第81話

夕飯を済ませて、再度ログイン、今回は街中で全員集合である。


「いやぁーあのお姉さん速いのなんの、ま、俺の方が速かったわけだけど、ほれ、魔導書返すぜ」


そういって、数冊の魔導書が放り投げられる、中には既に習得済みの魔法の魔導書もあるが、大事な収集物、帰ってきてなによりだ。


「西側は泥棒とか盗賊が多いのかしらね、この先にもいるのかしら」

「そうですね、いくらか盗賊団が潜伏していますよ、私の敵じゃないですけど」


サクの言葉に返したのは先ほど僕の魔導書を奪ったお姉さんだった。

先ほどの赤いドレスではなく、黒いライダースーツ姿であった。

体のラインがはっきり出るそれは、まあ目に毒だ、というか。


「お姉さん、日本語出来るんですね、さっきのは演技だったのか」

「いえ、私、日本語出来ますけど、日本人じゃないですよ」

「この茶髪緑目のお姉さんがコージィの魔導書を奪った泥棒? まったく、泥棒はソーヤーだけで十分よ」

「まぁまぁ、で、お姉さん、しれっと会話に参加してますけど、まだなにか?」

「ええ、私を捕まえたソーヤー君が気にいったの、私もチームに入れて貰える?」


 そう来たか、詳しく聞けば、名前はビアンカさん、先ほど使ってたのはイタリア語らしい英語ならそこそこわかるが、ほかの言語と来たら一介の高校生に出来るわけもなし。でソーヤーが気に入ったからチームに入りたいと、まぁ肝心のソーヤーは


「俺、武器と防具の新調が一通り済んだら、コージィ達とは別れるぜ」


これであるが、それだったらその時は一緒に抜けるとビアンカさんが言うので

それでよしとする。しかしまぁなんだ。


「何でも屋に運送屋、商人もやって、勇者なんて呼ばれて、そんでもってあげくに盗賊と来たもんだ、本来僕らは探索者のはずなんだけど、どうしてこうなった?」

「ゲームだし、そんなもんよ早く行きましょ」


というわけで、早々に僕らは街を出て、鍛冶の街へと向かう事に。

盗賊組は騎乗できる魔物がいないので今回も仲良く徒歩だ、ビアンカはソーヤーに盗みのスキルはどれだけだとか、どんなものを盗んだのかだとかを聞いている。

ビアンカさんは主に宝石や絵画などの美術品を蒐集してるとか。

ソーヤーは特に拘りなし、盗みの為に盗みをするとかなんとか、何ともまぁ


「ゲームだからいいけど、あの二人の話、リアルだったらヤバいわね」

「ああ、すぐにでも警察さんのお世話になる事だろうね、しかし、武器と防具どうしたものか、お金も素材も腐りそうなほどあるからなぁ」

「そうねぇ、私も今から悩んじゃうわね、と言っても素材はそこまで持ってないのだけど、適当に鉱石を集めて、それで作ってもらおうかしらね」

「ああ、ソーヤーの盗品は使いたくないんだっけ、それなら僕の持ってる素材で

作ればいい、剣になりそうなのが一つあるからね」

「あら、それは嬉しいわね、お言葉に甘えるわ」

「へーい、お二人さん、恋人トークの途中だけど、ちょーっと、耳貸して貰える」

「そんなトークはしていないよ、で、何」

「盗賊さんが来ましたよ、敵の数は12といった所でしょうか」

「さっきの倍じゃない、で、どうする?」

「さすがにその数は厳しいね、三十六計逃げるに如かずだ、グラバー!」


グラバーを召喚して跨る、サクもそれに倣い馬を召喚する。


「ソーヤー乗れ! いっきに逃げ切るぞ!」

「ビアンカさんはこっちへ」

「その必要はないかな、俺はこのまま走るとするよ」

「右に同じく、私達の敏捷でしたら、並走できるでしょうし」


 そういって、走りだすやっぱり早いな並走できるというのは過言ではなさそうだ

さてグラバーとサクの馬にウィンドダッシュをかけて僕らも逃げる事とする。

ウィンドダッシュをかければさすがに僕らの方が早いので二人にもかけてやる。

さて相手はと言うと、気づかれたのを察知して同じように追いかけてくる。


「さっきはよくも顔面に武器をくれたな! 覚悟しやがれ!」


あ、あいつらさっきの盗賊団と同じ奴らか、同じような装い6名が追いかけてくる。

更に強盗団はウォレスラプトルに騎乗して追いすがってくる、もう6人プレイヤーじゃなくて使役魔物だったか、しかしおかしいな使役魔物もチームの一人として数えられるはず。6人のプレイヤーがいるなら、使役魔物は出せないそういった類の

スキルか何かだろうか?


