さて、ゴブリン狩りをはじめるか
大介丸
第1話
深閉としている森林地帯にぽっかりと地表に開いた黒い穴があった。
その穴に向かって、黒に近いレンガ色の肌で中肉中背に近い体系『生物』が入っていく。
赤い眼の醜悪な風貌、ドワーフと同じ背丈の獣人は、口からは、何かが擦れるような不快な鳴き声を発していた。
その生物は『ゴブリン』と呼称されている魔物だ。
ゴブリンが穴に入っていくの見届けた様に、茂みから凄愴な気配を纏った
5人組の集団が姿を現した。
5人組は、あまりにも異質だった。
全員が、白いワイシャツ、黒の背広、黒ネクタイ、黒の革靴という服装だ。
―――そして全員ががまったく同じ『貌』だ。
全員の『貌』は、80年代に公開されてシリーズ化もされているアクション映画で、『最も不運なタイミングで最も不運な場所に居合わせる最も不運で簡単には死なない男』役を演じているハリウッド俳優『ブルース・ウィルス』とそっくりだった。
しかも、20代~30代後半といった『貌』だ
『イクゾ』
その中の1人が振り返りなが片言の日本語らしき言葉で告げた。
四人の同じ『
異様な5人組は、次々と暗い穴の中に踏み込んでいく。
『異様な集団』の後に、今度は二人組の男性が茂みをかきわけて現れた。
その2人組は、見た限りでは動きやすく音の立たないように身体にぴったりと合った軽装だ。
「 週末になれば『異世界』に誘うのはやめろっ!! 俺にもいろいろと予定を組んでいるんだぞっ!! 渡辺ぇぇぇっ 」
一人の男性が、怒気の孕んだ声で告げた。
「予定組んでいると言っても、エロゲだろ? そんなゲームするよりも『異世界』で冒険者する方が健全だと思うぜ―――それと、こっちでは『ナナシ』と呼べ、『ナナシ』と」
もう一人の男性が静かに応える。
「お前の場合は、ゴブリンだけを標的にした冒険だろ!? ・・・
たしかにこの『異世界』では、ゴブリンを退治する事も重要な事だが・・・。せっかく買ったゲームソフトをやりこもうと予定を組んでいのに、これで全部パーだよっ!! あと、それと最近面白そうでマトモなエロゲーないから
買ってない」
一人の男性が、怒気の孕んだ声で告げる。
「・・・エロゲーにマトモなものってあるのか?」
信じられないような声で『ナナシ』という・・偽名の男性が応えた。
「説明すると時間を取るが?」
怒気の孕んだ声で告げる。
「あとで聞くから、いまはこの『依頼』を成功させような」
そう言いながら、『ナナシ』はその説明を遮った
「・・・成功も何も、俺が『召喚』した――――お前が言うところの『召喚人』で終わるぞ」
説明を遮られたためか、不機嫌な声で告げる
「さすが、冒険者ギルドから『レアジョブ』と認定された
『銃士系召喚魔法士』だ」
『ナナシ』がにやにやした表情を浮かべつつ応える。
『認定も何も・・・、『ジョブ適性検査』をしてもらったら、冒険者ギルド職員も困惑したこの『銃士系召喚魔法士』が、『レアジョブ』だと思うのか!?」
不機嫌な声で、『銃士系召喚魔法士』の男性が告げる。
「一般的なライトノベル系やネット小説系で登場するキャラクターは、
物、物質、精霊、神々や悪魔などを『召喚』して活躍してるぞ。
だが、お前は予想すらしていない『あのような者』を召還して
いるんだ。
ちょっと、マジで聞きたい所だぞ」
「知るか」
『銃士系召喚魔法士』の男性が 不機嫌そうに応える。
「ハリウッドに知り合いがいるのか?」
覗き込みながら、さらに『ナナシ』が尋ねる。
「俺にそんな人脈はないっ!!」
不機嫌な声で、男性が告げた。
「本当にいないのか? そうでもしないと、『誰もが知っている有名なハリウッド俳優優』みたいなのを『召喚』はできないと思うぞ」
『ナナシ』がそう尋ねるが、その口調は何処か楽しんでいる所がある。
「それらに関しての事は、俺が一番知りたいし聞きたいよ!?」
『銃士系召喚魔法士』の男性が応えた。
『ナナシ』が何か言おうとした時、穴の中から激しい発砲音と耳障りな叫び声が響いてくる。
「派手にやっているな」
『ナナシ』が凄まじい笑みを浮かべながら告げる。
「中に入るつもりか?」
『銃士系召喚魔法士』の男性は、呆れた様な表情を浮かべながら質問をする
「俺は、『召喚人』に全部任せてふんぞり返ってるのは、俺の性分には
合わないからな―――――そういうことで、ゴンザレス君、『召喚』
したまえ」
『ナナシ』は、何処かおどけた様な声で応える。
「その名前で呼ぶのは、この『異世界』だけにしろよっ!?
