World a king~異世界転生譚~

抹茶

神話



 ある所に、1人の男が居た。何も無い世界で、ただ1人。最初は、何の意識も無い、人形のようにただ立っているだけだった。

 けれど、次第に。


100年


200年


1万年


100万年


 数千の億を数えた頃、その男には1つの神秘が宿った。〝命〟が芽生えた。

 その頃には、何も無かった世界には少しずつ草木が生え、土が生まれ、水が溢れ、海へと至り、空気が生まれ始めていた。

 男は、何も考えることなく、ただその中で自由に暮らした。何も考えず、何をしているのかも理解していない。


 ただ、生きるために何かを行い、時間が経っていった。


1億


10億


100億


 数百の億を繰り返した頃、男にさらなる神秘が宿った。〝意識〟が生まれた。

 それと同時期に、世界中に生命が少しずつ生まれてきた。ただの偶然が蓄積されて現れた、未知の生物。

 しかし彼等は懸命に進化を繰り返し、男が〝思考〟を持つ頃には立派な動物へと至っていた。



 それからの、長い年月。新たなる人間が生まれ、男と関わり、そうしてだんだんと人間としての機能ができ、世界中に大陸が生まれ――。


――男は、神へと至った。


 それこそが、物語の始まりにして、全ての発端。歴史が生まれ、そして刻まれていく原点。

 神は創った。世界を、生命を、文明を、意識を、性格を、力を。何よりも、世界の〝システム〟を創り上げた。


 そしてある時、新たなる神の1柱が言った。


「運命なんて存在しない」


 数兆のときを過ごし、全ての世界を視てきた神は答えた。遥かなる意志と、強き信念を宿して。


「俺が証明する」


 そして、神は降り立った。下界へと。科学の進化する、地球へと。

 全ての記憶を封印して。神々の掟に従い、何1つとして持たず。






――そして、死んだ。


―――物語は、そこから始まる。何もかもを巡る旅へ。



――運命を証明し、【幸せ】を見つけるために。

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