サニディンの詩集

サニディン

或る五月に

いつの間にか、雨は上がっていたが、

僕らは傘を差したまま、森の中、静かに語らう。

緩やかな足取りで。肩がふれあいそうなほどに寄り添い合って。

「幸福だね」

僕が言うと、君は口の端を上げてそれに応える。

いつも消極的な君らしいリアクション。

僕にしか伝わらない、確かな好意。

僕は我慢できず、君の髪を撫ぜる。

君は目をつぶって、されるがままでいる。

「幸福だ」

もう一度言うと、君はまた微笑んだ。

穏やかで爽やかな風が、森に吹く。

風になびいて、木々が歌い始める。

僕の心にも、君という名のメロディーが。

君の心には、果たしてどうだろうか。

僕の疑問を見透かしたかのように、君は僕の目を見つめて、かすかに頷いた。


(2018年12月7日 執筆)

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