【10】こんなときに言わないで。



 身体が重ねられる。ギュウッと抱きしめられると、不思議と安堵した。心地がいい。

 首にキスをされて胸を揉まれる。頭がぼうっとしてきて、完全に身を任せていた。こういう行為のときに私が何をすればいいのかわからなかったというのもあるのだけれど、ロータルは満足しているように感じられたので、余計なことはしないように意識した。

 それに――これだけ優しく接してくれるのなら、ハジメテをあげても後悔しない気がしていたのだ。


 委ねてしまっても、いいよね?


 破瓜の瞬間が迫っている予感があって、私は身構えた。そろそろよさそうだと、ロータルが準備をしているのを察してしまったのだ。

 汗で肌にくっついた私の髪を横に払いながら、ロータルは改めて私を見下ろした。彼は私を求める雄の顔をしている。残っている理性で本能をなんとか抑えているような、そんな表情。


 いよいよ、挿れてもいいかって聞かれるのかな……拒否しても挿れられちゃう気もするけど。最後までするって宣言していたし。


 決めているのだったら聞く必要はあるのだろうか、などととりとめなく考えながらロータルの唇が動くのを私は待った。


「――可愛い、エルヴィーラ。俺の妻になってくれ」

「こ、こんなときに言わないで」


 予期していなかった言葉に、私は反射的にツッコミを入れてしまった。


 ……え、今のってプロポーズ?


 返事を後回しにしてよかったのだろうか。混乱している私に、ロータルは少し消沈した顔をしたが、小さな息を吐き出して苦笑した。


「だったら、終わったあとにもう一度求婚する」

「順番……」

「そう思ったから、告白したんだが」

「……まだ、考えさせて」

「わかった――挿れるぞ」


 もう、後戻りはできない。できないんだ。


「優しくしてくださいね」

「挿れたら理性が飛ぶかもしれん。善処はする」


 初めては痛いのだから、文句は言わないつもりだ。ここまで優しく触れてくれたことに感謝しよう。


「ロータル……」

「エルヴィーラ、愛してる」


 やがて下腹部に熱と痛みが増していく。


 これが、破瓜の痛みか……


 あまりの刺激に意識が飛びそうになるけれど、彼を最後まで受け入れたくて必死に繋ぎ止める。どんなに苦しくても、痛みで涙が出てしまっても、ロータルが私をどう扱ってくれるのかを見届けねば。

 私の中に精を放つまで、ロータルは私をちゃんと見つめて労ってくれた。まだまだ痛みが強くて気持ちがいいとは思えなかったけれど、ロータルの優しさは伝わってきて幸福感を得られた。


 こんなふうに気遣ってもらえるとは思わなかった……


 互いの息が荒い。汗ばんだ肌が少し離れると、ロータルが私の顔を覗き込んだ。


「――エルヴィーラ。愛してる。結婚してくれ」

「はい……でも、ちゃんと、両親に話をしてから……」

「そうだな」


 疲れが出てきたのか、強烈な睡魔に襲われる。もっと話をしたかったけれど、私は意識を手放した。

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