第15話 スキルポイント
「おおおお!!猫まっしぐら殿!!よくぞ戻られた!!」
コロネの頼みで魔法で作った城壁にいくつか出入口を作成してからエルフの砦に戻ると……
なぜかクランベールが大歓迎で出迎えてくれた。
うん。どうしたこのおっさん。
ちょっと前までは私に敵意むきだしのはずだったのだが。
「貴公のおかげでカストリーナの砦は守られた!礼を言わせてもらおう!!
感謝の印に飲み明かそうではないか」
と、クランベールに手を握られブンブンと振られる。
おおう熱烈歓迎すぎる。なんだこの手のひら返し。
『クランベールは一度強者と認めると、懐く傾向があります』
態度の違いにドン引きしているとコロネがパーティーチャットで私に囁いてくる。
うん。なるほど。
それはそれでうっとおしい。
わりとアニメやゲームでこういうキャラいるけど、実際遭遇すると物凄く面倒な人だな。
「クランベールいい加減にしなさい。猫様は度重なる戦闘でお疲れです。
今日は私の館で御休みになっていただきます」
コロネがいつもの5割増しくらい真面目な表情と口調でクランベールを窘める。
「なんと!?すでに歓迎の酒盛りも準備してあるのですぞ!?」
「猫様はそういった場は好みません。
まさか砦を救ってくださった猫様に出席を強要するつもりですか?」
コロネにギロリと睨まれて、クランベールが小さくなった。
流石大賢者の肩書きは伊達ではないようだ。
ってかエルフの地位の順列ってよくわからんけど。
……にしても、コロネってエルフの騎士団の前ではすごく真面目というかまともというか。
私がコロネを真面目キャラと認識したのも出会いが、騎士団と一緒だったからだよな。
なんか騎士団と離れると途端変態化するけど。
クランベールの後ろではあきらかにエルフ達が羨望の眼差しを向けている。
うん。ヤバイ。マジヤバイ。この雰囲気耐えられない!?
あれだよ!?読書感想文が何故か全校生徒代表に選ばれてしまって、壇上で読み上げることになった時と似た感覚だよ!
ガッチガッチでカミまくった嫌な思い出しか蘇らないのですけれど!?
「うん。流石に今日は疲れた。休みたい」
私が言えば、クランベールや他のエルフ達も諦めたようで、素直に道を開けてくれる。
にしても、ありがとうございますだの、助かりましただの歩くたびに声をかけられてものすごく恥ずかしい。
砦の中にあるコロネの家…というか屋敷に着く頃には別の意味でぐったりしてしまった。
「うおー恥ずかしいぃ。死ぬぅ」
「猫様は賞賛されるに値する事をしているのですから、照れる事もないかと思われます。
もう少し誇るべきだと思いますが」
今にも死にそうにソファにもたれかかった私を見てコロネ言うが
「ふ。馬鹿にしないでほしい。
基本引きこもり気味のゲーヲタに不釣合いなほどの賞賛の嵐など耐えられるわけがない!」
私が胸を張って反論する。
「ネコ それ 胸を ハッテ 言うこと チガウ と 思う」
と、リリちゃん。
「流石猫様!私たちとは誇るべきことすら基準が違うのですね!?」
と、よくわからない事に感動しだすコロネ。
うん。もう疲れた。コロネのボケに突っ込む気力もない。このまま私は寝ようと思う。
こうして私の異世界生活4日目が終わるのだった。
△▲△
次の日。
コロネの屋敷で用意された部屋のベットで目を覚ました時にはすっかり日も暮れていた。
わりと豪華な洋館を思わせる作りの部屋で私はリリとベットで寝ていたらしい。
どうやらかなり眠りこけてしまったらしく、私の隣ではリリちゃんが足をバタバタさせながら暇そうに絵本を読んでいた。
「あ、ネコ おはよう!」
大分カタコト言葉が治ったリリちゃんがにっこり笑いながら言う。
ヤダ。可愛いマジ天使。
しかしなぜ、私と一緒に寝ていたのかは謎である。
「あー、なんだか寝すぎた。
いろいろやりたい事があったのにもう日が暮れてるとか」
上半身をおこしながら言う。
「うん。ネコ疲れてた。三日寝てた」
「え!?自分三日も寝てたのか!?」
「うん コロネ 疲れてる 寝かせてあげよう 言ってた!
