第85話 子供たち

「アスミー社?」

「うん。どうだよ」


この時代のアスミー社は、まだ下請会社で、大手の仕上げの仕事を主にこなしていた。

社長の、チャーリー・アスミー氏が、立ちあげたものだが・・・


当たり前だが、リンはまだ、生まれていない。


「で、ここに何しに?見学?」

「うん」

「許可は取ってるの?」

「ううん。アポなし」


アポなしで、見学させてくれる所なんてないだろう。


「お兄ちゃん、いいから行くよ」

「僕が、人見知りなのは、知ってるだろう?」

「大丈夫。私が、付いているから・・・」


妹(正しくは子孫だが)に、世話をやかれるなんて、

だめな、お兄ちゃんだな。


かすみは、ずかずかと入っていく。

当たり前だが、受付でチェックをされる。


かすみは、何か話しているようだが・・・

まとまったようだ。


「お兄ちゃん、行くよ」

「どこへ?」

「ここへ来て、見学しないつもり?」


仕方なく、付き合う事にした。


見学先は、仕事場ではない。

これまで、制作した作品の、セル画が展示されている。


まだ、この時代はセルアニメだったんだな・・・


日本産のアニメも、多い。

本来なら、中国や韓国にお願いする下請を、やっていたアスミー社。


まあ、僕の時代では、珍しくもないんだが・・・

テロップでは、外国人の名前も見かける。


「お兄ちゃん」

「何?」

「最初は小さくても、コツコツすれば、大きくなるんだね」

「どうしたの?」


「お兄ちゃん」

「えっ?」

かすみの言葉に、声を失った。


「育てて行こうよ。お兄ちゃんの、子供たちを」

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