冒険者ギルドではその名前で無理やり登録したのはお前だからなっ!! 俺は今でも――――糞っ!! 『召喚』してやるよっ!!」
『銃士系召喚魔法士』の男性―――――『ゴンザレス』は、ニヤニヤした笑みを浮かべている『ナナシ』に文句を言っていたが、途中で嫌になったのか、両眼を閉じて短い詠唱らしきものを唱えた。
ちりちりと焦げるような電流が空間一帯に広がると、空間が陽炎のように揺れて
弾ける。
ぶれるような残像が、一つの物質を結像させるまで一瞬の時間もかから
なかった。
現れたのは先ほどの『異質』な集団と同じだった。
黒の背広。黒ネクタイ、白いワイシャツ、黒の革靴を履いた集団だった。
ただ、先ほどの集団と同じ『貌』ではない。
別人と同じ『貌』の集団だ。
「壮観だな」
『ナナシ』は短く応えた。
「・・・」
ゴンザレスは、無言で応えた
現れたのは―――
撮影の前に徹底した役作りを行うことで有名であり、アカデミー主演男優賞を
受賞している、映画監督でもある『ロバート・デ・ニーロ』
ワイヤーアクションやバレットタイムなどのVFXを融合した斬新な映像表現は『映像革命』と称して話題となった映画作品などに出演している『キアヌ・リーブス』
主にアクション映画作品に出演し、俳優でもあり空手家で、『人間核弾頭』の
愛称がある、『ドルフ・ラングレン』
実質年齢よりも若い、おそらく20~30代後半と思われるハリウッド俳優貌の『召喚人』が現れた。
服装とその貌のためか、その場だけが一つのハリウッド映画のワンシーンを彷彿とせる。
ただ同じ貌で5人一組で現れているため、異様だ。
「さて、ゴブリン狩りを始めるか――――――『リーブス隊』と『デニーロ隊』を連れていくぜ?」
『ナナシ』が告げる。
「千匹近いゴブリンが棲息している穴に、お前は素手でいくつもりか?
お前は
ゴンザレスが応えた。
「誰かじゃあるまいし・・・・俺は俺の『ジョブ』の能力を使うさ。
お前も来るか?」
『ナナシ』は、軽い屈伸運動を行いながら訪ねた。
「何が悲しくて行かなきゃならない・・・・あーとりあえず彼に従ってください」
ゴンザレスが、ハリウッド貌の『召喚人』集団に視線を向けながら、丁重な
口調で告げる。
幾ら実物の本人ではないにしろ、気を遣う所があるのだろう。
『イエス ボス』
ハリウッド貌の『召喚人』集団が片言の日本語でそう応えた。
「よし、準備運動終わり―――『リーブス隊』、『デニーロ隊』!!
