第13話


「・・・あいつの事だから分かっていると思うが、登録仕立ての好青年な

 戦闘童貞や蝶よ華よと育てられた修羅場処女な冒険者に

 ゴブリン討伐はくれぐれも受けさせるなよ?

 気軽に引き受けられるほど、ゴブリンは優しくもねぇし雑魚な

 魔物でもねぇからな?

 多少、剣の扱いに慣れているとは言っても命懸けの戦いだ」

 ナナシは真剣な表情を浮かべつつ、仲裁しているコルカスを

 眺めながら 言う。

 強面のスキンヘッドな冒険者に仲裁され、何処か怯えながらも

 少年と2人組の男女は、ようやくコルカスの言うことを聞き入れて

 テーブル席に座ると水をがぶ飲みするようにに飲んでいる。


「――例えばどんな依頼を駆け出し冒険者に

 オススメしたらいいの?」

『ラウルフ』種族と人間種族の混血女性冒険者が、 ナナシに

 質問してくる。

「――下水道関連の大ネズミ退治や黒蟲退治、そんな糞地味な

 依頼をススめるくらいなら、『異世界』でいう・・・・

 あー、ドラゴン? ワイバーン? そんな大物討伐を片っ端から押し掛けろ

 新たなる英雄が爆誕するぜ?」

 少し芝居がかったように右手で顎の無精髭を触りながら、ナナシは

 真剣な表情を浮かべて言う


「それらは全部『金級』以上の冒険者しか請け負えない『討伐依頼』」

『ラウルフ』種族と人間種族の混血女性冒険者が、かなり呆れた様な

 表情で言う

 ナナシは陽気に笑うと 顔を左右に振った後、やれやれといった

 表情を浮かべた

「随分と間が空いたが、久しぶりにココの様子を見た限りまだ

『金級』以上の冒険者は不足したままじゃね?

 そこそこは戦力になる修羅場慣れな『鉄』級冒険者姿もチラホラ

 不足しているのは、 俺でも分かる」

 ナナシは白い歯を見せつつ、不敵に笑う。

「――よくそこまで見抜けているわね」

『ラウルフ』種族と人間種族の混血女性冒険者が、ナナシを見て眼を細める。

 テーブル席で和気あいあいとした雰囲気を醸し出している冒険者達と、

 じゃれあう様な少年と青年の冒険者達、それに気づかずに何事もないように静かに歓談している多くのテーブルについている冒険者達といった

 酒場な風景だが、ナナシから見れば何かと気になる点が

 眼に付いていた

「ゴンザレスも見抜いてるさ。

 ギルドに報告に来るまでに、幾つかの冒険者パーティやらを見たが、

 身に纏う装備も 何処か新しく統一感がねぇし

 身嗜みもこざっぱりしてる。

 それに掲示板の列にいるのは半分は、さしあたりこの辺境へ

 小遣い稼ぎに来た『鉄』級と冒険者登録を終えた戦闘童貞と戦闘処女の

『青銅』級冒険者達じゃねぇか」

 ナナシがそう言う

「ゴブリンしか討伐する気が無い癖に良く言うわね」

『ラウルフ』と人間種族の混血女性冒険者が呆れた様な口調で

 言いながらも、 不思議そうに首を傾げる

「ゴブリンしか討伐する気が無いではなく、『ゴブリンしか討伐できない』

 の間違いだ

 ココでは、俺達も『青銅』級冒険者と変わらないんだよ」

 ナナシがそう訂正する

「冒険者として華のある依頼ならば、そこの掲示板に沢山あるわよ?

 希少な素材集めとか未知の魔道具の入手、未踏破『ダンジョン』の探索、

 ドラゴンの鱗や牙など 武具に活用できるモノ等を探す危険なもの・・・」

『ラウルフ』と人間種族の混血女性冒険者が掲示板に視線を向けるなり、

 そう言う

「確かに華があるとは思うが、俺達がそう易々と受けられない『事情』を

 知っているだろ?