レベル あがりすぎた 反動!」
と、リリちゃんが何故かえっへんと胸を張る。
うん。理由を説明できたのが嬉しかったのだろう。
どうやら見かけ通り精神年齢もお子様らしい。
って、三日とか異世界生活の半分は寝てすごすとか。
「えー、スキルポイントでスキル取得したり、やりたいことあったのに寝すぎたとか損した気分だな」
そう、カエサルを倒した時と、モンスターの大群を倒した時にレベルが上がったおかげで、今レベルは778だ。
レベル200から一気にレベル778にレベルアップである。
レベルが上がればスキルポイントも手に入るばけだから、そりゃもうがっぽりスキルポイントが手に入ったわけで、諦めていたスキルがとり放題なのは間違いない。
私がニヤついていると、リリちゃんが小首をかしげて
「スキルポイント?」
と、尋ねてくる。
「そう。スキルってあるだろ?
新しいスキルを取得するにはスキルポイントが必要なんだ。
レベルが上がると、スキルポイントが増えるから、取得できるスキルが増える」
「じゃあ。リリもスキルとれる?」
「え?たぶん取得出来るんじゃないか?」
「リリ、よくわからない スキル ない」
「レベル上がった時にスキル振ったりしなかったのか?」
「リリ 魔素あれば 魔物食べなくても平気
山 カエサルいた いっぱい魔素あった
リリ それ食べてた だから
魔物殺す 必要なかった
レベルあがったこと ない」
「ああ、なるほど。じゃあ今レベル上がったはずだからちょっとやってみるか?」
私がリリちゃんのレベルを鑑定すれば400から525へとレベルはちゃんと上がってる。
「でも ネコみたい ステータス画面 リリ 開けない どうやる?」
リリに聞かれて、私は目を泳がせた。
うん、確かに。どうやるんだ?
「言われてみれば確かにそうだな。
じゃあ、コロネにでも聞いてくるか」
言って、私が立ち上がれば、
「コロネ 出かけてる。
結界 破れた調査。
エルディアの森 魔素濃度あがって魔物強くなった。
退治してくる 言ってた」
あー。なるほど。地味に仕事熱心だなコロネは。
私と一緒の時はエルフの国は関係ないとかいいつつ、いざと言うときは働いてしまうのはなんだかんだで愛国心は高いのかもしれない。
「にしても、リリって文字読めたのか?」
絵本を読んでいるリリに聞けば
「リリ、人間の文字わからない でも 絵綺麗 見てる 楽しい。
コロネがいっぱい絵本 もってきて くれた」
と、本を私に広げて見せてくれる。うん。確かに綺麗な絵だ。
子供向けなのだろうか、全部ひらがなで書かれている。
「じゃあ読んであげようか?」
私が言うとリリは物凄く嬉しそうに目を輝かせ、くい気味に聞いてくる
「いいの!?」
「勿論。どれから読もうか?」
私が言うとリリは嬉しそうに大きいドラゴンの描いてある絵本を差し出すのだった。
△▲△
エルフの絵本は、私が読んでもなかなか面白かった。
なんていうか、気が長い話が多いというかなんというか。
仲良くなった人間の孫の代に孫に恩返しされるとか、ドラゴンと500年間仲良く暮らしましたとか。
それから300年後とか普通にあるし。
基本ノンビリ、ほのぼの系が多い。
リリちゃんがあれもこれもと絵本をもってきては、読んであげていたのだが、気が付けばいつの間にかスヤスヤと寝息をたてて寝てしまっている。
よく見れば外も暗くなりはじめていた。
リリちゃんも寝てしまったしスキルポイントでも振り分けておこうかな。
そう、レベル200の時は【瞬間移動】の必要スキルポイントがやたら高かったせいで、取得を諦めていたスキルがいっぱいあるんだよね。
憧れの【身体強化】とか【並行思念】とか。
ああ、今よりもっと強くなれるとか心ときめくものがあるよね!
「僕の考えたさいきょーのせんし」に近づけるのだから!
ゲーマーたるもの最強を求めるのはもはや宿命だと思う!
こうして私の至福の時間が始まるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。