”であり、彼と彼の9人の仲間“九英雄”を称えた彫刻が今も魔階島のギルドにて飾られており、その場に集まる挑戦者たちを今もそこで見守っている。


〇ロゼ・フェデーロ

年齢:41歳

性別:男

スキル「執事のスキル」

 トトマたちが利用している宿「オール・メーン」の店主。

 挑戦者顔負けの肉体を持ち、体は男、心は乙女。「執事のスキル」を持つ彼は数年前から魔階島にて挑戦者向けの宿を経営している。宿経営以外にも挑戦者向けのマッサージなども提供していて、意外と女性受けも良い。

 魔階島で行く当てのなかったトトマを快く受け入れ、宿を紹介した人物であり、今では彼(パートナーを含む)の代わりに掃除、炊事、洗濯などなどを熟し、彼の挑戦者としての成長を陰ながら見守っている。


〇ヒカリ・テッペン

年齢:45

性別:男

スキル「造形のスキル」

 武器防具屋「トンカチ」の店長にて鍛冶屋。ぴかりと頭の光る頑固な男。

 名前を呼ばれるのが嫌いで利用者には「親方」と呼ばせている。見た目は少し怖いが、ダンジョンに入る挑戦者に少しでも良い物を作ろうと努力し、お金が足りない挑戦者には負けてあげる心優しい店長でもある。かつては「鬼面の勇者」と共にダンジョンへと挑んでいたそうだが、今は武器防具製作業に勤しんでいる。


〇ドリとドラ

年齢:不明だが15歳以上

性別:ドリが男、ドラが女

 道具屋「ドリ&ドラ」を経営する双子。

 顔はほぼ同じなのでどちらがドリでどちらがドラなのかは容易に判別できない。二人とも何かしらの動物の色違いの着ぐるみを着ており、1週間ごとにその色を変えるらしい。利用客は色の違いで二人を区別するが、二人が入れ替わっていたとしても気が付かないだろう。

 また、何故か二人同時に話すので余計にどちらがどちらなのかが分からない。


〇謎の少女

年齢:不明だが15歳未満

性別:女

スキルなし?

 ある日、魔階島でトトマが出会った愛らしい少女。お父さんと魔階島に来たと語っていたが、よくその素性が分かっていない。ことあるごとにトトマの前に姿を見せるが、その時は決まってトトマが一人の時のみである。


〇インディ・ジョブズ

年齢:39歳

性別:男

スキル「執筆のスキル」

 ダンジョンをこよなく愛し、ダンジョンを探求する学者にして挑戦者。

 彼の著『ダンジョンの歩き方』は数多くの挑戦者たちの役に立っている。専門は生物学であるが、今はダンジョンのモンスターばかりを研究している。そのことで助手にはいつも怒られているが、それでも止められないし、止まらない。昔はとある旧友と二人でダンジョンを駆け巡っていたが、現在はその彼とは別れて助手と二人で魔階島で暮らしている。ちなみに、魔階島に無駄に広い屋敷を持っている。


〇ルイス・M・ブラン

年齢:40歳

性別:男

スキル「執事のスキル」

 「十二宗家」の一つ「ブラン家」の現当主であり、世界的に有名なブランド「ルイ・ヴィトン」の仕立て屋。彼の能力である「縫合」と自分の領地で作られた製糸、魔階島で採れる特殊な素材を掛け合わせることで様々な特殊効果のある服を生み出すことに成功した。彼の作る服はダンジョン攻略においても有効な物も多く、多くの挑戦者たちが欲しているがどれもかなりの値がする。しかも、彼自身のオーダーメイドともなるとその性能は折り紙つきであるが莫大な費用が掛かる上に、彼自身が認めないとそもそも作ってもらうことができない。なので、彼自身が手掛けた最高の装備を着用してダンジョンへと挑んでいるのはごくわずかな勇者とガーディアンズの「白金帯」ぐらいである。


〇カキコマリ・カキコ

年齢:23歳

性別:女

スキル「執筆のスキル」

 魔階島観光協会の発行する『まかいじま』や『マカコレ』などのライター。

 魔階島と勇者をこよなく愛する女性。しがないライターであったが、彼女が企画した「魔階島 女性挑戦者特集」がヒットして一躍有名人に。魔階島の至る所に出現するので3つ子の疑惑があるが本人は否定。今では魔階島で行われる多くのイベントに顔を出すちょい有名人となりつつある。

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