第105話

 海に潜り、早速北側の遺跡へと向かおうとする。海面は波が酷いものだが、水中はいたって穏やかと言っても、敵は出てくるみたいだが。


「やっぱり出ますよね、鮫が来ましたよ」

「ここはさっさと抜けるべきジャン! スロウノイズ!」


 軍師殿が手を振りかざすと音魔法が炸裂する、別段音魔法は僕だけの物じゃない。

覚えれば誰だって使える、鮫は身じろぎして動けなくなるのでそのままスルー


「鮫は退けたね、っさ、ここからすぐに遺跡があるんだったね」

「ですね、ですがお客さんのようですね、コージィ君」


 水中都市の通りの一つに全員で降りれば、目の前から魚人の大群が襲ってくる。

あいつらも自分の王様を守ろうって必死ってわけか、ま、こちらも世界が崩壊するとか嫌なのだ、それぞれが得物構え魚人達を蹴散らしていく。

 そうすればやがて最初の封印ポイントにたどり着く。


「ふむ、コージィ君、ここは我々研究会に任せてもらっていいかな?」


 芋焼酎さんが魚人を蹴散らしながらも僕にそう述べる。

確かにMPを入れる為の人員を割かなければならない為、そうなる手筈とは最初の内に話を通しておいた。


「さぁ、私が道を作る、先に行きなさい! すぅーぱぁー……張り手ェェェ!!!」


 芋焼酎さんはその掛け声とともに張り手を突き出す、張り手からはエネルギー波のようなものが飛び出し、魚人達を吹き飛ばしていく。凄いなあの威力どう出てるんだ


「出たぜ! 芋焼酎さんのSUMOU!!」

「世界よこれが日本だ。ってやつっすね、この好機、逃せないっすよ!」

「だな、その調子で後は頼んます! 行こうぜコージィ」


 牡蠣フライさんが歓声を上げ、アイン君とソーヤーに急かされ先を行く。

次はここから右と少し下の方へ行ったところかな、魚人は尚も襲い掛かってくる。

魔法使い組は温存の為、MP消費の少ない魔法で援護のみに、基本的には肉弾戦組に任せている、ちなみに僕は仕込み杖を抜いて前線で戦っている。


「ヘマして死ぬんじゃねぇぜ、コージィ」

「いやぁ、ま、なんとかなるよ……っと、危ないなカーレッジ!」


 魚人の槍が貫いてこようとすると同時にカーレッジを呼ぶ、水中でも呼吸無しで戦える唯一の使役魔物、すこぶるとろいが。そんなこんなで次のポイントへ。


「ここは僕らが残るじゃん、蓮、武炎、飛、護衛は任せるじゃん」

「伏龍ちゃん、一応、俺達もいるからね、そこんとこよろしく」

「3人と比べて戦闘はいまいち向いてないけどね、肉盾くらいにはなれるかな?」

「それはエーイっちゃんだけですって、俺はやるときゃとことんやる男ですよ。例えばこんな風に……ね!」


 ここは永花に任せることに軍師殿はガラス玉を持って遺跡の中へ。

他の護衛を頼まれた3人は魚人達にそれぞれ攻撃をかます、自慢の足技で吹き飛ばし、青龍刀の一撃で切り捨て、ナイフを両手に持って切り刻む、強いな。


 堺さんもやるときはやるといって、何かを投げると、魚人の群れの真ん中に落ちて盛大に破裂した、火薬か何か、とにかく爆発物か! 堺さんは惜しみなくそれを投げまくる、一緒にいたら巻き添えをくらうな、先を行くか。


 次に離脱したのはカントリーガールズだった。


「ここは私達に任せてください、皆頑張ろ!」

「魚人がなんぼのもんじゃーい! ねるには指一本触れさせないよ」

「ふぁいあぼーる! 無茶しないでね、ゆっきーちゃん」

「だいじょぶ、だいじょぶ、こいつら案外、柔らか、あわわ、魔法!?」

「油断大敵、ゆっきー、そういうとこダメ」

「ほんとほんと、まぁ、フォローするけどさ、それじゃお互い頑張りましょーねー」


 ゆっきーさんに少々不安は残るがメイプルさんとコットンさんがフォローするだろうし、まぁ何とかなるだろう、っさ、僕等も先を急ごう。


「残るポイントはどことどこだっけ?」

「ここから左とその斜め上方向だ、他の3チームの所に散ってるから数は減ってるはずだ、後もう少し、護衛頼むよ」

「合点承知の助! っと、言ってるそばからって奴だぜ!」


 その後も魚人達の襲撃を紙一重で防ぎながら、ポイントへと向かう。

そうして到着した4つめのポイント、既にギリギリ満身創痍の状態のもいる。


「これ、回復魔法が使えないってのがしんどいっすよ、液体タイプの回復薬も水中じゃ使えないし、時間経過の自然回復だけとか鬼畜難易度すぎませんすか」

「おそらく本職の魔法使いは水晶の封印、前衛は使役魔物や契約魔物に回復魔法を覚えさせて戦うのが正攻法だと思うひとまず僕の丸薬を渡すこれなら水の中でも何とか飲めるだろうアイン君はそれ系の回復できる魔物は契約したりは??」

