第9話 守護天使ザンダグロム
「な、何者だっ!!」
プレイヤーセムスの放った一撃を、私が魔法防御の魔法で弾き、領主の前に陣取る。
予想外の事にプレイヤーたちが驚きの声をあげた。
ちなみに瞬間移動時にコロネも首根っこもつかんで連れてきたので一緒だ。
離れた場所にいるとかえって危険の可能性もあるし。
うん。なんとなく領主が殺されると思ったら身体が勝手に動いてしまったのは仕方ない。
もう彼らと戦う覚悟を決めるべきだろう。
コロネと私が領主の前で構えれば。
「あ、あなたは……」
領主も情けない格好で私の出現に驚きの声をあげる。
「えーっと。通りすが……」
私が言葉を選んで言おうとすれば
「セムス様!あれは恐らく領主が雇ったプレイヤーかと!」
「まさかのために備えておいたのでしょう!こうなることを予見していたのです!
なんという卑劣極まりない行為!」
と、赤毛美女とメガネメイドが叫ぶ。
うん、やべぇ、この二人マジ煽ることしかしない。
コロネの言うとおり、もうこの二人は領主を殺すことしか頭にないのだろう。
事の真偽など関係なく、話をそっち方面に持っていく気だ。
「ちょっと待ってくれ話をとりあえず……」
「五月蝿いっ!!NPCに雇われたプレイヤーの話など誰が聞くか!」
プレイヤーセムスはギリッと歯を噛み締めると、私を睨む。
「領主よ!!お前は俺を怒らせた!!プレイヤーなら俺を倒せると思ったのだろうが俺には奥の手があるっ!!」
と、こちらをビシィっと指さしてきた。
って何であんな煽りに簡単に乗るかな!?
ったく、こいつ人の話恐ろしいほど聞かない!?
すごいメンドクサイ!!!
操られたりでもしてるのだろうか。
もうあの人自分の世界はいちゃってるよ!きっと私が何言っても無駄だよ!?
やばい。リアルで遭遇したくないタイプだよ。マジで!
私が違った意味で恐怖に
プレイヤーが
「いでよ!!守護天使ザンダグロム!!!」
叫べば、
「イエス。マスター」
と、凛とした声とともに、それは扉を開けて普通に現れた。
ロボット型、守護天使ザンダグロム――。
……うん。魔力察知で扉の前にいるのは知っていた。
だが、このロボット、ただこの演出のためだけにずっと扉の前で待ってたのだろうか。
私が来なかったらただ棒立ちしてただけで終わったのか。
それはそれでちょっと間抜けな気もするのだけれど……。
こうして甲冑を着込んだかのような人間型ロボットの守護天使が私と対峙するのだった。
▲△▲
――守護天使――
グラニクルオンラインにおいては、プレイヤーが仲間を集めて結成するギルドのギルドマスターだけが持てる、護衛型NPCだ。
一応フィールドに連れ歩く事もでき、戦闘にも参加してくれる。
ただ、攻撃が単調で、AIが頭がよろしくないためか、あまり戦闘に連れ歩く人はなく、ほとんどギルドで持っているとカッコイイから!という理由だけで持っている人も多い、マスコット的存在だ。
マスターと同レベルになるため、この守護天使もレベルは200。
普段はギルドハウスに待機しているはずだ。
私も友だちと二人でギルドを作っており、ギルドマスターなため守護天使を3体所持しているのだが、私もギルドハウスに行けば連れてこれるのだろうか?
「猫様お気を付けください。
守護天使は戦い慣れていないプレイヤーとは違い、戦い慣れしております」
コロネが私の隣で身構えて忠告してくる。
「ああ、そうみたいだな」
と、私も守護天使の構えを見て、気を引き締めた。
レベル10と12の雑魚娘達はこの際放っておいていいだろう。
問題はレベル200の守護天使とプレイヤーだ。
プレイヤーの構えをみれば、とても戦い慣れしてるとは思えない。
だが、戦い慣れしていそうな守護天使とタッグを組まれれば面倒な事このうえない。
「行け!!ザンダグロム!!Wマシンガン連射だ!!」
プレイヤーの言葉と同時、ロボット守護天使の両腕が銃へと変化した。
私は慌てて、コロネを背後に放り投げ――その瞬間。
ダダダダダダダダダ!!!
と、守護天使が銃を乱射してきた。
が、あらかじめ何をするか分かっているのだから対応は簡単だ。
だって口で指示だしちゃってるし。
プレイヤー相手に一発一発の攻撃力が軽い機関銃を指示とか戦いの素人もいいとこだ。
機関銃など魔法詠唱や技などの邪魔くらいしかできない。
バリアを貼られたら一発でおしまいだ。
私はアイテムボックス取り出していた執行士の鎌をクルクル風車のように廻してすべての弾を弾き飛ばす!
