第28話 決意を新たに・・・

1か月日本一周の旅。


まだ、残っているが、僕は切り上げて帰宅することにした。

かすみの口から、本当の理由を聞きたかったからだ。


ただ、その前にひとつだけ、わがままを言わせてもらった。

それは、長野県の飯田線。


ここの秘境を見たかった。

かすみも、感動していたようだ。


ただ、山と川が入り組んでいるために、壮大さは感じなかったようだ。


帰宅した翌日、僕はかすみにリビングに呼ばれた。

大切な話があるとのことだ。


(ついに来たな)

心の準備は、出来ていた。


「まーくん、大切な話なんだけど・・・」

「うん」

「勘のいい、まーくんの事だから、気付いていると思うけど・・・」

「今回の旅行の本当の目的は、かすみたち未来人が仕組んだ事だね」

かすみは、静かにうなずいた。


「いつから、気付いたの?」

「旅行初日から、あまりに都合がよすぎるからね。仕組まないと無理だよ・・・」

「うん、実はあの商店街も、福引での旅行券も、受付の人も、旅先で出会った人も・・・」

「全て、未来人だね」

「うん、タイムトラベルなら、誰でも出来る時代だから」

かすみは、続けた。


「実は、未来人の中には、まーくんを、信用していない人も多かったの・・」

「うん」

「まーくんだけではない。未来人は、過去の人を憎んでいる人もたくさんいる」

「この星を、水だけの星にしてしまったから・・・確かに、僕にも責任はあるから・・・仕方ないよ

君が気に病む事ではない」

かすみは、続けた。


「『本当にこの人が、未来を変えてくれるのか』って・・・」

「確かに、信用しきれないな。それは、わかる・・・」

「でね、この旅行を見た結論なんだけど・・・」

「ああ、言っていいよ」

かすみは、言葉を続けた。


「このまま、まーくんに任せるで、みんなの意見が一致したわ」

「えっ?」

「まーくんの、この国をこの星を愛してくれている事、私を助けてくれてる事、

全て本物だとわかった」

かすみは、真面目に話す。


「でも、誤解しないで、決してからかったわけではないから・・・

本当に、まーくんの事が好きだから、だから・・・

でも、騙すことになってしまい、ごめん・・

でも、刺激を受けてほしいというのは、本当だから・・・」

僕は、泣き崩れる、かすみの頭を撫でた。


柄でもないことをしていると自分でも思う。

でも、勝手に動いた。


「大丈夫だよ、かすみ」

「えっ、」

「君は、僕の妹なんだろ?兄が妹を信用出来なくてどうする」

「まーくん?」

「大丈夫だよ。頼りにならない兄だけど、力になるから。」

「まー・・・お兄ちゃん・・・」

「変えてみようよ、未来を・・・」

かすみは、僕の胸に飛び込んできた。


(おにいちゃん、しばらくこのままで・・・

明日から、またいつもの私に戻るから、だから・・・今日だけ・・・は)


突然、声が聞えてきた。

【雅志さん、お久しぶりです】

【その声は、かすみのお父さん・・・ですね】

【この度は、失礼な事をして申し訳ありません】

【いえ、誰でも信用できませんから・・・】

【雅志さん、改めてお願します。あなたの未来では、幸せな世界を作ってください】

【ええ、僕に出来るなら協力します】

【ありがとうございます】

【で、この会話はかすみには?】

【届いていませんので、安心してください。また連絡します】

【すいません、豊さん、最後にひとつ、今回の力は?】

【私たち未来人全員の力です。かすみの力ではありません】


かすみの父親からの、交信は途絶えた。


翌朝、かすみは元にもどっていた。

天真爛漫で、時に見せるわがまま。

全てが、元のままだった。


ただひとつだけ、変わった。

それは・・・


「お兄ちゃん、朝ごはんできたよ」

本当の、兄妹になっていた・・・



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