「俺は気合と根性と雑草魂が売りでして、魔法はこれっぽっちも」

「アインー、魔法を使わない理由になってないよー」

「うっせぇ! 男なら身一つで戦うもんなんだよ! っと、あぶねぇぞ!」


 たこやきさんと口喧嘩になりそうと思ったら、魚人が襲い掛かるのを庇う。

なんだかんだ言って、いいチームなんだな。


「ここ以外に後一つっすよね、コージィさん! どうぞ行ってくださいっす!」

「ここはあんみつにまっかせなさーい! ピコちゃん、K.Kはガラス玉よろしく!」


ピコさんとK.K君が遺跡へと入っていく、僕等も先を急ぐとするか。


「とうとう俺達だけになっちまったか、皆無事だといいが」

「大丈夫でござるよソーヤー殿、総大将殿が選んだ人員ゆえ、そうやすやすやられる者達ではないでござる」

「そうですよ、ソーヤー君、私達もコージィさんの護衛頑張らなきゃ」

「だな、後どのくらいかね……っと、止まりなコージィ、なんかやべーのいるぜ」


 ソーヤーが足を止めたその前には、普通の魚人よりも二回りも大きな魚人がそこには立っていた、持っている武器も防具も心なしか豪華だ。


「中ボスってところかね、俺達食っても美味しくないよ、むしろ俺達盗賊だぜ腹まで真っ黒だから不味いに決まってるよ、そこどいてくんない?」


ソーヤーが冗談めかしてその大きな魚人に言えば、まさかの返事が返ってくる。


「よもや我が王を封印しようとする不届き物がいるとは、我が同胞も既に何体も切られてるようだな、しかし、この先は通しはせんぞ、死んでもらおう」

「だーめだこりゃ、それじゃ押し通りましょっか…………あっー! 俺達とは別の奴が通り抜けようとしてるぅー!」


 ソーヤーは以前に作って貰っていたジャマダハルを構えると、あらぬ方向を指さして叫びあげる、大きな魚人はそちらを振り向いてしまう、成程ね。

ソーヤーが気を引いているうちサクの手を引きながらライトミラージュを使い抜ける

そうすれば、二人とも大きな魚人の後ろに出る、後は逃げるだけだな。


「喰らっておきな! 死に晒せぇ!」


 振り向いたその隙を狙いジャマハダルで殴りかかる、やり方が汚いな。

まあその隙をついて逃げ出した僕も同じようなものか。


「おのれ、それでも戦う物か、不意打ちとは」

「俺は騎士でも戦士でもねぇ、卑しい盗賊さ! やるぜ、斬鉄、ビアンカ!」 

「応! でござる」

「はいはーい! やっちゃうよー!」 


 ソーヤーの決め台詞と二人のやる気を見届けてからポイントの場所へと急ぐ

あの魚人を通り抜ければ、つくのはすぐだった、思い切り壁が崩れた遺跡。

もとい僕らが水中都市の謎を追いかける始まりの場所でもある。


「それじゃサク、外で魚人を退ける役は任せた、カーレッジ、壁の前に立て」


 サクに魚人と頼み、カーレッジを壁代わりに崩れた所へと置いておく。

遺跡の中はあの時と変わらない、早速真珠を載せてっと。おや?

勝手にMPが溜まっていく、量はそれほどでもないが、これなら思ったより早く終わりそうかな、ヒールを随時かけていく、MPが無くなりそうになったら自前の丸薬を飲み込む、うんまずぅい。しかし1万は多いな、普通に足りなそう、僕のMPが5000半ばだから二回分か丸薬が持つかどうか……。


 外の地鳴りが酷い、上は激戦のようだ、頼むから持たせてくれよ。

じれったい、MPのチャージがされる速度が遅い、まだ7000か、もうMP回復の丸薬は無い、こんなことならもう少し日ごろから材料集めるべきだったな。

……カーレッジのHPがヤバいな、ここでステータス半減はダメだ、戻さないと。

残り8000か……このペースだと自然九州で10分かそこらか?

上に出てサクの援軍に出るしかないか、そう思い遺跡から出てくる。


「コージィ! あんたガラス玉の方はどうしたのよ、放っておいていいの!?」

「この遺跡自体にガラス玉にMPが入る仕組みがあるみたい、後10分って所」

「そう、なら手伝ってもらえる、こいつら思ったより手強い」

「無論そのつもりだ、僕は右、サクは左を、さぁどこからでもかかってこい!」


サクと背中合わせに魚人達と相対する、10分、それだけで決着がつく。

そう思っていた、しかし、そうはいかなかった。


「あの盗賊め、まさか仲間を逃がしていたとはな、だが、ここで終わりだ」


 ソーヤー達を振り切ったのか倒したのか、あの大きな魚人が僕らの前に立ちふさがるのであった。

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