「なっ!?」
驚きの声をあげるプレイヤー連中。
ふふふふふ。
無理もない。
なんとなくアニメで見かけて、やべぇ中二病燃える!
これは是非ゲームの中でやれるようにならないと!
と、それだけの理由で特訓し、身に付けた無駄な技術なのだ。
そう、本来ならこんなものバリアで防げるのだが、そこはあれだよ!ロマンだよ!
……まぁ、保険のために一応私とコロネと領主を囲むようにこっそりバリアもはってるけど。
身に付けた無駄な技術は無駄に披露したくなるものなのだ!
見かけのかっこよさは重要!ファンタジーにおいてかっこよさは正義!
と、ご満悦になる私。
に、してもやっぱりこのプレイヤー戦いはPVPはど素人だ。
プレイヤー同士の対決をしたことがないのだろう。
同時連射など指示すれば、同時に弾切れをおこしチャージ時間が必要になる。
チャージをしている間はガンナーは縛りでチャージ中の手は使えない。
つまるところ無防備になるのだ。
その隙を狙って背後に周り石化すれば、いい。
背後からの石化は同レベル帯でもほぼ100%石化してしまうのだから。
「きゃぁ!?」
私の弾いた弾が、赤毛ハーレム要因の女子の腕をカスめた。
………。あ。やばい。
弾いた弾丸がどうなるかなんて全く考えてなかった!
ゲームだと勝手にそのまま消えるし!
予想外に弾いた弾丸が、プレイヤー一同に襲い掛かり、
「やめろっ!!ザンダグロム!!アムカにあたる!!」
プレイヤーが慌てて命令する。途端、守護天使が銃の乱射を止めた。
もちろんその隙を私が見逃すわけもなく、瞬間移動で背後にまわると
『石化!!』
と、あっけなくスキルで守護天使を石化するのだった。
▲△▲
「ありがとうございます。助かりました」
領主が私に情けない顔で頭を下げてくる。
「いえ、何ていうか災難でしたね」
と、私。
結局あのあと。あっけなくプレイヤーとハーレム1号2号をコロネと捕まえ、今は縄でぐるぐる巻にしてある。
プレイヤー君と守護天使においては、何かされると困るので石化してとっととアイテムボックスにしまってしまった。
ちなみに話し合い――というのはまったく考えなかった。
いや、だって面倒くさい。嫌だよ、ああいう話聞かないタイプ。
きっと話したら暗くなりようなブラック企業話を延々と聞かされると思っただけで恐ろしい。
とりあえず元の世界に戻る方法がわかったら、一緒に日本に強制送還してやろう。
石化している間は時間は止まっているはずだから、歳をとるってこともないし。
こっちをマジに殺しにきたんだからそれくらいされても文句なんて言えないはずだ。
「問題は――彼女達ですね」
コロネが言って、ハーレム1号、2号を見る。
そう、何か知ってるとしたらむしろこっちの二人だ。
プレイヤーを操っていた感満載だったし。
「ああ、何でプレイヤーを操って、領主を殺そうとしたか吐いてもらおうか?
お前たちも女神とやらの使いなのか?」
私がしゃがみこんで聞けば
「まさか!!お聞きくださいプレイヤー様!
私たちは無理矢理彼に付き従わされていたのです!」
と、メガネ女子。
「そうよ!レベル200の相手に私たちが敵うわけない!
従う他なかったの!助けてくれてありがとう!」
と、キツ目の赤毛女子が目をうるうるしながらこちらを見る。
……路線変更で私に鞍替えする気なのだろうか。
私の外見は男なので、泣き落しすれば落とせると勘違いされたらしい。
嫌に胸を強調したような座り方でこちらに懇願してくる。
くっ!!胸を見せれば思い通りになるなんて大間違いだ!!
中身女だから、逆効果でしかない。
胸でかい羨ましいとか、全然思ってない!
うん。思っていない……思っていない……。
呪文のように唱えると私はそのままチラリとコロネを見る。
私の視線にコロネがこくりと頷いて。
「無理矢理だったかどうかは、嘘を見分ける魔道具で聞けばわかります。
その言葉が嘘偽りないのなら魔道具を付けられますよね?」
と、頭にはめる輪っかのような魔道具を取り出した。
途端、二人の顔が青ざめる。
瞬間。
私は殺気を感じてコロネと領主を抱えて後方に飛び跳ねた。
刹那。
ザシュリ!!!
巨大な手のようなものが――ハーレム女性二人を握り潰してしまうのだった。
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