第35話 進路

三学期が始まった。

既に進路の決まっている者、まだ決まっていない者、

たくさんの生徒がいる。


殆どの生徒は、大学へ行く。

理由は、「みんなが行くから」「世間体があるから」が理由であり、

本心は、いかがなものか・・・


そんな理由で行くのなら、行かない方がいいと思う。

口にはしないが、人は本来冷たい。


まあ、僕がいうのもなんだが・・・


「お兄ちゃん、準備しておいてね」

「何を?」

「卒業すれば、本格的に始動するから・・・」

「ああ、わかったよ。」


内心は、不安の方が大きい。

ケセラセラという考え方は、僕には出来ない。


どちらかと言えば、石橋を叩いて渡る主義だ。

叩きすぎて壊れてしまい、渡れなくなった事もあるが・・・


卒業後の進路は、早い段階で担任に伝えてある。

担任も、大学進学を勧めたが、頑なに拒んだ。

クラスメイトも、同様だった。


僕の場合、未来を託されなくても、大学進学という選択肢は選ばなかったと思う。


「かすみの時代では、大学はあるの?」

「大学に限らず、学校はあるよ。でも・・・」

「でも?」

「この時代とは、システムが違うんだ」

「というと?」

「だめな生徒は、ふるい落される」

「勉強とか、スポーツとか?」

「違うんだな」

何が違うのか、気になる。


「心理テストが毎年行われるの」

「心理テスト?」

「分厚いアンケートと、催眠療法」

「催眠療法?」

今もあるが、気になる。


「それで、『この子はこれ以上は無理だ』と判断されると、学校へは行けなくなるの」

「その後はどうなるの?」

「その人にふさわしい適職につかされる」

まあ円満かもしれないが・・・何だか納得がいかない。


でも、問題は改善されているとも言える。


そして、卒業式の日を迎えた。






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