第34話 お正月の生活
「お兄ちゃん、何か届いてたよ」
「何?」
「これ」
かすみは、年賀状の束を見せる。
「ああ、年賀状だな」
「これが、年賀状?」
「ああ、お正月のご挨拶の手紙だよ」
でも、父さんや母さん宛が多く、僕宛は少ない。
かすみの時代は、完全にメール化していると言ってたな。
珍しいのだろう・・・
「暮れに何か来てたよね・・・あれは?」
「ああ、身内に不幸があった場合は、喪中といって、年賀状を出したりもらったりしては、行けないんだ」
「不幸って?」
「亡くなった事」
「そうなんだ・・・」
かすみは、寂しそうだった。
「そういえば、2200年は何年?」
「干支?」
「うん」
「ネズミ年だよ」
干支は、残ってるんだな・・・
少し、ホッとした。
「でも、殆ど絶滅してるけどね」
そういえば、そうだった。
トラとかも、絶滅が危惧されているが、現実のものとなったか・・・
「かすみの時代にも、いる動物は?」
「ネズミと、猿と、イヌくらいかな・・・」
「ウサギは?」
「少し前の食糧難の時に、食いつくされたみたい・・・」
動物たちにも影響を及ぼしたのか・・・
しめっぽい話になったな・・・
「お兄ちゃん、この番号は何?」
かすみが、年賀状の宛名の下にある番号を指差す。
「これは、お年玉くじだよ」
「くじ?」
「この番号が、当選したら、商品がもらえるんだよ」
「当たってるの?」
「いや、後日抽選するから、まだわからない」
「当たるといいね」
「うん」
おせちは、コンビニで注文しておいたので、済ませた。
かすみは、珍しそうな顔をしていたが、すぐにお口に合ったのがわかった。
「かすみ、外へ出る?」
「うん」
かすみは、周囲を見渡す。
「ねえ、凧上げとか、羽付きとかは、しないの?」
「もう、この時代には、既にあまり見かけないね」
「どうして?」
「危険だからと思う。電線とか多いから・・・」
「そっか・・・もう、失われているんだね」
昔の文化を取り戻すのは、難しい。
でも、未来なら、変えられるか?
かすみは、微笑んでいる。
(大丈夫だよ、お兄ちゃん)
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