第12話
ナナシが向かった先には、この地区で一際目立つ大きな石造りの
外壁の一部が風化した記念碑がある。
歴史を感じさせるというより古めかしいという印象の漂う建物だが、
それこそがこの街の『冒険者ギルド』だ
城塞都市地区全域に支部を構える同ギルドではあるが、大陸東部辺境一帯に及ぶ
大規模から察するに東部辺境各都市の『冒険者ギルド』を統括する
主要機関の1つだ
大きさは勿論だが、質までも高く『ギルドマスター』を含めて大勢 の
職員を抱えている
―――『ある出来事』以後、この辺境地域を拠点活動していた冒険者達と
同じくかなり人手不足気味ではあるが。
出入り口の上には、金属のプレートに剣と盾を象ったマークと共に
交差する2本の剣、竜が刻み込まれたギルドの旗印がある。
建造物の出入り口は両開きの押し戸となっていて、ナナシからすれば
それは古き良き西部劇の酒場や西部劇をオマージュした
テーマパークを彷彿とさせる情景に思える。
そこから屈強な冒険者集団や10代半ばといった容貌の
少年3人組など出てきている
ナナシは『現世界』で流行っている音楽曲を口笛で吹きながら、
躊躇もなく押し戸を開けてゆっくりとした足取りでギルドの
中に入る。
そこはロビーのような広々とした空間が、先刻まで居た区画と違って
静けさに包まれている
天井も高く、1階部分だけで10メートル以上あるだろう
活気が無いわけではなく、広い空間の周囲では冒険者達やギルド職員達が
静かに立ち話をしている光景があった。
左を見れば様々な表情をしている冒険者達の集団やパーティーが、
正面の奥には受付カウンターの窓口へ向かって押しかけ
『依頼』の達成報告をしているのが見受けられる
窓口は6つあり、それぞれに薄緑色の制服を着た女性ギルド職員や
男性ギルド職員らしき人達が何人もいて、20人近くの冒険者達の対応で
てんやわんやだ。
右には様々な『依頼』票が張り出されている巨大な掲示板が
幾つも設置されている。
奥の区画には木製のテーブル席などがいくつか設置されていて、酒場と
食堂が併設されているのが見える
テーブル席には冒険者や行商人の集団が、思い思いに酒杯や
料理などを楽しみながら談笑している
そこには人間種族の他に、ナナシの『世界』ではラノベ書籍などで
登場している幻想種族の姿もあった
圧倒的な知名度を誇る、全員美形で腰まで有る長い髪をしている
耳がやや長い『エルフ』種族
まるで人間の子供のような容姿をしている『ホビット』種族
髭面の酒飲みの『ドワーフ』種族
ドワーフと近縁の種族でもある小柄な『ノーム』種族
自然界と密接に関わりがある最も小さくて最も機敏な『フェアリー』種族
全身を毛で覆われた猫耳の獣人『フェルパー』種族や
二足歩行の犬の血を引く『ラウルフ』種族といった
ラノベやRPGゲームではお馴染み定番種族の他に、人間とドラゴンの混血の
『ドラゴネオ』種族などの、多種多様で年齢も性別も違う冒険者達が
思い思いに談笑してはそこかしこで掴み合いの喧嘩したりと
賑わいをみせて いた。
最初にその光景を見た時は、ナナシ達は唖然としたが今では
気にしない様にしてい
ナナシは受付に行こうとした時、木製のテーブル席で
2人組の冒険者が手をあげているのが見えた。
1人は腕毛がやたらと濃くフサフサしいスキンヘッドで、上半身裸で下は
手編み風のベージュ色の半ズボンを履いている男性冒険者だ
もう1人は女性でこちらは頭髪が派手な色に染まっていて、此方は
『ラウルフ』種族と人間種族の混血らしく人間離れした
八重歯は獣その物で、個性派とでも言える冒険者だ
ナナシには見覚えのある貌なのか、そのテーブルまで行くと何の
躊躇もなく近寄る
テーブルの上には飲み物が二つ置かれており、一つは
ナナシの好みではない甘ったるい果物酒だ
2人ともにこやかな笑顔を浮かべている所を見れば、親しい間からの
冒険者なのだろう。
「麦酒をあと三つ追加で」
上半身裸でスキンヘッドの男性冒険者が、何処か気怠そうな
雰囲気口調でナナシに言ってくる
「お客さん、飲み過ぎですぜ?
