第80話
お昼休憩を終えての再度のログイン。僕とサクだけがログインしていた。
先ほど連絡があったが、ソーヤーはどうやら母親にお使いを頼まれたそうだ。
ゲームを買ってもらった手前断ることもできないので遅れるとの事。
後で追いつくから先に進んで構わないとも言われたので構わず進む。
まぁ、歩きでも後1日、ちょっと駆け足でいけばすぐだろうね。
「しっかし、いきなり盗賊が出てくるとはね、ああいうのってこの手のゲームだと結構ある方なの? なんだかんだ初めてのゲームだから勝手がわからない」
「そうね、PK、プレイヤーキラーの訳の事ね、これらはゲームにもよるわ、完全にダメなゲームもあるし、一部の場所や街中以外なら可能って場所もある、まあ昨今のゲームはもっぱら完全にダメってのばかりだけど、でもTFOに限っては街中以外ならなんでもアリ、殺し殺され盗み盗まれがアリみたいなのよね、スキルに盗難とか強奪とかある時点でお察し」
「へぇ、アイツらチームを組んでたけど、徒党を組むのは普通の事?」
「徒党を組むのは珍しいけど珍しくないわ、PKは基本的に少数派だからまず同志が集まらない、でも集まれば弾き者同士で馬が合うから徒党を組み始めるって寸法」
なるほど、それは確かに珍しいけど珍しくないなんて変な言葉で例えれるな。
さて、ようやく街が見えてきた、一度ここで夜を明かす事にする。
また、道中で盗賊に出くわして慌てて対処してギリギリにテント張るはしたくない
鉱山側は牧畜関係が、王都側は市場が広がっている中規模の街だ。
サクとはしばらく別行動をとることになる、と言ってもやること何かあっただろうか、あんまり多用してない上げてないスキルでも上げるとするか、それとも……
街中をぶらぶらしながら適当な試案を巡らせていると後ろから声がかけられる。
「お、大将久しぶりジャン」
いつものゴスロリ衣装をした少女、僕が軍師殿と呼ぶ伏龍鳳雛がそこにいた。
彼女は湿地帯にいくと別れたはずだが湿地帯は反対方向、なぜここに?
「その顔はなぜ、僕がここにいるかの顔ジャン、湿地帯には宣言通り行ってみたジャン、でも湿気で髪の毛はもさもさするし泥ハネで自慢の衣装が汚れるから即効で逃げ帰ってきたじゃん、それからはボチボチいろんな町や村をめぐって、資金繰りしてたジャン、ここは牧畜してるから肉や皮は多いけど、穀物なんかは家畜の餌にも使うから品薄ジャン、それにある程度広い市場もあるからいろいろ流れてくるジャン、商売にはそこそこうってつけの街ジャン」
「景気の良さそうな話だね軍師殿、僕らはこの先の鉱山都市に行って武器の新調
それとチームに新しいメンバーを加えた、暇な時に紹介するよ」
「チームの事、勝手なお話だけど、抜けさせてもらうジャン大将が嫌になったとかじゃなくて、僕も自分でチームを作ろうと思うジャン」
「おやそうかい、別に気にする必要はないよ、軍師殿が作るチームならきっと優秀なチームになるだろうね、お互いよき探索者生活を送れるといいね」
「ありがとうジャン、何か困った事があったら、いつでもこの天才軍師伏龍鳳雛にお任せジャン、大成すると信じた今もそう思う大将の為にに馳せ参ずるジャン」
「それは助かるねっと、どうやら友人、さっき言ってた新しいチームメンバーが
ログインして、こっちに向かってるみたい、あと数分でつくってさすがの早さだ」
「参考までにどんな人か聞かせて欲しいジャン」
「盗難スキルの使い手、意地の悪い奴、名前はソーヤー」
「相棒は宿無しハックジャン?」
「いやぁ、どちらかいったら彼こそ、インジャン・ジョーじゃないか?」
「人がいないからって言いたい放題だな、ソーヤー様のご登場だ」