 本来なら一定期間に一定数の依頼をこなさなくてはならないが、俺達は

『特別事情』で免除されてる事もな・・・

 それと薬草関係採取に関してもなるべく、『青銅』級冒険者達には

 進めないでくれ」

 ナナシは喋っている途中で何かを思い出した様に、そう告げる

「内容によって判断が変わるけど」

『ラウルフ』 と人間種族の混血女性冒険者は、少し躊躇しながら応えた

「 『今回』もこっちには来れていない『オルテガ』が、『冒険者ギルド』からの

 仲介じゃなく『道具屋』や『薬剤師』から指名依頼で稼いでいるんだ

 聞いた所によると、『ポーション』の原料となる薬草の採取には

 それなり技術が必要らしく、駆け出し『青銅』級冒険者には、オチオチと

 任せられないんだとよ」

 ナナシは何か微妙とも言える表情を一瞬浮かべたのだが、すぐに

 元の表情に戻す

「少しの間、道具店や薬剤店で取り扱っていたポーションや

 マジックポーション類の値段が安くなっていたけど

 ・・・まさか、そういうことだったの?」

『ラウルフ』と人間種族の混血女性冒険者は、ナナシの話を聞いて

 納得した様な表情を浮かべた

「目立つほど値段が下がっていたのか?」

 今度はナナシが、少し驚いた様な表情を浮かべて尋ねる

「―――それに薄々気付いたのは、勘の鋭い俺やコルカスみたいな

『白金』級以上冒険者、この辺境地を活動拠点にしている

 ユニオン連合連中だ

 あと何人かの辺境近隣を流し歩いている『蒼玉』級冒険者も、な」

 そんな声が後ろから聞こえて、ナナシは軽く笑みをこぼしつつ

 ゆっくりと振り返った

 そこに立っていたのは、盗賊系の好をしたオールバックで無精髭を

 生やしたエルフ種族と人間種族の混血男性がいた


「元気そうだな ジーグルト」

 貌馴染みの冒険者だったのか、ナナシは気軽な口調で言う

「 お前達に取っては面倒かも知れない伝言を預かってるぞ?  

『冒険者ギルド』に貌を出したら、 ユニオン連合拠点に貌を見せろだとさ」

 ジーグルトと呼ばれた冒険者は、少し笑みを浮かべつつ

 ナナシへと近づいてくる

 彼の両手は剣で堅く出来たタコが出来ており、かなりの戦歴の

 ベテランである事は容易にうかがえた

「どのユニオン連合だ?