ゴブリン相手に情けも手加減も無用だっ! 見つけ次第撃ち殺し、撃滅しろっ!! 」
『ナナシ』が怒鳴るように告げる。
こちらの方は、そんな事はないようだった。
『リーブス隊』、『デニーロ隊』は、肩から吊るしていたホルスターから、
コルトM1991A1を一斉に取り出し撃鉄を起こした。
その一つ一つの動作が、やはり様になっている。
「総員突撃だっ!!」
『ナナシ』がさらに叫び、地面を蹴って黒い穴へと入っていく。
その後には、『リーブス隊』、『デニーロ隊』が入っていく。
「任せておけばいいのに・・・」
ゴンザレスは何処か呆れた声で呟きながら、『ラングレン隊』に視線を向けた。
「・・・・」
そしてすぐに、視線を穴に向けた。
『ゴブリンの巣』の中では、凄まじい戦闘が行われていた。
群がるゴブリンに、コルトM1991A1が火を噴いている。
容赦なく射殺し、怯んで逃走するゴブリンにも容赦なく銃弾を叩き込んでいるのは、『ブルース・ウィルス隊』だ。
肉薄攻撃を行うゴブリンにも怯む様子もみせない5人の『ブルース・ウィルス』貌の召喚人。
しかし、同族の屍を踏み越えて、錆びた剣や槍、棍棒を所持したゴブリンの集団は、奇声を上げ迫る。
銃弾を使い切った、1人の『ブルース・ウィルス』貌の召喚人がゴブリン
相手に、殴り蹴り殺す。
昂ぶりきっている様だった。
鬼気迫る雰囲気にゴブリンも怯え始めた。
そんな戦闘を行っている所へ、『ナナシ』が引き連れてきた『デニーロ隊』、『リーブス隊』が到着した。
「俺らも混ぜろよっ この溝臭せぇゴブリンども!!」
『ナナシ』が吠えるように告げた。
その場にいたゴブリン集団が、本能的に危機を感じたのが逃げ出そうとする。
「逃すなっ!! 徹底的に殲滅しろっ」
『ナナシ』が命じると、 一斉にコルトM1991A1が火を噴いた
『現世界』での名前は、『ナナシ』は『
『ゴンザレス』は、『
この2名は、苗字と名前から察する通り、『異世界』の住民ではない。
『現世界』から『『異世界』に、ライトノベルやネット小説などで、書かれている『転移』するという摩訶不思議な経験をしてしまった者達だ。
後2名ほどいるのが・・・それはさておき。
彼らは学生という年齢ではなく、社会人だ。
大手大企業『手野グループ』の『手野武装警備株式会社』に勤務している。
2人が配属されているのは、『手野武装警備株式会社』組織内の
『特殊課』という部署に所属する『秘密武装警備員』だ。
業務内容は、主に紛争地域に設置されている『手野武装警備株式会社』の子会社
からの『緊急要請』で出動する、軍隊で言うところの特殊部隊の様な部署だ。
業務が業務だけに、『
事欠かせない。
また、業務が業務だけに『手野武装警備株式会社』及び『手野グループ』全般
には、存在すら知られてはいない。
『特務課』の存在自体からして、知っているのは警察庁と警視庁、防衛省の、
ほんの一握りの最高幹部達だけだ。
さらに、『特務課』秘密武装警備員のメンバーの貌を知っているのは、
手野当主を覗けば、手野武装警備株式会社の社長と手野武装警備附属陸海空軍軍事大学校に、推薦をした幹部補警備員しかいない。
財源は、手野グループの機密費から出されるが、その他に
特殊貿易と呼ばれている政府黙認の密貿易や、財界からの献金などによって豊かだ。
従って、秘密武装警備員である彼らへの給料や報酬も少なくない。
原則、四人で一ティームとして
発生している『
現場に緊急派遣される。
少なくとも2人がいるティームは、『ゴブリン』以上に狂猛で重武装している
連中を400人以上は闇から闇に葬っている。
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