うおっ、もうついたのか、噂をすればとはよくいったものだ、軍師殿もいつの間にいたのかと驚いた顔をする、対するソーヤーもゴスロリ衣装の軍師殿を見てまぁ驚く、普通はいないだろうからねこんな派手な服装の探索者は。
二人は二言三言交わすと、フレンド登録をする、それが終わると軍師殿が去る。
残ったのは僕とソーヤー二人だけ。
「さーて、この後の予定はどうなってんの?」
「夕飯までは村で休憩、夕飯休憩の後、鉱山都市まで出発」
「そっか、急ぐ必要なかったな、それとコージィ、装備の新調とかのひと段落がついたら俺チームぬけっから、サクはどうもPvPとか苦手っぽいからな俺は俺で気の合うメンバー探してチームを作るよ、それにチームを抜けたからって親友の頼みは断らないつもりだ、いつでも頼ってくれや」
「了解、暇つぶしだけど時間まで街周辺で狩りとスキル上げでもしてよっか」
「賛成、俺に任せろってんだ」
そんなことを言いながら僕たちは街の出入り口へと向かう。
お、凄い綺麗な人、赤のドレスに茶髪そして緑の瞳、まぁ中身はアバターをいじくって、それっぽく見せた日本人なんだろうけどね。
「お、ナイスバディーのお姉さん、声かけようかな」
「じろじろ見たら悪いし、スキル上げじゃないの? ソーヤー」
そんなことを言っていればお姉さんは僕らの横を通り過ぎていく。
「そうだな、でもよちょっと待とうかお姉さん、盗ったもん返してもらうぜ」
と思っていれば、通り過ぎようとするお姉さんを手首を掴みソーヤーが引き留める
『え? 何をおっしゃるんですか、貴方』
「え、今、この人なんて言ったの? ソーヤー通訳」
「ごめん、僕も分からない……翻訳とかなかったっけ?」
確かリアルギアには言語翻訳機能が標準で備わってたはず、起動させるのに一度ゲームをやめる必要があるのでこの状況だとそれは出来なさそうだが。
ちょっと、もうちょい融通利かせてもらえやしませんかね。
『いきなりなんなんですが、運営に通報しますよ』
お姉さんの声は大きく怒気を含むものへと変わっていった。
「俺は生粋の日本人なんだよ、日本語で頼むよお姉さん」
それでも、なお手首を離さずにいるソーヤー
『だから、何言ってるかわかりません! 離してください』
「なぁ、ソーヤー言いがかりじゃないのか? 可哀想だし、離してあげなよ」
「こいつが盗んだのお前の持ってる魔導書だぞ、危険感知スキルが反応したから、間違いない、アイテム確認してみろよお姉さん綺麗な顔してやるねぇ、いい腕だ」
「え!? ……本当だ、さっきまで持ってた魔導書がない、じゃあ本当に……」
さすがに可哀想に思えて離すように言えば、ソーヤーがインベントリを調べるように言う、魔導書が盗られた? そんなことってあるわけが……あったのだった。
そうして魔導書がないことに驚いているとお姉さんは無理やりソーヤーの手を振りほどき、市場の方へと逃げ出してしまう。それもかなりの速さだ。街中ではグラバーを出せない、いやグラバーでも追いつけるか怪しい、こりゃやられたか。
「ちょっと待ってなコージィ俺がいっちょ取り返して来てやるよ。俺から逃げれると思うんじゃねーぞ! 盗まれたら盗み返すのが盗賊の流儀だ!」
ソーヤーはそういうと、ダッシュでお姉さんを追いかけ始める。
僕はどうしたものか適当に市場でも見て回ってるとするか。
あの後、ソーヤーは無事、魔導書を取り返したとの事。
その時にお姉さんに随分と気に入られたそうな、自分の盗みに気づくのはいたけど
追いかけて捕まえれたのはソーヤーが初めてらしい、ともかく助かったの一言だ。
夕飯の時間なのでひとまずログアウト、この後は鍛冶の町まで一気にいければいいのだが。
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