 この辺境を拠点とするユニオン連合は、6つあった筈だ。

 まあ、俺達が来れなかった間に拠点活動を替えていなければの

 話しだが?」

 ナナシは露骨に『面倒くせぇ』という表情を浮かべつつ、ジーグルトに尋ねる。

「 安心しろ。6つとも健在だ

 それぞれのユニオン連合の団長から直々にお前達へ伝言がある」

 ジーグルトはそう言って、軽く微笑むがその両目は鋭い。

 どうやら冗談ではないようだ。

「あいつらも俺達の『事情』を良く知っている癖に、俺達と貌合わせるたびに

『冒険者なら冒険しろ』だの、『お前らに本当の冒険者稼業というものを

 教えてやる』だのと、口喧しいんだ

 前の時にココへ来た時なんざ、挨拶も何もなくシレっと『 『飛竜の卵』の採取をするのに人手が足りない。手伝え』やら

『 お前ら暇そうだな? これかある『ダンジョン』の最下層まで協力して

 護衛しろ』だの、『南方の小国へとある要人を護送する任務がある。

 だが、依頼主の国が最近になって隣国が仕掛けた奇襲攻撃で混乱の渦中だ

 そこで、その小国へ護衛と支援に赴いてはくれないだろうか?』だの・・・

 まったくもって無茶だぜ」

 ナナシはそう愚痴をこぼすが、どこか楽しげである。


「この辺境地域でその6つのユニオン連合の事は、知っていると思うけど

 屈指の実力を誇っている所よ

 入りたいと望んで入れるような所でも無いし、実力がなければ

 すぐにでもお払い箱になるわ」

『ラウルフ』と人間種族の混血女性冒険者が、やや気おされつつ

 説明しナナシに眼を向ける

「実力と実績、人柄や社会的信用度を高い水準で満たしても加入審査を

 通過できるかどうかすら難しい

「そんなユニオン連合からの指名されたとなれば、かなりの

 信用と信頼を得たということだ

 ただでさえ、この辺境では知名度もあり人気なんだ。

 あんまり大声で不満は漏らさない方が身のためだぞ」

 ジーグルトは、ニヤニヤした笑みを浮かべる

「それぐらいの常識と知識は、ココに居れば否応なしに身に付いた

 どうせ、貌を出しても世間話か無茶な協力をさせる気だろ?」

 ナナシはそう愚痴をこぼしながら、頭をポリポリ掻く。

「協力したら、実績と実力、そして人柄と社会貢献度を満たせて昇格

 できるんじゃないかしら?」

 そんな様子のナナシを横目で見やりつつ、『ラウルフ』と人間種族の

 混血女性冒険者がナナシへと言う。

「面倒事は俺達の代理になっている、ゴンザレスに丸投げした方が

 無難だな

 冗談は抜きにして、アッチ側の『本業』が糞多忙でそう気軽に

 ココには来れないんだわ」

 ナナシが少し声を落として言うと、『事情』を知っている数少ない

 理解者達なのか、『ラウルフ』と人間種族の混血女性冒険者と

 ジーグルトは、少し真剣な 表情を浮かべる


「 頻繁にギルドにすら姿も顔も出せずにいる理由はソレか」

 ジーグルトがナナシに言うが、彼の表情は笑みが浮かんでいる

『ラウルフ』と人間種族の混血女性冒険者も少し興味深そうにナナシを見る

 ジーグルトは大きな勢力でもあるユニオン(連合)にも貌が利き、また

『冒険者ギルド』とパーティー間での高い政治能力を持っており、

 情報を扱う技術にも長けている

 それに関連して、ナナシ達の『事情』もそれなりに詳しく知っていた


「『本業』は、冒険者稼業よりも遥かにハードだぜ?

 ゴブリン狩りしている方が楽さ・・・あんま飲み過ぎるなよ」

 ナナシはニヤリと笑みながらそう告げると、口笛を吹きながら

 受付カウンターの方向へ向かって行く。



 ―――この『異世界』の主要機関の1つ『冒険者ギルド』登録料は無料で、

 年会費などは特に必要ではない。

 また登録には年齢制限も無ければ性別や種族指定も無いが、冒険者として

 登録していない者は素材や倒した魔物から極まれに落とす魔石などを商店など

 換金する事は基本的には出来ない

 登録をしていない者が、迷宮に潜る事は 基本的に禁止されてもいる

 昇格には『冒険者ギルド』で行われる『冒険者等級査定』を

 受けなければならない

 冒険者登録してスタートするのは『青銅』等級で、『鉄』 『金』 『白金』 

『金剛』『蒼玉』と実績を重ねていく事で上がっていく

『青銅』『鉄』等級冒険者は新米や駆け出しの部類に入り、 『金』 『白金』 等級

 冒険者は中堅冒険者に該当する

 最上位階級は『蒼玉』等級になるが、一握りの実力者しかいない

『蒼玉』等級は普通の冒険者が実績と実力が満たせても、まずなれない

 最高位の冒険者の事を指す。

 誰もが憧れ羨望する存在だが、生まれながらの特殊技能を持ちなおかつ

 判断力や身体能力がずば抜けて高い者しかなれない。

 そんな一握りの冒険者は、そのほとんどが貴族や王族、またはそれに準ずる

 血筋の者だ



 それは『冒険者ギルド』で清潔感溢れる薄緑色の制服をきっちりと

 着こなしている『冒険者ギルド職員』達にも言える事だ

 男女共にナナシ達の『現世界』で言う所、歌って踊れるアイドルやテレビや

 舞台で活躍している者達に引けをとらない様な美男美女の外見だ

 その中身が、まったくもって見劣りする様な者たちではないのだからどれ程

 優れた人材 であろうことは、想像に難くない

『異世界』の『冒険者ギルド』受付業務に携わる職員は、外見も貴重な

 資質とされている

 その事情が分かれば、外見も侮れない事は確実だ

 強いて欠点を言うならば、冷たい印象を齎すのは否めない所かも

 しれないが・・・

 一仕事を終えた冒険者達が報告や情報交換、仲間募集や依頼斡旋で立ち寄るのが

『冒険者ギルド』でもあるのだが、『ある出来事』以来冒険者の数と

『冒険者ギルド』受付業務に携わる職員の数が干減っており、一部の

 業務が停止している

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