「チームを二つに分けて、使役魔物を出せるようにする小技だよ、同盟システムを使えばフレンドリーファイアを気にしないで済むしな、あぶね、炎とんできた」


 ソーヤーへ走りながら尋ねれば答えは返ってくる、上手い事を考えたものだ。

朝にもいた魔法使いの炎や水の刃が僕らを襲う、じりじりとそのダメージを受け続けてしまう相手も騎乗魔物に乗ってるから距離を離せない、さてどうしたものか。


「なんかねーの、コージィ、こう魔法とかでさ」

「目くらましのライトボムやってみるか、それ」


いくつかの光の球を置いて、それを避け、盗賊が通る瞬間に爆破。


「っち、光魔法かよ!? おい、ラプトルから降りて馬に乗り換えろ!」


 盗賊達自身は手で防いでしまう、乗っていた目を潰されたラプトルはすぐに馬へと切り替えられてしまう、こりゃ目潰しは意味をなさないな。


「多分、また先ほどの光魔法を使っても戻したラプトルに切り替えられるでしょう、一度契約状態にすると状態異常は回復してしまいますから」

「ビアンカさん、さっき敵じゃないって言ってましたよね一人で相手できません」

「敵ではないと言いましたが、それは一対一の場合ですよ、あの数は無理です」

「ならソーヤーまた武器を盗奪するんだ、そうすれば相手も」

「うんにゃ無理、対策されてーら、あいつらの武器プレイヤーの作製した武器だわプレイヤー作製武器は須らく盗奪や強奪が不可の特殊効果ついてる、無理無理」

「一体どうしろっていうのよぉ! もうHP厳しいんだけど」

「町まではまだ半分ありますね、また次回、日を改めてですかね」

「諦めるのは性に合わねぇな、本当何かねーの? コージィ」

「うーん、こっちの騎乗魔物もやられるからいざって時と思ったけど、今がそのいざみたいだな、やってみますかね」

「何でもいいから早くしなさい!」

「じゃぁサク、馬をしまって、ここからは僕らも走るよ」


 考え付いた作戦は僕らの騎乗魔物にも影響を与えてしまうからだ

「とりあえず、僕らにもウィンドダッシュ、そして次にこれだ」


 杖を後ろに向けて魔法を発動すれば、杖から突如轟音が鳴り響く。

サウンドの魔法、その効果は至極単純、杖の先から音を発するだけだ。

それだけの魔法なので正直この前のウィンドと同じように使い道は少ない。

が、これも魔力によって強弱を調整できる、そしてこの轟音が僕の作戦の一つ。


「うぉ! 暴れるんじゃねぇ! 言う事を聞け、くそっ、ラプトルに乗り換えろ」

「ダメだ、ラプトルも音にビビッて、言う事聞きゃしねぇ!」

「爬虫類って聴力退化してるんじゃねぇのかよ!」

「なら、走って追いかけろ……って、はやっ!」


 ウマは本来、臆病な生き物大きな音やなんだったら人に慣れるまでも現実なら相当の時間を有する、そんなものだからサウンドの轟音で驚き暴れ始める。

ラプトルの方も大きな音にビビってくれた、こっちはラッキーだな。

父に聞いた話だがヘビなどと違ってトカゲは耳が退化していない。

なんでも鳥の警戒音を盗み聞きする為だとか。

ラプトルもそうなのかは怪しかったが、あの様子からしてそう言う事なんだろう。


「お、奴さんら、走って追いかけてきてるな、まぁ、追いつけないだろうけどな」

「さすがコージィね、意地の悪い魔法の使い方をさせれば、ウォレスで一番ね」

「これはコージィさんに盗みを働くときは一層の技が必要になりそうですね」

「意地の悪い使い方とはなんだよ普通に使っても僕は強いぞ、それとビアンカさん

盗みは勘弁してくださいよ、僕にはソーヤーほどの感知スキルはないので」


 こうして、なんとか盗賊団を撒くことに成功、最後まで油断なくウィンドダッシュを使い続け、ようやく鍛冶の街へと到着する、鍛冶師探しは時間も無い為明日からにして、今日は各々、自由行動もしくは解散と相成るのだった。

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