俺が魔物を♡死屍累々♡にするせいで!妹が☆肉嫌い☆になって困ります!!
風庭悠
第1部:「地の刻印」
プロローグ:「砂の住人【サンド ドゥエラー】」
01「カインの末裔」
今日は美しい満月のようだ。 大きな丸い月は砂漠に蒼白い影を落としている。
街灯が一つもない砂漠は夜の闇に包まれているが、月明かりのおかげであたり一面が真っ青に染め上げられていた。ガラス質を含んだ砂だけが真っ白にその光を反射している。砂丘が波のようにせり上がり、まるで凍ていた海のようにも見える。
その砂の海を一台の大型のバイクが真っ直ぐな航跡を残しながら疾駆していた。
「このまま順調にいけば夜明けすぎには街につきそうだな。」
男は現在の時刻を確認する。信号も標識もない砂漠では素直に距離を速度で割れば到着時刻が容易に予測できる。
「そうね、このまま順調にいけばね。」
「相棒」が意味ありげに応えた。
この速度でも砂埃を一切撒きあげないのはこのバイク、「アヴェンジャー」が重力浮上式だからだ。つまりゴム製のタイヤも車輪もついてはいない。そしてそのバイクにはサイドカーがつけられている。さらに荷台には大きな荷物が載せられている。この「アヴェンジャー」という陳腐な名前は彼の父親がつけたものだ。このバイクは彼の父の形見なのだ。
男はフルフェイスのヘルメットをかぶっている。そのフードに月影が宝石のごとく反射している。サイドカーも繭のように完全フードには覆われ、さらにスモークモードのため、中に乗る人物を窺い見ることはかなわない。
バイクは次のオアシスを目指しひたすら疾駆する。ここで異変が生じた。背中を単調な振動音が追いかけてくるのだ。それは砂を踏むものではない。もっと下から響いてくるのだ。
「どうやら嗅ぎ付けられたようね。」
そして振動音はバイクを追い越していった。
「やりすごしたようだな。」
男がほっと息をつくと相棒は再び笑みを浮かべる。
「どうかしら。」
やがて、その行方を遮るように砂が盛り上がる。乾いた空気をつんざくような獣のような咆哮が響いた。
バイクはその砂の塊の手前で停止した。その瞬間、盛り上がった砂のかたまりが爆ぜ、砂が火柱のように噴きあがった。
「やれやれ、おいでなすった。」
男はバイクから降りた。細身の男で身長は180cm近くあるだろう。その細い体に似合わぬ不敵な態度で腰に手をあて、その砂煙の行方を見つめている。
男のヘルメットとサイドカーの天蓋に砂つぶが雨あられのように浴びせられる。サラサラと乾いた音を立てながら砂が流れ落ちた。
砂煙が止むとそこに現れたのは異形の生物、魔獣と呼ばれる巨大な生き物が現れた。芋虫のような形をしているが地表に現れた部分だけでも10mは超えるだろう。その先端がパックリと4つに割れ、禍々しい口が開く、そこには何層にも重なった鋭い歯がびっしりと並んでいた。
それは威嚇するように、そして眼前に見下ろす人間に自らの力を誇示するようにもう一度咆哮する。
すると、その魔獣から一本の触手が伸びるとヘルメットを被った男の目の前へと近づく。触手の先が割れると、それも口のようになっている。口の周りについている黒い球体は目のようだ。その触手は言った。
「お前は誰だ?」
男はヘルメットをとる。そこに現れたのは少年の顔であった。それは月明かりで白く照らされていた。その瞳は紺碧で黒に近いブルーと言えた。まだあどけなさが抜けきれない顔で歳の頃は15、6歳だろう。その髪は銀髪だがクロムメッキを施したようにツヤが消された色合いであった。その身は砂漠で生き残るためのグレーの生命維持バイタルスーツに身を包まれていた。
少年はいたずらっ子のようにニヤッと笑う。
「ディーン・サザーランド 。『カインの末裔』だ。」
「カインの末裔」、それは、この惑星スフィアで魔獣を狩ることを生業にする者たちのことだ。
「嘘を⋯⋯つくな。⋯⋯あいつらは集団で動⋯⋯く。」
魔獣の答えももっともなことだ。惑星にあまたに跋扈する魔獣を倒すにはとても人間一人の力では太刀打ちできないため、「キャラバン」と呼ばれる集団として移動生活をしているからだ。単独で動く者は達人級の
「俺は『ワケあり』でね。『親の仇』を探しているんだ。あんた、大始祖『チャウグナー・フォウン』を知っているかい?」
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