林間学校を楽しもう
第62話
5月も終わろうとしているこの日、僕らはいつものファミレスに集まっていた。
「中間テスト終わり! お疲れさまって事でかんぱーい」
そういってコップを掲げるのは僕の友人たる田中君、中間テストが終わったからお疲れ様会をしようと僕らを集めた張本人。
「お、お疲れ様……」
少々遠慮がちにコップを上げるのはこちらは田中君が呼んだ細川君だ。
細く男性としては小柄な体をしており、どこか頼りなさげな雰囲気の彼も僕と同じクラスの同級生でもある、今回集まったのはこの3人、他の友人は集まらなかった。
「はい、お疲れ様、田中君と細川君はテストの結果はどうだったの?」
GWが明け、テスト期間として取られた2週間があっという間に過ぎていった。
その間はゲームはあまりせずに勉強に集中、したとしてもせいぜいが街で軽くできるスキル上げくらいだ。サクは不満そうにしていたが、僕らは学生、勉強が本文であるからして、これは仕方のない事と割り切ってもらいたい。
「おいおい、せっかくのお疲れ様会でテストの点数の事をききますかい、内山ァ」
田中君はあからさまにげんなりし始める、まあ、ここ2週間ずっと勉強漬けだったのに、更に勉強に関連するような話をするのは嫌なんだろう。
「僕は国語がちょっと……他は大丈夫かな、多分」
細川君は自信なさげにそう言うが、僕は彼が入試試験でトップに近い点数で合格したという話を聞いたことがある、ちょっとと言ってもそれは平均的な学生から比べれば十分な成果ではないだろうか。
「そういう入試トップはきっとさぞかし自信満々なんでしょうなぁ、どうなんだ?」
「ああ、テスト範囲の答え合わせをしてみたけど、ケアレスミスがあったから、多分100点ではない」
「どーせ、良い点数なんだろ、こっちゃ、ひいこらいいながら勉強してるってのに、簡単に言ってのけるんだから、ちょっとその頭、今度俺に貸してよ」
「頭は貸し借りできるものじゃないよ、田中君」
小さくため息をついて、ジュースを口に含む田中君に僕は改めて、疑問を呈する。
「今日は原山君や須々木君はいないんだね、この前の面子が揃うと思ったんだけど」
「おー、原山は立華さんとデート、須々木は積みゲーの消化だってよ、友達より優先するかねぇ」
「人によって、優先するものはそれぞれだよ、田中君」
「デートはいいけど、ゲームはないだろ、ゲームは」
「須々木君ってそういう所あるからね……」
「つか、お前ら浮いた話の一つや二つ無いのかよ!」
「前にも言ったけど、僕にはないね、そういう田中君こそ」
「ねーよ! ちんちきしょう!」
「えっと、ぼ、僕はぁ……」
細川君は口ごもってしまう。ああ、これは田中君の……
「お、あるのか、あるのか! 恥ずかしがらずに話してみれー」
「いや、な、ないよ、好きな人がいるとか、そういうのないよ」
首をちぎれんほどに横に振る、ああ、いるんだな。
「おうおう、男が恥ずかしがっても可愛くないぜ、男なら当たって砕けろだ!」
「田中君、砕けたらだめだと思うんだ、それに無理やり聞くもんじゃないさ」
僕がやんわりと制止すると細川君が目でありがとう的な感じのオーラを放っていた
「でもさ、彼女作るなら来月のイベントがチャンスだと思わね?」
「ああ、もう来月なんだっけ? 6月の……」
「第2週! そのイベントとは! ドゥルルルルルルルルルルル!」
「まさかのセリフドラムロール……」
細川君が田中君のテンションに少々怖気づいている、まあ、こいつはまだ数か月の付き合いだが、こういう奴なんだ、いちいち突っ込んでいると疲れる。
数秒のドラムロールを終えて、ジャンの掛け声と共にイベントの名前を言う。
「林間学校だ! 年頃の男女が数日間共同生活! 何も起きないわけがない!」
「いや、何も起きないよ、何か起きたら学校の問題になるし」
「そうじゃねーよ、お前は浪漫ってもんが足りねぇなぁ!」
「田中君が言いたいのは、林間学校の雰囲気でカップルが出来るかもって事?」
「そう、それだよ、とうとう俺も青い春を満喫する時が!」
「もう6月になるから梅雨だけど」
「言葉の綾ってもんが分かんねー奴だなぁ、とにもまぁ、俺はこの林間学校で彼女をつくーる!」
うん、燃えるのは別にいいんだ、意気込みってのは割と重要だからね、うん、だがその表明は家でやる事を今日この日は勧めたいよ、なにせ、ここは。
「ファミレスでは騒がない、周りに迷惑だし、でよっか」
気づけば、田中君の声が大きかったせいかお客がこちらに注目している。
僕らはそれに気づき、そそくさと退席することに、まったく恥をかいてしまった。
だがまぁ、林間学校か、僕は男女関係に何か期待しているわけでもない。
まぁ、山中でのんびりするというのだけでも一つ楽しめるという物だろう。
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