その前に俺は従業員じゃね~んだが」
ナナシはお道化るような口調で、上半身裸のスキンヘッドの
男性冒険者をからかうように笑う
「この呑んべぇは、金ならあるらしいから」
『ラウルフ』種族と人間種族の混血女性冒険者が、男性冒険者の事を
助け船を出すかのように言うと、スキンヘッドの男性は彼女の方を向いて
お道化るように笑いながら戯けて見せる。
「元気そうだな。コルカス
ギルドに貌を出す前にキャリンナ達と逢ったが、後方待機組だったのに
皿洗いの『雑務依頼』を受けたらしいじゃないか」
ナナシはその様な言葉を出す。
スキンヘッドのコルカスは、何処かばつが悪そうな感じで
愛想笑いを浮かべる
「待機期間が長かったから、呑んべぇは時間潰しに『雑用依頼』を
何回か、請け負ったわけよ」
それに言葉を引き継ぐようにして言うのは、ラウルフと人間種族の混血の
女性冒険者だ
口調から察するに2人は、かなり親しい間柄である事が分かる
「本当にお前も、外見は新人いびりが大好き系なのに中身は面倒見の
良い奴だよ」
ナナシが何処か呆れた様に言いつつも、笑みを絶やさずに 言う
それはナナシの自分に対する物なのか、2人にラウルフと人間種族の
混血女性冒険者の事を言っているのかは判らない。
コルカスがそれについて何か言おうとして、ふと何かに
気付いたかのように辺りを見回して視線を一点に止める
一瞬だけに真顔になると、席から立ち上がりその方向に向かって
ゆったりとした動作で歩き出した。
「戸惑っている駆け出しさんを見つけた・・って感じかな?」
『ラウルフ』種族と人間種族の混血女性冒険者が、コルカスの後ろ姿を
見ながら嬉しそうに呟いた
その先には1人の少年と2人組の男女の冒険者達が、何やら言い
争いをしているのが見えた
1人の少年と2人組の男女とも一目見ただけでつい最近に、『冒険者ギルド』で
冒険者登録をしたばかりの新米冒険 者達であることが判った。
「相変わらず面倒見がいいよな。あいつは」
ナナシは苦笑しつつ、コルカスの方を見た。
そこには少年を庇う様にして立つコルカスと、苦々しい表情で彼を
睨めつけている2人組の男女の姿があった。
「アンタ達が姿を見せない期間でも、この辺境で武者修行の一環で
冒険者登録をしようと戸惑っていた人間種族の剣士や
『依頼受注』について困惑していたエルフ種族、武器の扱い方について悩んでいた
ドラゴネオ種族やリザードマン種族の新人冒険者を探して見つけては
冒険者のイロハを教えていたりいたわ」
ラウルフと人間種族の混血女性冒険者が、嬉々とした様子で
嬉々として報告する。
「・・・相変わらずそんな事してたんだな
ま、もっともココの連中はの大半はだいたいそんな奴ばかりだ
俺達も最初の時は、散々面倒を見てもらった」
ナナシは、コルカスが1人だけで少年と2人組の男女の冒険者達の
間に入って仲裁している光景を 見ながらそうに呟く
そしてさりげに視線を周りに走らせれば、そんな『面倒見がいい』部類に入る
冒険者幾人かが立ち上がって仲裁に入ろうして
すでにコルカスが仲裁に入っているのを目にして 諦めたのか、自分の席や
テーブルに戻って状況を静観している。
ナナシはそんな冒険者達に苦笑した
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